#61 魔Ⅴ~Devil’s Stygian Savior Ⅴ~
「ん...んん?」
「大地!」
目が覚めるとそこは、いつものビルだった。
「よかった...無事だったみたいね」
「なぁ、なんで俺ベットに寝てるんだ?」
「貴方、”偽名”と戦って道端に倒れてたのよ」
「道端に?」
思い出してきたぞ...4人組ぐらいの”偽名”に襲撃されてそれで...
「そうだ!雪のやつが!」
「でしょうね...
「知ってたなら教えてくれても!」
「違うわ」
俺の言葉をすぐに否定する九十九。
「私たちも昨日の夜知ったのよ」
「夢夜がここを襲撃してきたからね」
「夢夜が...?」
夢夜...美月直属の部下で実力も立場もかなり上に位置するやつだった。金髪に青い服を着ていたのが特徴だったからよく覚えてる。
口調は丁寧語なのに武器はモーニングスターで能力は【頑強】とかいう見た目と言動に対しての戦闘能力が一致しない不思議な奴だったのを覚えてる。
「だからほかの彼女らも関わっているっていう予想はしてたけど」
「まさか当たるとは...」
「これ、情報が世間に出たらやばいんじゃないか?」
あいつらは美月直属の部下だ。和平に完全に同意していた奴らが襲撃なんてしてるとわかったらまた人間と魔族の戦争が起きかねない。
「えぇ、だから緘口令をしいておいたわ」
「ただ、そうすると春香の言っていた【DSS】って会社が何者なんだって話になるな」
「えぇ、曰く配送業者らしいけど」
「配達業者...ねぇ」
「表向きはただの配送業者で知る人ぞ知る品質のいい配送業者...らしいわ」
「なぁ、俺らで検挙ってできないのか?」
「そんなことできるわけないでしょ」
「こっちは完全に非公式組織なのよ?」
「今までの功績がでかいから容認してもらえてるだけで」
「勝手に検挙しに行って訴えられたら面倒なことになるんだからね!」
俺の意見は否定されてしまった。いやまぁ実現不能とは思ってたしいいんだけどね。
「じゃあどうするんだよ」
「そうねぇ、罠を敷いてみる...とか?」
「罠?」
「えぇ、ちょうど終結30年のセレモニーの話が上がってるのよ」
「そこでその打ち合わせとして幻夜、夢夜、雪、そして里雨の4人を呼び出す」
里雨っていうのは美月の直属の部下として雪の相方として戦っていた人物だ。
何気にあいつらの連携は馬鹿にならなかった。
「いや、待て!今の俺じゃあいつらには勝てないぞ!」
「えぇ、だからかなり危険な賭けなんだけど」
「今兵器開発部に頼んである兵器を使うわ」
「新兵器ってことか」
「えぇ、今美波ちゃんが死ぬ気で最終調整してるらしいわ」
「どんな平気なんだよ...」
「一言でいえばダイバースーツよ」
「ダイバースーツぅ?」
あまり聞きなれない単語なため少し困惑してしまう。
「えぇ、ダイバースーツ」
「といっても、亜空間へ潜るダイバースーツよ」
「いやいや!あれって確か潜航時の動力機関が大型すぎるって話で実用化プロジェクトは凍結されたはずじゃ!」
うちの組織が保有してる戦艦にも搭載されてない技術だったはずだ。
この間...つっても先月ぐらいか。愛華を助けに蓮司とビルに突っ込んだときに艦を見せてもらったがエンジンが特に変わってる様子はなかったんだよな。
補助エンジンらしきものも見えなかったし。ただまぁなんか出力上がってね?とはおもったが。
「大地、今はもう30年経ってるのよ?」
「そのうえ貴方が”偽名”から引っこ抜いてくれるあれのおかげで主機関の作成どころか小型化に成功したのよ」
「んな馬鹿な...確かに俺の髑髏もトライクリスタルを使ってるけどよ!」
「あれを量産したってのか?」
「もちろんデチューンした劣化品だから暴走の危険性はないわ」
「いやいや...さすがにダメだろ!」
「でも、あれのおかげでエネルギー社会に革命が起こってるのは確かよ」
「あんな半永久的に動力を得られる機関なんて原子力ぐらいだし、有用なのよ」
トライクリスタル...ねぇ。俺も使わせてもらってるが感情に応じて規定値以上の力を発揮するとか負の感情を吸収しすぎたら暴走するとかデメリットが多すぎるんだよな。デチューンした程度で本当に安全なのか?
