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シル・ストア~来訪者(旧サブタイトル:風の通り道)  作者:
第1章 ハーレン

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ドッキリ大作戦(下準備)

翌日、ミオと二人で買い物に出かけけていた。

ジーンは「女の買い物付き合うと碌な目に合わない」と言って拠点で仕事中

向こうではあれだけ難しかった分離は佳澄が中継点として携帯端末を持つことで解消していた。

と言うかジーンが黙っていただけで日本でも兄や佳澄のスマホを経由してあちこちのサーバを覗きにいっていたのだ。

ジーンの本体ともいうべきものは佳澄の中だが携帯端末を経由すれば慣れ親しんだ拠点内での作業は問題がなかった。


「フフフ、ドッキリね。どうしてやろうかしら。」

事の起こりは昨日の夕飯の会話である。

ジーンが使っていた部屋を佳澄が使うことにして注文された煮込みチーズハンバーグを作っている。

共働きの両親に代わって佳澄達兄妹は交代で家事をしていた。

掃除・洗濯・料理に家計管理まで3人兄弟でいかに低予算で満足度の高い生活を維持するかで競っていたのだ。

ジーンと共存する前から佳澄が兄弟を抑えていたが、共存後は更に上がった。

兄弟は打倒佳澄で手を組み、兄が大学進学を機に下宿生活に移るも頻繁に連絡を取り合っている。

そんな会話の中で佳澄が「まるでドッキリだね」という言葉にマーサとミオが食いついた。

不在中に溜まっていたあれこれを片づけていたジーンが食堂の会話の不穏さに気付いて戻ってきた時は既に遅し。

如何に戻ってきた男共を驚かせるかで大いに盛り上がっていた。

切っ掛けとなった佳澄は二人の熱量に圧倒され聞かれるがままに知っていることを答えている。

『ジーン、どうしよう・・・』

『・・・諦めろ・・・こうなったら気が済むまで付き合うしかない』


肌着や洋服、様々な日用品を買い揃え、収納に入れる。

最初はジーンの使う収納空間を利用するつもりだったが、ギルドに登録する際、問題がありそうだったので佳澄自身の収納空間を作った。

容量、性能共々ジーンに匹敵するものを生み出し、マーサ達に呆れられた。

佳澄にしてみれば参考に出来るのはジーンのものだったので必然だったのだが・・・

「この収納だけでも最低Dランクね。」

疑問符を浮かべた佳澄にミオを説明した。

「この容量だけでも何でも屋の中でもトップクラス、その上、空間内を区切って時間停止、時間加速ができるなんて反則級よ」

「・・・」

「ジーンの妹にしておいて正解ね。私の知る限りその性能の収納を持っているジーンだけだから。」


異能者が持つ必須スキルは並列思考である。

並列思考と呼べるレベルのスキルが無いと異能を維持できないので異能者であれば誰でも持っている。

次に必須と言われるのはこの収納である。

辺境民は特にモンスターの襲撃で身一つで逃げる羽目になることがあり、身の回りのものを入れておける収納は必要不可欠である。

何かと移動の多い何でも屋も同様、城塞都市に住む異能者は必須ではないが便利なので覚えるものが多い。

覚えているものは多いがその性能は玉石混交、最低クラスは小型のハンドバック、

このサイズでも貴重品を入れるには十分であり一般人でもこのスキルの習得を目指すものは多い。

異能者ではない一般人でも大体十人に一人位はこの最低ランクを身に着けている。

最大クラスだとガイやジーンのように大型コンテナがいくつも入る。

流石に東京ドーム何個分なんていうサイズの容量を持つ異能者は居ない。

・・・魔人ならいるかもしれないが・・・

「ガイ叔父さんのは容量だけならジーンより大きいし、時間停止も出来るけど。」

「空間を区切って機能を変えるなんて器用なことはできない・・・」

佳澄は夢を通じてこの世界のことを知っているし、ジーンからある程度は聞いている。

しかし、わざわざ言葉にしない常識の部分は知らないことが多いということにミオ達は気が付いた。

特に男であるジーンは佳澄が必要とする女性の常識については殆ど知らない。

結果、ある程度常識が身に付くまでマーサかミオが傍にいることになった。


「ギルドは文句言うだろうけど、佳澄の本登録はガイ叔父さんが戻ってからの方が良さそうね。」

「そうします。」

「普通にしている分には問題ないんだけどね。」

普通に売られているものを買う分には問題ない。

しかし、店に置いてないものや奥から持ってきてもらうようなものを買う時に日本語が出る。

幸い辺境民は普段都市とは違う現地語を使っていることが知られているので変な目で見られることはない。


「次はマリオネットですか?」

ジーンが拠点内で作業するにあたり、ビジョンや端末、拠点内のネットワークに繋がっている機器を操作するには問題はない。

しかし、自由に動ける体が無いと何かと不便だった。

異能の数あるスキルの中に人形使いというものがある。

この世界、モンスターとの戦いで負傷し、腕や足を失うものが後を絶たないので義手、義足の技術が発展している。

SF世界のように全身サイボーグなんていうのも珍しくない。

さらに物を操る異能から発展して複数のマリオネットを操り戦う人形師を名乗る異能者もいる。

ジーンと直接会話をしたかった兄が最初におしゃべり人形を買ったのは佳澄の書いた小説で人形師の存在を知っていたからだった。

その人形は全く使い物にならず、善意の寄付としてバザーに出品された。


「ジーンの奴、自分でカスタマイズするからシンプルな奴で良いって言っていたけど」

不敵に笑うミオに佳澄は引き攣った表情を浮かべた。

「お財布なら気にしなくて良いわ。色々と稼いでいるからね」

今回の買い物は全てミオの個人資金で賄っている。

当初はジーンが自分の資金を出すと言い、マーサはクランの共有資金を使えと言っていた。

それらを断ってミオは自分のお金で佳澄の買い物をしている。

そう佳澄を着せ替え人形にしてファッションショーを楽しんでいるのだ。

「素材が良いと楽しいわー」

ウキウキとした足取りで商業区を歩くミオの横で佳澄はため息をついた。

「お手柔らかにお願いします・・・」

フリーマーケットを使わずバザーを利用したのは身元を特定されるリスクを少しでも減らしたかったから。

知り合いが関わっているバザーにこっそりと紛れ込ませました。

似たような出品が多かったので小さな子供のいない深山家が出したとは思われてません。

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