#45 動Ⅱ〜sports festival Ⅱ〜
「さぁ!行くぞ!」
両腕に格納された刃を展開してまずはある程度のダメージを負わせるために攻撃を始める。
「はぁ!」
斬りかかるがどこからか取り出した三又の槍で塞がれてしまう。
そしてそのまま鍔迫り合いの状態にもつれこみ、お互いに力を掛け合う。今の俺なら力負けしているような怪力だが今は魔神としての力をある程度取り戻しているも同義、負けるわけがなく前へ弾き飛ばす。
「流石魔神とでも言ったほうがいい?」
「俺がすごいのなんてわかりきってるからな!」
今回の戦闘で最も辛いのはこの鎧最大の利点である今は失った遠距離技を無制限に使えるということを一切活かせないことだ。仮に使ったとしてもその攻撃は喰われ回復に使われてしまう。つまり前までの定石だったクラッシャー・レイ(この姿ではビーム・アイだが)を放ち遠距離で削った後にブレイズ・ブラスター(今はフレイム・ブラスターなんだが)を撃ち込み倒すと言うことができない。それに吸収限界まで放つことは不可能ではないが魔力を使うのがどうクリスタルに影響するかわからない以上試すのも憚られる。
「ほんっと、つくづく思うがお前俺へのメタ性能が高すぎるんだが?」
「あら?魔神様が私のこと褒めてくれるなんて、今日は槍でも降るのかな?」
「じゃあ降らせてやるよ!」
物理攻撃なら喰われることなくダメージが入るのなら、奴を囲むように摩耶の糸で槍を作り出せば!
「摩耶!」
「あいつを囲むように槍を!」
≪オッケー!≫
一次改装のおかげで摩耶との併用ができるようになり、よりあの頃に似た戦いができるようになった。
摩耶の糸を使った戦い方は周りの地形に影響されるとはいえかなり柔軟に戦うことができるし、何よりも俺が反応できなくても摩耶が反応すれば攻撃を防いでくれると言うのもかなり大きい。
「貫け!」
夏海の周りを数十本の槍が囲み、下から順に放たれる。
夏海はその槍から逃れるため上空へとジャンプし、一部の槍以外から逃れる。
下から放つのではこのように上空へと逃げられるのは目に見えているが、なぜそのような策をとったかと言うと
「見えてんだよなぁ!その行動はよぉ!」
槍を喰らうことができないと言う推測のもと、上へと逃げる道を作ればまんまとそこに引っかかると思い、下から放ったのだ。
案の定上へと逃げたため、そこへ跳び、本命の破城杭を髑髏で確認したクリスタルの位置にむけて――
「お願い、帰ってきて!夏海!!」
「喰らええええ!」
放つ。
右腕に編まれた杭がただ一点を狙い、貫く。髑髏で改めてクリスタルの位置を確認するが、問題なく俺の破城杭に貫かれ完全に削り取られていた。
「よっし、クリスタル壊したぞ!」
「よくやった!大地!」
意識を失い、落下する夏海を抱え、ゆっくりと地面に降りる。
「摩耶、治せるか?」
≪勿論!≫
俺が貫いた一点も摩耶によって治療される。
「ふぅ…めっちゃ焦った」
さらに追撃が来る可能性を考慮して髑髏を解除することなく息を吐く。
「ありがとう…大地」
「なんてことはない」
≪照れてんの?≫
「んなわけないだろ」
≪ほんとに〜?≫
「大体お前のおかげで助けられたんだからな」
「摩耶さんも…ありがとう…」
「≪全然、友達を助けるの当たり前でしょ?≫」
摩耶が俺の口を借りて春香に返答する。
「うん…うん…!」
しかし本当にこんな簡単に終わるのか?あまりにも都合が良すぎないだろうか。
あいつら熊並みにしつこいような気がする。少なくとも春香を助けたのちにすぐ再襲撃をして意地でも取り返そうとしてきたのも考慮すると…
「ア…ァ…」
夏海の体が波打ち始める。
さっき貫いた辺りがだんだんと盛り上がってきている。
「摩耶!お前のさっきの治療は問題なかったな!」
≪うん!絶対に問題ないよ!≫
「じゃああいつらは偽名を持っている連中には保険をかけてるってことか?!」
「グ…アァ…!」
貫いた位置から何かが飛び出した。
「んな…バイザー?!」
腹の中にバイザーが入っているわけではいだろうが…というこてはたまたま同じ位置にバイザーをしまっていたってことか?