「まぁ、とりあえずそのダイバースーツを使って会議場付近で潜航、何か怪しい動きを見せたら一気に叩いて無力化させるわ」
「そう簡単にいくとは思えないんだが」
「でもやるしかないのは確かよ」
「だから、今度のセレモニー会談の時にDSSに所属しているかだけ聞くわよ」
「それで所属しているといった後に攻撃してきたら逆にこっち側が強襲、捕縛で行くわよ」
「わかったよ...じゃあそれまでに髑髏の改修、頼むぞ」
「美波に伝えておくわね」
そうして俺は病室に一人きりになる。
「点滴が刺さってるんだし、多分安静にしてなきゃだめだよなぁ」
「しっかし、なんかあいつら4人のことで忘れてるような気がするんだが...なんだっけか」
そう俺のつぶやきが病室に響くのだった...
♦
「九十九紫苑から連絡が来たわよ」
「...ほんと?」
「えぇ、今度の終戦30周年記念セレモニーの打ち合わせだって」
「できれば4人全員出来てほしいとも書いてあるわ」
「いやいや、あいつら正気?!」
赤いリボンを付けた金髪の魔族の少女が叫ぶ。
「幻夜姉、落ち着いて」
もう一人、青いリボンを付けた幻夜にそっくりな魔族の少女がたしなめる。
「夢夜!落ち着いてられると思う?!」
「だって貴方が顔をさらして攻めに行ったのに打ち合わせしましょうは変よ!」
「私もそう思うわ」
「私も」
「雪ちゃんも里雨ちゃんも?!」
「んもう...罠ってわかってるなら対策していけばいいだけじゃん!」
「「「あ、貴方も変だとは思ってたのね」」」
「ハモらなくてもいいじゃん!」
「ごめんって」
「それよりも、対策って?」
「私達4人がいれば”あれ”が使えるじゃん」
「あ~...じゃあ大丈夫ね」
「それじゃあ、参加する旨の返事、打っておくわね」
「よろしく~」
♦
「大地、返事が来たわ」
「どうだった?」
「OKだって」
「さて、あいつらも奇襲や強襲は警戒するだろうけど」
「そんな奴らと正面切って戦えるのかねぇ」
「だからあんたの髑髏を強化したんでしょうが!」
「え?どうせ潜航機能が付いただけかと」
「だけじゃないわよ」
「武装は使い勝手はそのままに威力を上げてあるわ」
「あと、新機能として」
「単独でのワープ・空間潜航ができるようになってるのが一つ」
「わ、ワープ?!」
「最後に」
「【オーバーロード】を付けたわ」
「何そのやばそうな機能」
「まぁ、それもあながち間違いじゃなくてね」
「3分間だけ性能が2乗、異常なまでの高火力と高機動を発揮できるわ」
「厳密には3分以上も可能なんだけど」
「3分を超えると今の大地の体の再生じゃ追いつかなくなって」
「機体ごと緩やかに崩壊するわ」
「だから極力使わないこと」
「使うなら逃げ切るか倒し切りなさい」
なんかワープとか【オーバーロード】とか物騒な機能が増えてくなぁ...
これ個人が所有していい戦力じゃないんじゃないかな。まぁ大戦中のおれの能力を再現するって目的だしわからなくはないんだけど。
「りょ、了解」
「あっそうだ」
「一応そろそろ3ヶ月ぐらいの付き合いになるんだ」
「後で俺もチェックするからな」
「おっけ~」
「あと、そん時は一旦人払いしといてくれ」
「...なんで?」
「あんまり俺が見張ってるといい感じしないだろ?」
「ま、まぁそうね」
「そうしとくわ」
「さてと、装備の説明も終わったし作戦の詳細だけど」
「まずは私と美波、彩音、有芽、理紗で打ち合わせをするわ」
「大地と第12護衛隊...デュラハンたちは亜空間に潜航、様子を見守ってて」
「そしてDSSに言及した時にこちら側へ攻撃してくるようだったら通常空間へ浮上、迎撃にあたって」
『了解!』
「決行日は来週の土曜!」
「頼むわよ」
そうして、俺たちは各々作戦に備えるのだった...




