#49 遊 Ⅰ〜date Ⅰ 〜
「と、いうわけで土曜日なわけだが」
「なんで待ち合わせ場所が遊園地の前なんだよ!おかしいだろ!」
俺は1人で叫ぶ。周りの人たちが何あの人みたいなことを言いたげな顔で通り過ぎていく。
正直俺も何やってんだろうとは思う。しかしみんなも考えてみてほしい。クラスで妙に距離が近いやつから休日に遊びに誘われて待ち合わせ場所として言われた場所が遊園地なことを。どう考えてもデートじゃん!勘違いするが?!あと普通に駅とかで待ち合わせかと思ったわ!
「あっ!未来!」
「よう、月乃」
「貴方さっき絶叫してた?」
「するに決まってるだろ?遊園地なんて来たことないんだからさ」
「そうなの?じゃあ楽しめるように頑張るね!」
「い、いや張り切りすぎて無理すんなよ?」
「はい、チケット」
「ありがとう」
そうして大衆に混ざって遊園地のゲートに進んでいく。
俺たちは他人から見たどんなふうに映ってるんだろうか。友達?恋人?兄妹?どう見えていても少し複雑な気持ちがあるな。
「未来の初めての遊園地入場だね」
「わぁ…!」
外からでも見えていたが中に入るとたくさんのアトラクションが広がっている。
「あれがメリーゴーランドってやつか!」
「あっちはジェットコースター!」
「観覧車にバイキング!」
遊園地だと月乃から聞いた時にどんなものがあるのか調べておいたが実物を見ると驚きしかないな。あれら全部がチケット代さえ払えば無料というのだから恐ろしい。
「ふふっ」
「ほんっと、初めてなのね」
「初めてのアトラクションだしどれにしようか迷うな…」
バイキングも面白そうだけどジェットコースターも良さそうだよな。いやでも敢えてメリーゴーランドもありか?迷うぞこれ!
「あっはははははは!」
急に月乃が笑いだす。
「ちょっ…ごめんごめん!」
「いや無理っ…はははは!」
「なんでそんなに笑うんだよ!」
「だって…そんな真剣にアトラクション考えてるの見てて…ふふっ!」
「はははははは!」
「おい!笑すぎだって!」
「だって…ひぃぃ…ひひっ!」
「お前どんだけツボるんだよ!」
そんなに面白いのか?こういうのって初めてってのは結構記憶に残るから大事にしたかったんだけどな。
「はぁ…はぁ…落ち着いてきた」
「マジで笑すぎだぞ?月乃」
「ごめんごめん…それで、何にするか決まった?」
「混んでるっぽいけどジェットコースターで」
「おっけー!」
どうやらここのジェットコースターは一回転したり回りながら走ったりするらしい。空飛んでて一回転なんか中々することないから楽しみだ。
「それにしても、やっぱりジェットコースターは人気ね」
「そうみたいだな」
後ろを見るとかなりの数の人が並んでいる。全体で見ればかなり前の方に並べたようで、運が良かった。
「次の次みたいね」
「早いな…マジでラッキーだったな」
「そうね、悩んでる割に案外早く決めてくれて助かったわ」
「そりゃどうも」
ジェットコースター…どんな感じなんだろうか。自分の意思で飛んでるわけじゃないからかなり怖そうだ。
「まさか怖いの?」
「んなわけあるか!」
「そうよねぇ?大切な人を守るとか言った人がこんなので怖がるわけないわよねぇ?」
「お前まだ弄るんかそれ!」
「ずっと弄らせてもらうわ」
「おぉい!」
…嘘ですちょっと怖いです。多分速度的にはあの頃の飛行速度よりは遅いんだろうけど自分の意思じゃないから止まれたりできない上にキャーキャー聞こえるからかなり怖気付いてきたかも。
「お疲れ様でした〜」
「次の方お呼びしますね〜」
係員さんが俺たちを案内する。
「な…」
「先頭なんて珍しい」
なんでこういう時に限って先頭になったりすんだよ!おかしいって!
「ほら、安全バー下げて」
「お、おう」
「安全バーの確認が終わりましたので発進させてもらいます!」
「それでは行ってらっしゃい!」
ガタン!と揺れが起こり段々と動き出すコースター。そしてベルトコンベアでガタガタと揺れながらてっぺんへ登っていく。周りの景色がゆっくりと変わっていくのもまた恐怖を掻き立てる。
「――あ」
てっぺんに到達すると目の前にはレールはなく、空とビルが見える。
「ぅぅぅぅぁあああ!」
落下を始めるコースター。正直舐めてた。めっちゃ速い。飛ばされると思うぐらい強い風が顔にあたる。
「ぁぁぁぁわぁぁぁぁ!」
右に曲がったり左に曲がったり、すごい勢いで景色が変わっていく。時々ある柱もまたぶつかりそうで怖い。
「あっはははは!」
月乃はめっちゃ笑ってる。マジで?なんでこれでそんな笑えるん?!
