風の通り道
風の通り道:作者 トーリ・サイデン
新暦 15年に発表された小説
ホームコメディとしてドラマ化されている
その数は15シーズンを数え、ヤーレやハーレン大陸の城塞都市ではこの話は日常の挨拶として使われるほどの人気ドラマ
舞台はアナ・ハルナの地方都市、ストレアで農村と隣接する街の住人が起こすドタバタ劇
佳澄は第3~5シーズンをスピンオフ作品として発表している。
「お久しぶりです」
本日は貸切であることを示すプレートの掛かったドアを開けると、三枝の後輩、首藤が出迎えた。
その声に各テーブル座っていたドラマを演じた俳優や脚本家、監督他が立ち上がってお辞儀をする。
まるで姉さんを迎えるヤクザような雰囲気にレストランのスタッフが目を剥くが誰も気にせず、佳澄もまた当然のようにそれを受け入れている。
6人掛けのテーブルに着くとスタッフがワインリストを差し出してきた。
「あっ、ちょっと・・・」
押しとどめようとする首藤を軽く制止して、メニューとワインリストを見比べる。
「魚が先で前菜も魚がメイン、肉料理は煮込みね」
そして、周囲の席を見渡し、自分の席以外は4人であることを確認する。
「各テーブルにお勧めの白ワインをハーフで用意できますか?」
「はい」
「メインの時には状況次第で同じく赤のハーフをお願いします。」
佳澄が主役なので飲めないと思っていた関係者がやったと声を上げている。
「はい」
「私と隣の三枝さんには白ブドウジュースをお願いします。」
えっという顔のスタッフにホッとした表情の三枝と首藤、そのまま視線を周囲の席に向ける。
「そちらで飲めない方いますか?」
8つあるテーブルから3人ほど手が上がる。下戸またはドライバーなのだろう。
「手を挙げた方にもジュースをお願いします。」
承りましたと下がるスタッフに横目に目の前の監督に声をかけ・・・
「飲み物代は私・・・」
「「そちらはうちで払います!」」
両隣の三枝と首藤に制止された。
各テーブルに前菜と飲み物が揃ったところで首藤が立ち上がり、簡単な挨拶
乾杯の音頭は佳澄がとった。
前菜が終わりスープが運ばれたところで脚本家が言葉をかけてきた。
「楓佳先生、本当に高校生なんですか?」
「正真正銘16歳、今日も学校帰りです。」
「とてもそうは思えないんですが、人生二週目とか言わないですよね」
和やかに時に騒がしく食事は進み、デザートになったところで本題が始まった。
「まずは無事秋に第三クールを放映することが決まりました。」
「それに冬にこれを舞台にしたいと思っています。」
「そちらが本業でしたね。」
「ええ、今回は良い勉強をさせていただきました。」
劇団の座長であり監督を務める男は苦笑いである。
『あれだけ締め上げればな・・・』
ドラマ撮影立ち上げ当時、中学生で受験生の佳澄に嘗めた態度をとったスタッフは全員その場でシバかれている。
この場に同席しているアニメ化スタッフも同様で、佳澄には逆らわない。
ちゃんと事情を説明すれば理解もするし代替え案も提示するので暴君という訳ではない。
ちょこちょこ首藤や三枝を通じて差し入れや相談に乗ったり、アイデアを提供したりしている。
この場はそのお礼も兼ねた報告会兼親睦会、相談会であった。
目線で先を促す。
「公演の方は昨日送っていただいた第1シーズンの台本を使わせて頂けないでしょうか。」
「ええ、その積りで送ったものです。」
「有難うございます。しかし、筋は変わらないのに雰囲気はまるで違いますね。」
「放映している第3シーズンの内容を手直ししようと思っていましたがこれならほぼそのまま使えます。」
第1、第2の頃は屋外での撮影ができる状況ではなかったので室内シーンだけで構成されている。
第3からはヤーレ近郊の農村で撮影されていた。
「楓佳先生、原作の方も発表して頂けませんか。」
「出したら内のメンバーは全員買いますよ」
「こちらもずっとお願いしているんですけどね。私も読みたいです」
笑って答えない佳澄、原作は収納空間にジーンの私物として数冊が眠っている・・・
「次は私の方から」
今度はアニメ化の責任者が口を開いた。
「来春の放映で「風の果ての物語」の第一部を放映します。
こちらが声優の候補者になります。」
話そのものは昨年の春、ドラマ化より先であったが制作会社の決定で大揉めしてアニメ化が発表されたのは今年の春だった。
声優も決まらず、夏休みにオーディションをすることになった。
「オーディション用の台本はこちらです」
リストと台本をテーブルに置いた。
「わかりました。今週中に確認して結果をご連絡します。」
ワインリストの裏で佳澄とジーンで激しい口論勃発
ワインを飲みたいジーンと三枝達を犯罪者にしたくない佳澄
ジーンは向こうに戻ったらマリオネットを改良して飲めるようにするつもりです。




