帰還後、高校にて
無事?帰ってきました
佳澄が通う高校は元男子校で全国から受験生の集まる名門私立高校だ。
共学となったのは2年前、1学年100人4クラスで女子生徒の数は2年に4人、1年に7人
制服は元からの学ランと共学化時に追加されたブレザー(ズボンとスカートの選択が可能)
女子生徒向けのスカートを選択する生徒はなく、ブレザー姿も殆どいない。
佳澄もまた学ラン姿で窓の外を眺め、ため息をついた。
『真面目にやれ、教師が気の毒だぞ』
『と言ってもね・・・』
先週終わった期末テストの結果は満点、教師の解説も目新しさはない。
テストは自力でということでジーンはその間寝ていた。
実際は手に入れた情報の精査していて佳澄との五感の共有は最低限していただけだが。
佳澄がヤーレに行ったのは期末テスト最終日である。
そして戻ってきた時の時刻は1時間後・・・
『戻りたいと思っていたし、戻れて嬉しいけど・・・』
『ヤーレでの2週間がこっちの1時間とはな』
ジーンと共存してからの1年が向こうでは二日、向こうでの2週間はこっちでは1時間
単純換算はできないが過ごした時間に関係なく移動した直後の時間に戻ってくるようだ。
『まあ行方不明や誘拐騒ぎにならないことは感謝だけど』
戻った直後、混乱する頭を鎮め、部屋にあった服に着替えてリビングに移動
怪訝な顔の弟に一声掛けて道場に休む連絡をし、部屋に戻った。
休日を利用して確認した結果、ヤーレで取得したスキルの大半は制限はあるものの使えることが分かった。
収納も同様で戻ってきた時に着ていたヤーレの服や装備、認識票は速攻で収納の中に隠している。
期末テストの結果を返し解説をするだけの授業は午前中で終わる。
午後は部活動となり3年生達は有終の美を飾るべく最後の追い込みを続けていた。
授業は終わりHRになると佳澄は戦闘態勢に移る。
私物をカバンにしまい、何時でも教室を出て校舎を抜け出せる状態を整えた。
『右側から2人、左からは2グループ、3人ずつ』
ジーンが索敵した内容を伝えてくる。
『全く、しつこいなあ、今日は予定があるって言ったのに』
『予定が無くても付き合う気はない癖に・・・』
襲撃者は剣道部と柔道部の3年+2年生。
佳澄は有段なのは空手だけだが長期休暇時に受講した市民講座や道場の師範の推薦で剣道、柔道、合気道、少林寺拳法も学んでいる。
その実力は有段者クラス、はっきり言ってこの高校の3年生より強い。
期末テスト前、頼まれて何回か指導した結果、剣道部と柔道部では県大会を好成績で納めインターハイに進んだものがいた。
文部両道を謳うこの高校では部活も盛んだがスポーツ特待生は受け入れていない。
久しぶりの全国大会出場で学校側も盛り上がっていて本来なら認めないフライングを許したのだろう。
終礼と同時に教室に入ってきた上級生達に佳澄は軽めの威圧を掛ける。
「先輩、今日は用事があるから無理だとお伝えしてましたよね」
「ああ、しかし、大会まで時間がない・・・」
「先輩方の指導は顧問の仕事です。無関係な私を頼らないでください。」
何とか引き留めようとする上級生を一睨みで黙らせ、佳澄は颯爽と教室を出ていく。
その後ろ姿に同級生達は熱い視線を向けていた。
「王子様、流石」
「三枝さんはどこかな?」
校門を出て周囲を見渡す佳澄に
『左側30m先だ』
「あ、いたいた」
『有難うジーン』お礼は念話で伝え、佳澄に気付いてい移動してきたワゴンの後部座席に乗り込んだ。
「お待たせしました」
運転席の担当編集者である女性に声を掛ける。
「予定通りですよ、出発しますね」
ワゴン車の後部座席のカーテンを閉め、制服から作家、楓佳の衣装に着替えた佳澄はハンドルを握る三枝に声を掛ける、
「今日はフランス料理のコースでしたね。」
「ええ、あちらさんはとっておきだと言っていたので期待しましょう」
三枝と佳澄の付き合いは1年程、ジーンの活躍を小説として投稿サイトに掲載してから2年程経った頃だった。
楓佳の名前で掲載された小説はリアリティがあり、重厚でいて無駄をそぎ落としたスタイリッシュな文体が好評で一定数以上の読者がいる。
発表してから1年程で書籍化のオファーが佳澄の元に届くようになっていた。
しかし、若くても大学生の男性だと思われていた楓佳が実は女子中学生と知ると親切めかして干渉してきたので断っていた。
そんな中、楓佳の小説の大ファンだという三枝の後輩が接触してきた。
設定資料として掲載していたハーレナ語で手紙を送ってきた後輩は佳澄の意見を子ども扱いせず尊重、
意見も理にかない、誠実だったので兄や両親と相談の上、彼の出版社で書籍化することにしたのだ。
その後も作品のメディア展開の話が色々きていたが、佳澄は表舞台に出ず、彼を窓口としている。
その風向きが変わったのはスピンオフ作品として発表していた小説のドラマ化の話がきたことだった。
丁度ジーンとの共存が始まり、受験だなんだとドタバタして時期であり断る積りだった佳澄を説得したのが三枝である。
4月から深夜時間帯で始まったドラマは好評でそのお礼と続編の話やその他の話をしたいと今回の昼食会となった。
佳澄が会うなら美味しいものを食べさせてくれと言っていたので会合は全てランチ会、
和食に中華にエスニック、はたまたロシア宮廷料理などバリエーションに富んでいたが今回はベーシックになったようだ。
「配役は変更しない方針で何人か増やしたいという要望だと聞いてますが」
「それなんですが、昨日送ってくれたあれを読んでこっちでやりたいと言ってます」