「ひゃっほぅぅぅ〜!」
心の底から楽しんでるこいつ!
目の前に縦ループが出現する。
「終わったぁぁぁ!」
速度が出たまま思い切り一回転し意識を失いそうになる。
さらにその勢いのまま横回転も入る。
「ホワァァァァ!」
「ちょっ…何その声?!」
笑いながら俺の叫び声にびっくりしている。いや、びっくりするところ違くない?!ねぇ!
「…はぁ、はぁ」
「お疲れ様でした〜」
安全バーが上がり、降りようとするが降りられない。
左に座っていた月乃が困惑した様子で俺を見る。
「あ、足に力入らん…」
「…え?」
「いやマジで、立てない」
「うっそでしょ未来」
「本当だよ」
「割と助けてくれん?」
「わかったわよ…ほら」
「あ、ありがとう」
月乃が差し伸べてくれた手を取りなんとか立ち上がる。
「んもう…案外可愛いところあるのね?」
「可愛い言うなや!」
「いやいや…絶叫系で足がすくんで手繋いでもらってるし…」
「うーん…否定できねぇ」
「ジェットコースターでこれなのによく空飛んだりできるわね」
「お前と異能大会で戦った時にやったようなやつ?」
「そうそう」
「あれは摩耶の力を借りてるとはいえ俺の意思で止まったり遅くしたり速くしたりできるからいいんだよ」
「ジェットコースターは完全に主導権がコースター側にあるから流石に怖い…」
「なるほどね〜」
「次は何乗る?」
「少しは休ませて…」
「えぇ〜、他の乗りましょうよ」
「む、無茶言わ――」
言い終わる前にメリーゴーランドへと連れて行かれる。手を握られてるせいでついて行かないと倒れてしまうので仕方がなくついていく。
「メリーゴーランドは空いてるんだな」
「まぁゆっくり動くしやっぱり遊園地といえばジェットコースターみたいなところはあるから」
「はえ〜」
そうしてメリーゴーランドへ案内される。
周りを見回すと子連れやカップルばかりで浮いているような気がする。まぁ1人ではないとはいえ男子高校生がこういうメルヘンなものに乗ってるっていうのはかなり違和感のあるものだろうが。
「ほら、こっちこっち」
月乃に呼ばれてその方向を見ると手招きしているのでそちらへと向かう。
「月乃、どうした?」
「“一緒に”これ乗りましょ?」
「一緒にって…2人乗りってこと」
「そうだけど…嫌?」
そんな涙目で見られて断れる男子いないって!ねぇ!
「い、嫌じゃないけど」
「じゃあほら先乗って」
「後ろに私が乗るから」
「あ、ああ」
えっ、めっちゃ照れる。無理だって。いくらなんでもよく話す仲とはいえ女の子が後ろにいるんだろ?メリーゴーランドで。多分カップルとかならこれをするんだろうが俺と月乃じゃカップルじゃないし違和感しかないだろ。
「つ、月乃さーん?」
「どうしたの?」
「いや、なんか周り見渡す限りこんなことしてるのカップルだけっぽいんだけど…」
「楽しいんだしいいじゃない」
「そんなもんか?」
「そんなもんよ」
「そ、そうか」
いや…流石にこれは恥ずかしいな…普通に抱き付かれるよりも恥ずかしい。というかなんでこいつはこんなにスキンシップが激しいんだよ!いくら俺でも無心でいるのはきついんだけど!
「っと、動き出したわね」
俺たちが乗っているユニコーン型のメリーゴーランドは上がったり下がったりするタイプの乗り物だったらしく新鮮味があって楽しい。
「変な動きして落ちるなよ?」
「それは貴方の方なんじゃない?」
「言ってろ」
しかし…恥ずかしいし照れるがなんか心地よい気がする。気を張らなくていいというか、落ち着く。あと妙に安心する。
「あら…もう終わり?」
「みたいだな」
ゆっくりとメリーゴーランドから降りる。
「そろそろお昼ご飯でも食べに行きましょうか」
「俺も腹減ってきた」
「こういうところ高いんだけど、大丈夫?」
「先に言えよ!そういうの!」
「まぁ問題はないんだけどさ」
九十九曰く昔払えなかった分の給料というか褒賞が全部入ってるんだとかなんとか。パクられたらやばいと思ったがなんでも俺しか使えないようになってるらしい。ほんとにどういう技術?
「それじゃあレストランに――」
そう月乃が言いかけた時だった。
「どいてどいて〜!」
見知らぬ少女がこちらへと全力疾走してくる。
「ちょっ!」
月乃の手を引きぶつからないように避けさせる。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして?」
「おっとっと…」
少女は動きを止め、こちらへと向き直る。
「な、なんだ?」
俺と月乃が困惑していると少女は口を開き、こう俺たちに告げた。
「貴方達、助けてくれません?」
「「…はぁ?!」」
俺と月乃のそんな叫び声が遊園地に響くのだった…




