プロローグ
物心ついたころかずっと疑問だった。
何故知らない世界のことを夢に見るのか。
知らない人、知らない町、知らない世界
その中で私はジーンと呼ばれていた。
夢の中のジーンは駆け足で成長し・・・といってもその中では普通に・・・
夢の終わりでは30代半ばのおっさん、もとい青年になっていた。
ジーンとしての記憶はTVでドラマを見るようではあったが非常にリアルだった。
まるで舞台でジーンを演じているようにこちらの思いとは無関係に進んでいく。
しかし、食べれば味は分かるし、喧嘩して殴られれば痛い。
時々だがジーンはこちらの思いを感じとかのようにふるまう時がある。
そしてジーンもまた私、佳澄のことを知っていた。
私が家族にジーンのことを語るのと同じようにジーンもまた佳澄のことを周りに語っていた。
そして私もまたジーンの思いらしきものを感じることがある。
何故・・・何故・・・何故
疑問は尽きない。
兄弟には夢の話としてジーンのことを語っていた。
その話を面白がった兄は紙に書いてみろと言ってノートを渡してきた。
私が5歳の時である。
そうやって書き溜めたノートが何十冊にも溜まった頃
今度は小説にして投稿してみろと勧めてきた。
「なんで?」
と聞く私に対し、兄は言った。
「もしかしたらお前の言うヤーレの街やシル・ストアのこと知っている奴がいるかもしれないだろ」
なるほどと私も思った。
「それにお前の夢の話って面白いのに家族以外には話せないだろ」
小説として投稿すれば友人達との話題に出せるという訳だ。
確かにその通りだと思った。
家族にこの夢の話をしたのは私が3歳の時
覚えていないがそれ以前から夢の話を口にしていたらしい。
最初は夢物語として面白がっていた両親や兄も4歳になる頃には家族以外に話すのを禁止としていた。
子供の夢にしてリアルすぎるということだった。
幸いというべきか家族以外に話をすることは禁じたが家族に話す分には良しとしている。
夢の内容をノートに書くことも小説にして投稿することも応援してくれた。
そうやって小説にまとめたジーンの物語(風の通り道)を小説投稿サイトに掲載したのは私が13歳、中学校に進学した後だった。
そして今、私は声は出さずに絶叫していた・・・
「なんでヤーレの街にいるのよ!!!」