#2 失~lost~
「はぁぁぁぁぁ?!」
「な、なんで俺が学校に?!」
「だって大地、戦いばっかりで全然青春なんてできなかったでしょ?」
「それはお前らもじゃ?」
「私たちは高卒程度とって大学に行ったからきちんと青春はできてるのよ」
「あと、貴方が一番幹部級とやりあっていたから」
「出動回数は一位よ」
「ほんとか?」
「あと、貴方を30年も眠らせてしまった私達からのお詫び」
「ってのもあるけどね」
「紫苑……」
「あ、でも検査はするわよ」
「え?」
「うちの学校は必ず入学前に能力検査をするの」
「まぁ能力の強さによってクラスを変えたりとかはないけど」
「書類に嘘がないかの確認ね」
「だから行くわよ?検査室」
「まじで?」
「まじで」
「はぁぁぁぁぁ」
クソでかいため息を吐き、検査室とやらに移動をする。
「やぁ、久しぶりだね、大地」
「彩音!」
桜彩音、俺に戦い方の教本なんかを貸してくれた教師だ。
こいつの訓練いつも厳しいんだよなぁ
「大地?今変なこと――」
「考えてないよ!」
「ならいいんだけど」
「それじゃあ調べるからこの機会の上に立って?」
「了解~」
目の前のモニターらしきものにどんどん俺の体が3Dモデルとして表れていく。
「う~ん」
「やっぱり予想はしてたけどかなり弱体化してるわね」
「やっぱりか」
「妙に体が重いし、力が出ねぇと思ってたんだ」
「弱体化っていうより消失かしら」
「能力、全部消えてるわよ」
「は?」
「いや、まじで言ってるのか?」
「大マジよ」
「まったく…なんで能力消えてるのよ」
「ほんとに全部ないのか?」
「貴方の能力ってたしか6個でしょ?」
「なんでそんなに持ってたのかはわかんないけど」
「再生と吸収と強化とと変形と未来予知と現実改変だっけ?」
「あぁ、まぁ現実改変は俺でも制御できなかったんだがな」
「え?そうなの?」
「あの戦争の死者を全員蘇らせたのはびっくりしたけど、あれって偶然だったの?」
「あぁ」
「あの最終決戦だって祈りながら戦ったさ」
「運命よ変われってね」
「運命?」
「今お前が言った通り俺は未来予知ができただろ?」
「その未来は俺とあいつが相打ちになってあいつだけがよみがえった姿だったからな」
「…聞かなかったことにするわ」
「っていい加減続きを話すわね」
「能力が消えてるのもそうなんだけど」
「貴方魔力はあるのに魔法適正はないからそこらの一般人以下ね」
「なぁ紫苑」
「な、何かしら」
「俺ってホントに能力者学校通うの?」
「もう手続きも終わらせちゃったし」
「終わった…俺絶対いじめられるじゃん」
「ん?」
「あ、ごめんさっきの訂正」
「え?」
「人よりちょっと回復速度が速いみたいよ」
「ふざけんな!」
「というか俺の家は?」
「え?ここだけど」
「なんでぇ?」
「まぁ案内するわ」
「まじかよ」
そう呟き、俺は紫苑に自室まで案内させられる。
「ここよ」
「わぁ…見事なワンルーム」
「高校生だし我慢しなさい」
「くっそぉ…お前らだって前までほぼ同い年だったのに」
「私はあの時すでに社会人!」
「…お前若く見え過ぎでは?」
「あら?うれしいこと言ってくれるじゃない」
「あ、着替えとかはそろえてあるから安心してね」
「お、おう」
「ちょっと街でも散歩してきなさいな」
「急だな」
「いやいや、世界はどんな風になったのか気になるでしょ?」
「まぁな」
「先行ってて」
「場所わかんなくなったらこれで連絡して」
紫苑が何かを投げてくる。
「おっ…とと」
「スマホ?」
「あんた何も持ってないでしょ?」
「あぁ、サンキュー!」
そう言ったのちにビルを出る。
「うわぁ~復興が終わってる」
「あのころは瓦礫だらけだったのに」
「さて、腹減ったしカレーでも食いに行くか」
そう、何を隠そう俺はカレーがとっても好きなのである。
チーズカレーにフライドチキンってうまいんだぞ?
