#12 肆~Forthe battle~
「頑張ってきてくださいね」
「月乃…任せとけ!」
♦
「貴方が決勝まで勝ち上がったのね」
「お前、なんていうんだ?」
「まったく、私の名前を聞く前に貴方の名前を教えてほしいけど、まぁいいわ」
「私は春野由利」
緑のロングの髪をもつ少女は呆れ気味に名乗る。
「俺は如月未来」
それに合わせて俺も名乗る。
《決勝…試合開始!》
そう彩音の放送がかかると同時に由利は
「小手調べ!」
「ハンドガン?!」
ハンドガンを取り出し、こちらに向かって発砲してくる。
「あっぶね!」
「私から逃げられるとでも?」
「ちぃっ!」
こちらに向かって連射してくる。
「ツインブラスター!」
こっちも負けじと射撃戦に興じる。
「私の前でそれは避けてくださいって言ってるようなものよ!」
「回避するってマジ?!」
いや、俺も人のこと言えないけどさ。
ジャンプとか大きく動くんじゃなくて最小限の動きで回避ってのはおかしくないか?
「う〜ん…ハンドガンも楽しいけど」
「こっちも楽しいのよね!」
「――ミニガン?!」
次の瞬間、大量の銃弾が襲いかかってくる。
「摩耶!」
≪任せて!≫
糸で壁を作り、防御する。
「しかしどうすんだ?これ」
≪攻めに出られるような状況じゃないな≫
「ハデスたちを使っても近づけないよな…」
「ねぇ!未来さん!もう終わり?!」
「ちっ…ムカつく野郎だ!」
「こうなったら…摩耶!」
「多連装のミサイルランチャーを2基用意しろ!」
≪ほんとに言ってる?!≫
「やるっきゃないっての!」
≪わかったわよ!≫
そうして糸で編んでくれる。
≪弾はあんたの魔力で生成するようになってる≫
≪気をつけてよ?≫
「わかってるよ!」
「…もう諦めたのかしら?」
由利が歩いてくる。
「じゃあ、とどめを刺さないとね」
「やられんのはお前だ!」
壁を解き、ミサイルランチャーを由利に向ける。
「――え」
「喰らえええ!」
4連装のミサイルランチャーを2機分発射する。
「痛たたたた!」
「なんでその程度で済むんだよ!」
全弾命中して、かなりのダメージが入ったはずなんだが…
爆炎の煙の中から立ち上がり、こちらへ向かってくる由利。
「私に実弾が効くとでも?」
「何?」
「私の能力は操銃」
「銃火器を呼び出して使ったり、実弾のダメージを軽減することができる能力よ」
「なぁ、その銃火器って制限ないのか?」
「いや…ミサイルランチャーとかは無理よ」
「上のクラスには全部使えるやつがいるらしいけど」
「マジ?」
「さて、貴方の能力はその糸?」
「いいや?」
「俺の能力はただ傷の治りが早いだけさ」
「じゃあその糸は…」
「こちとら神様と契約してるんでな」
「神様?!」
「そんなの認めない!」
ショットガンを8丁生成し、こちらに向けて放ってくる。
至近距離なのも相まってどんどん糸で作った盾が減っていく。
なんでもありだな…でも、銃を使うなら限界はあるはず!
そう思い、盾を分厚くし、再度接近すると
「私ができることは銃を作り出して撃つだけ」
「自由度は低いわ」
「だからこうやって自由度をあげるの!」
「幻象魔法・燃焼付与!」
ショットガンの弾が炎を纏い始める。
「付与系かよ!」
分厚くした糸の盾をいとも簡単に燃やし尽くすショットガンの弾。
もちろん防御が崩されたので、もろに喰らってしまう。
「まずはその斧を」
熱と弾丸で苦しんでる俺が背負っていた斧を取り上げ、遠くへと投げる由利。
「よし、それじゃあとどめと行こうかしら」
「このぉ!」
糸を鋭くし、由利の腹を貫こうとするが
「おおっと、危ない」
「マジでキツすぎる…」
「摩耶、腕2本追加だ」
≪わ、わかった≫
「うぐ…」
「ぐ…ああああああ!」
背中から衣服を突き破って腕が生えてくる。
「っはぁ!」
「ウェブ・ガトリング」
新たに生えた腕と普段からある二本の腕に糸でガトリングを作る。
「4連ガトリングじゃあ!」
由利に向けて乱射する!
その弾幕は俺の正面を完全に覆えるくらいの数あった。
「うわぁ…面倒くさいわねぇ!」
そう言いつつも由利も両腕にガトリングを装備し、由利に当たるであろう弾丸だけを処理しながらこちらへと向かってくる。
「くっそぉぉぉぉ!」
弾丸の密度を上げ、対処できないようにしようとする。
が
「一直線の方が対応しやすい!」
どんどんこちらへと迫ってくる。
「ちっ!」
新しく背中から生えた腕の先に剣を糸で作り、迫ってくる由利に対応しようとする。
「そんなの、当たらないわ!」
ジャンプで避けられてしまい
「しまった!」
後ろに回られ、背中の腕を掴まれる。
「ふんぬぅぅぅぅぅぅぅ!」
メキメキと音を立てながら俺達の腕が引き抜かれそうになる。
「ふざけんなよ!」
「はぁぁぁぁぁ!」
次の瞬間――
「ぐぁぁぁぁぁ!」
「摩耶!」
摩耶が俺から強制的に分離させられる。
「馬鹿な!無理やり引っ張ろうと解除はできないはず!」
「だから魔法をかけながら引き抜かせてもらったわ」
「だ…未来、私が足止めするから斧を取りに行け!」
「っ…わかった!」
ブラストマホークまで走り出す俺に対して
「行かせない!」
ガトリングを放ってくる。
「打たせるもんか!」
糸を作り出し、由利の体を貫こうとするが
「んもう!」
ジャンプで回避された挙句、ショットガンを数発叩き込まれてしまう。
「あっ…がっ!」
「まずは先に貴方から倒させてもらうわ」
「未来!頑張れよ!」
「摩耶!」
俺はトマホークを掴み、壁に足を合わせて
――跳ぶ。
「摩耶から手を離せぇぇぇぇぇ!」
トマホークを思い切り振るう!
