#60 魔 Ⅳ~Devil’s Stygian Savior Ⅳ~
「なんでお前、そっち側についてるんだよ!」
DSSと戦ってる中、32年前に俺の妹を殺しかけた奴...雪が突如と乱入してきた!
「あら?別に言ってなかっただけで前からこっちよ?」
「マジかよ…」
30年前の俺だったら3人の相手ぐらい余裕だが今の俺じゃ雪と戦うのは無理だ。
「出てきたってことは、俺とやり合うつもりなんだろうな!」
「そうじゃなきゃ出てこないけど?」
刀が弾かれたせいで再生成してもらわないといけなくなったがそんな隙は与えてくれないだろう。
魔法で攻撃するのが1番だとは思うがこれ以上ここで戦闘したら街がもっと酷いことになってしまう。ただでさえブレイジングスパークで道や壁はボロボロになっている。ここで万象魔法のカタストロフィ系なんて撃とうものなら家にも影響が出てしまう。
「どうすっかな…」
いや、そういえば一つだけ周りへの影響を気にせずに使える魔法があったな。
「古都、今から強化魔法を最大出力で使う」
「お前の力でブーストもかけてくれ」
≪いや、そんなことしたらお前の体は≫
「再生は8割方戻ってきてるんだ」
「行けるさ」
≪…あぁもう!知らないからな!≫
「作戦会議は終わったかしら?」
「あぁ!」
「じゃあ、死んでもらおうかしら!」
「擬似冥府…超過!」
全身が真紅に輝き始める。
ハデスよりも火力の上がった超過。
それを表すかのようにいつもよりもより体が紅くなっている。
「新しい姿を手に入れたからって勝てるとでも?」
雪が余裕の表情でこちらを煽ってくる。
しかし、5秒後にその表情は崩れることになる。
「がっ...」
スプリングを壁に叩き付ける。
「――何が...?」
強化された身体能力は音のそれを優に超えている。
いくら魔族といえど肉眼では捉えることができないらしい。
「お前ら、まさか今の見えなかったのか?」
壁に叩き付けたスプリングの首を絞めながら振り返って逆に雪を煽る。
「このぉぉぉぉぉ!」
怒りに任せたままクレッセントが飛んでくる。
「よっ!ほっ!」
クレッセントの攻撃を軽くいなす。
「よくも!よくも!」
「柄にもなく熱いねぇ」
≪おい、お前性格悪くなってるぞ≫
「ったりめぇだよ」
「こちとら愛しの彼女との帰り道を邪魔されたんだぞ!」
クレッセントの顔面を掴み振り回す。
「はぁぁぁぁぁ!」
脚じゃなく顔面でジャイアントスイングを食らわせ、雪の方向へ投げ飛ばす。
「おっ...と、相変わらず荒々しいねぇ」
「離してください!あいつは私が!」
「その怪我じゃ無理でしょ?クレッセント」
「でも!」
「アポロンは諦めましょう」
「まるでスプリングは取り返すみたいな言い方じゃないか」
「えぇ、もちろん」
正直ここまで強化魔法を使ったのは初めてだからどれぐらい持つのかが予想できない。
もしかしたら雪との戦闘中に消える可能性がある。
つまりさっさと決着をつけないといけない。
それにここまで街をめちゃくちゃにするのもやばいしな。
「けが人抱えて勝てるのか?」
「あの頃の貴方ならいざ知らず、今の貴方なら勝てるわ」
「舐めるな!」
思い切り地面を蹴り空へと飛びあがる。
目の前にある家の屋根に着地し、方向転換して雪に蹴りを食らわせる...が
「マジ?!」
障壁が出現し、俺の蹴りを防いでいた。
「ちっ」
また別の家の天井に着地する。
「あれどうすっかなぁ」
≪腕に僕の剣を生やして突破しよう!≫
「それ採用!」
「うっ...がぁぁぁ!」
両腕に少し痛みが走ると同時に腕が剣へと変化する。
この腕は防壁その他を突破できる力がある。
「はぁっ!」
様々な家を飛び交いながら雪の周りを走る。
「喰らえ!」
両腕を合わせてもう一度ぶつかる。
「なるほど...縁切り神の力で、ねぇ?」
だんだんと障壁にひびが入っていく。
≪行ける!≫
「残念!障壁だけじゃないのよ!」
「撃滅閃光!」
抱えられてるクレッセントが光線を放ってくる。
「あっぶな!」
なんとか飛びのいて躱すことができたが体制が崩れて着地に失敗してしまう。
「しまった!」
俺が避けたすきにスプリングを抱きかかえられる。
「逃がすk...」
体に激痛が走る。
「ぐっ...大...体5分...ちょっ...とか」
おそらく強化魔法の副作用だろう。
「ここは引いてあげるわ」
「アポロンもあげる」
「でも次合う時は、ね?」
そう言い放つと虚空へと消えていく雪と”偽名”二人。
それを見届けると同時に意識を失ってしまう。
♦
「危なかったわね」
「あら?随分と派手にやられたじゃない」
「幻夜ちゃん」
赤いリボンを付けた天使のような金髪の少女――幻夜は3人を見るや驚いた様子で話す。
「この子たちお願いできる?」
「任せといて」
「...ゆめよちゃんがみえないけど」
「あぁ、ゆめよなら今は美月様に報告に行ってるわよ」
「報告って?」
「ほら、大地と戦ってるときに援護が来なかったでしょ?」
「ま、まぁ」
「あれね、ゆめよが魔晶獣を使って連中をかく乱してたのよ」
「助かったわ」
ヘタッと地面に座り込む雪。
「危なかったぁ」
緊張が解けたのか口調が少し柔らかくなる。
「大地とやりあうのなんて30年以上やってなかったから心配だったわ」
「でも能力消えてるし余裕でしょ?」
「そんなことないわよ」
「あいつ、あの頃と違って小手先の技術身に着け始めたわよ」
「え、まじ?」
「まじ、能力使えないからって魔法の技術とか剣技とか」
「うわぁ~...さっさと処理しないと大変そうね」
「吸収が完全に戻る前にけりをつけないと」
「そうね...」
(幻夜さんと雪さん、仲良さそう)
(私が生まれるより前からの付き合いだもんね...)
そんなことをクレッセントは思うのだった...