「ア〜ア…あ〜あ〜」
「うン…まダ声帯が安定しなイか」
「いやいやいやいや!」
「流石にバイザーから体が生えるのは無しだろ!」
夏海と全く同じ体がバイザーから生え、バイザーが独立して動いている。
「大地…あいつの魔力…魔族そのものなんだけど…」
「マジで言ってるのか?美波」
「こんな場面で嘘言うわけないわ」
魔力が魔族そのものって…じゃああの石は新たな魔族を生み出すための装置ってことか?いやでも今回出現したのはバイザーからだよな。
「今日ハ調子があまり良くナいかラ一旦退いテおこウ」
「命拾イしたナ」
どこかへと飛び去る夏海の姿をしたナニカ…多分あれはハングリーそのものなのかもな。
じゃあコードネームを倒すときはああいうのも倒さないといけないのか。
「そうだ、夏海は!」
「う…うん?」
「お姉ちゃ…ん?」
「夏海!」
2人は熱い抱擁をしている…いや〜姉妹でよかった。
これが恋人とかだったら気まずいったらありゃしない。
「ちょっとお姉ちゃん、暑苦しいって」
「というかここどこ?」
「学校よ、それも高校ね」
「高校?!う〜ん…なんなテスト受かったような気がしなくもないような…」
「美波」
「わかってるわよ、ちゃんと精密検査するわね」
「春香ちゃんもついてきてくれる?」
「はい!」
3人がいつものビルへと行ったのを見届けると同時に髑髏を解除する。
「さて…今の時間は何時かな」
スマホを開いて今の時刻を確認する。
「げっ!そろそろ女子バスケの決勝じゃねぇか!」
もしかしてさっきの春香の試合も決勝とかだったんじゃ…
「と、とりあえず第一体育館に行くか」
第一体育館は今ある体育館より少し離れたところにあるため歩いていく。
そういえばさっきの戦闘の時他の連中がいなかったのって美波と九十九が色々してくれたんだろうか。
あとで感謝しないとな。
なんて考えていると、第一体育館が見えてくる。
「緊張する…」
「大丈夫だよ月乃ちゃん!月乃ちゃん上手いんだから!」
「そう…ありがとう」
月乃がクラスメイトと話しているのが見えた。緊張しているのか俺たちがあったばっかりの時と同じ口調になっていて少し心配になる。まぁ俺以外の奴らはみんな見慣れてるんだろうけど。
「月乃!」
「未来…」
呼び止め、駆け寄る。
「頑張れ、お前なら大丈夫だ」
「…ありがとう」
そう言ってコートの中心に向かっていく。
「俺は上から観戦しますかね」
体育館脇の階段を登り、体育館の2階のような足場へと移動する。
ちなみに、うちの体育祭は決勝以外は生徒が審判をするのだが、決勝のみ先生たちが審判をするという不思議なルールになっている。さらにバスケは通常ハーフコートだが決勝のみフルコートになる。だからいつもより迫力がすごいのだとか。
「さてさて…うちのクラス、勝ってくれよ?」
「そうね、未来」
「九十九!」
「夏海ちゃんの件、美波から聞いたわ」
「お前らのおかげで多分他人が来なかったんだろ?」
「まぁね」
「ありがとうな」
「それはこっちのセリフよ、1人救ってくれたんだから」
「んなもん当たり前だろ?俺だし」
「貴方が言うと妙な説得力があるのよね」
「ほら、試合始まるぞ」
よろしくお願いしますという両チームの声が響き、試合がスタートする。
ジャンプボールはうちのクラスが取ることができ、一気に攻めていく。
「にしても月乃上手くないか?!」
1人でディフェンスを抜いていき、一気にゴールまで近づき――
『よっしゃあ!』
シュートが決まり、うちのクラスを応援している人たちから歓声が上がる。
「頑張れ!月乃ー!」
そうして次のボールは相手からだ。
もちろん相手も強いのだが月乃がいとも簡単にパスカットをし、味方にパスする。
「文武両道ってあのことを言うんだろうか」
「月乃ちゃん、やっぱり強いわね」
そうして試合が進んでいくのだった…