「おおっと」
「でも、一足遅かったね」
段々と透明になっていく摩耶。
「おい!摩耶!」
「安心…しろ」
俺は抱き起こし、必死に呼びかけるが
「ここはVR…一足先に現実で待ってる」
そう言い残した次の瞬間、光の粒子になって消えた。
「おい…クソ女…」
「簡単に死ねると思うなよ?」
♦︎
「すげぇ!未来、なんかめっちゃ雰囲気変わってる!」
教室で観客達は2人の試合を見ながら盛り上がっていた。
「今のは悪手でしたね…」
「淡沢さん?」
岩井佳奈が聞く。
「多分、未来さんって仲間とか絆とか、人一倍そういうのを大切にする人だと思うんです」
「つまり、そんな人の前で仲間を殺せば…」
「手をつけられなくなる?」
「えぇ、どういうふうに暴れるのか、気になりますね」
「しかし口調があそこまで粗暴になるとは」
♦︎
「スタッフモード!」
トマホークが杖になる。
「幻象魔法」
「ドラグハリケーン」
龍の形をしたエネルギー弾を囲うように放ち
「万象魔法」
「ブリザードカタストロフィー」
「万象魔法」
「メテオカタストロフィー」
吹雪と隕石を同時に繰り出す。
「そんなのあり?!」
「万象魔法の最大魔法を二つも…」
目の前で巨大な爆発が起こる。
「こんなんでくたばるなよ?」
「もちろん!」
杖を銃で弾き飛ばされてしまう。
「ちっ」
「その杖がなければ、魔法は使えないんでしょ?」
「あぁ」
「だが、俺には拳がある!」
目の前の由利へと跳び、殴りかかる!
「拳なんかで!」
正拳突きを受け止められる…が
「よくも…よくもあいつを!」
「?!」
どんどん奥へ押されていく由利の腕。
「そんな、どんどん勢いが」
「オラァ!」
顔面にクリーンヒットし、少したじろぐ由利。
「貴方の力ってちょっとした再生のはずじゃ…」
「あぁ、そうだ」
「なら、なんで途中で力が増えるなんてことが…」
「俺にもわかんねぇ」
「だが」
「お前を潰すことには変わりない!」
由利の頭を掴みそのまま壁まで引き摺る。
「な、何?この馬鹿力!」
ドゴォンという音ともにクレーターを作りながら壁にめり込む由利。
「ガハッ…」
「よくも…よくも摩耶を!」
なんども壁に由利の頭を叩きつける。
その度に声にならない声で苦しむ由利。
「ただ撲殺するってのもつまらないな」
手を離す。
「ゲホッゲホッ…」
咳き込む由利。
それを横目に俺はトマホークをもう一度握り、構える。
「く、来るなぁ!」
ショットガンが8丁生成され、俺に向かって発砲されるが
「そんなもの、俺には無力だ!」
喰らいながら、無理やり前へと歩をすすめる。
流石に痛いが、再生がすぐに傷の修復を始めてくれる。
そのおかげで腕が千切れ飛んだりすることがない。
そしてそのまま大きくトマホークを振りかぶり
「喰らえ!」
由利の腹を横に真っ二つにする。
絶叫する由利。
「可哀想だから、流石にとどめを刺してやる」
そうして首を切り落とし、光の粒子となって由利は消える。
《如月未来、予選突破!》
「はぁ…現実であいつが死ななくてよかった」
♦︎
「お疲れ様」
「よかったぁ、無事で」
「まったく、未来は心配しすぎだっての」
「摩耶は俺の大事な仲間だぜ?」
「そりゃ心配するっての」
「…ありがとう」
「予選突破おめでとうございます」
「あっ月乃」
「貴方って怒るとあんなふうになるんですね」
「あっそっか中継されてたのか」
「クラスのみんなどんな目で見てた?」
「いやぁそりゃ最初は盛り上がってましたけど途中からみんな怖がってました」
「まぁ腹ぶった斬ったりしたらそういう目で見るか」
「何はともあれ、これで紗彩と芽衣と戦えるぜ」
「Aクラスのトップって言われてるあの2人と知り合いなんですか?!」
「ま、まぁね」
「未来さんって色々な人と付き合いありますよね」
「まぁ姉貴のおかげなんだけどね」
嘘です本当は向こうから俺に接触してきたから俺が自分で交友関係築きました。
《未来!そこから逃げろ!》
「彩音?!一体どういう――」
次の瞬間、天井を突き破り、何かが落ちてくる。
『私は…夢…』
『夢幻の影』
「アンノウン達の仲間ってわけね」
「佳奈のと同じ感じか」
《未来、戦うな!逃げろ!》
「摩耶とならいける!」
『貴方たちも夢に閉じ込めてあげましょう』
次の瞬間俺の意識は闇へと沈んでいった…