「ふんふふ~ん♪」
鼻歌を歌いながら歩いていると
「おい!お前ら!動くな!」
ガラの悪い男が女性をつかみ、人質にしつつ連れ去ろうとしている。
「ちっ!いつの時代もああいうやつはいるのか!」
走ってガードレールを飛び越えその男の前に立つ。
「だ、だれだてめぇは!」
「名乗る必要はない」
「弾撃波!」
拳を前に突き出す……が
「あぁん?何も起こんないじゃねぇか!」
「ははははは!傑作だ!」
「あっ!」
能力が消えたのを失念してた!
い、いや、確かハンドガンを持ち歩いてたはず!
胸ポケットを漁るが何もない。
「あっさっき着替えたんだった!」
「やべぇよやべぇよ」
「脅かしてくれた罰だ……お前を殺してやる!」
やられる――
目をつぶった次の瞬間
「いってぇぇぇ!」
「え?」
目の前には黒髪に水色の服と黒い帽子をかぶった少女が立っていた。
「大丈夫?」
「あ、ありがとうございます!」
人質を逃がしている。
「お兄さん、この人、警察に」
俺にその女性を渡してくる。
「あ、あぁ!」
「邪魔しやがってぇぇぇぇ!」
突撃してくる男に向け手を伸ばし
「滅閃光」
そう少女が唱えると極太ビームが放たれる!
「...屑が」
そう呟くとどこかへと去っていく少女。
「す、すげぇ」
「あ、貴方もありがとうございます」
女性がお礼を言ってくれる
「いや、俺は何もできなかったから」
「紫苑に連絡すれば何とかしてくれるか」
そして俺は電話をかける
《何?電話かけてくるの速かったわね》
「いやさぁ、人質にされてた人がいて検査とかを頼みたくてな」
「い、いやいや悪いですよ」
《大地?今どこ?》
「えーと、カレー屋の前」
《オッケー》
数分後、紫苑が来る
「え?!九十九紫苑さん?!」
「あ、貴方何者なんですか?」
「え~と」
「ス、髑髏」
「え?」
「ただの髑髏だ」
「ふふっ変な人」
「それじゃあ、この子は検査しとくわね」
「大方これから食べるところだったんでしょ?食べてきな」
「ありがとうな!紫苑!」
そう言ってカレー屋に入る。
「そういや金はっと…」
待っている間にスマホの中に入っていた電子マネー機能の残高を見る。
「このアプリまだあるんだな」
「さて、中身はっと」
「…ははっ」
「やっべぇ」
「これ残高って店員わかるんか?」
「一名でお待ちの美空様~」
「あっはぁ~い」
「うへぇ…タブレットかぁ」
「昔から苦手なんだよな」
「おっ店員呼び出しボタンあるじゃん」
ボタンを押して店員を呼ぶ。
「ご注文は」
「チーズカレーにフライドチキントッピングをご飯普通辛さ普通で!」
「了解で…」
「?どうかしました?」
「いや、なんでもありません」
そう言って奥へと行く店員。
そういやさっきの女性何も笑うことないじゃねぇか。
能力が消えた骸骨だから髑髏。
よくねぇか?
「ねぇ、あの人」
「だよなぁ」
なんか周りが俺の方を見て噂している。
「美空、大地さんですか?」
客の一人が尋ねてくる。
「違うよ」
「俺は――」
髑髏じゃあれだし、う~ん
「き、如月未来だ!」
やっべぇ…昔使ってたハンドルネームを言っちゃったよ。
「なぁんだ、人違いか」
あっぶねぇ、そういや俺なんか英雄視されてるんだっけ?
まぁ30年前でもだいぶメディアに出てたしなぁ。
「チーズカレーにフライドチキントッピングです」
「ありがとうございます」
う~ん、この声どっかで聞いたことがあるような?
「まぁいいや!いただきます!」
バクバクとカレーを食い進めていく。
「ごちそうさまでした!」
すぐに平らげてしまう。
「支払はこのアプリで」
そう言って支払いをすますとあのビルに戻る。
「さて、大地」
「貴方の名前なんだけど」
「さすがにあのままで行くとやばそうなんだけど」
「どうする?」
「如月未来」
「え?」
「如月未来って名前で行こう」
「話が早いわね」
「いやぁ、カレー屋で聞かれちゃってね」
「とっさにハンドルネーム答えたってわけ」
「そういえば貴方って休憩時間中ゲームよくやってたわね」
「さて、明日から学校だけど、必要なものはそろえてあるから」
「楽しんでおいで」
「ったく、母親かよ」
「お姉さん、ね?」
「あっはい」
こーわ。
寝るかぁ
自室の布団に入り眠りに入る。