1-5
「ねえねえレイ。僕はこれからどうすればいいと思う?」
「知りませんよー」
「だよなぁ」
観測の結果を見ながら僕は考える。
あれから色々調べてみたところ、どうやら僕が昔作った宗教は全く別の国で強く信仰されているようだった。この国にも信望者はいるが少数派で、だから僕は知らなかったようだ。
そして、僕が観測した過激派はやっぱり僕の宗教の信仰を持っていて、しかしやはり過激思想を持っているらしく、どうやらこの国の異教徒達に襲撃を行うようだ。……宗派が違うだけで根元は同じなんだけどなぁ。
これ、僕の責任も間違いなくあるよな。止めに行くべきか?
「お兄ちゃん!クッキーを作りました!」
あまり僕の話を聞いていなさそうだな、と思っていたら、レイはクッキーを作っていたらしい。
「姉様」
「間違えました姉様!」
妹が持って来たクッキーは水色だった。
「ううむ……」
これを食べるのはさすがの僕でも躊躇するぞ。
本当に食い物か?
「このクッキーには何が入ってるんだ?」
「水の精霊がくれた石です!」
「え……?」
石……?
石って食べてもいいものなのだろうか。
「あーん」
フォークで切り分けて妹に差し出してみる。
「おに……姉様がデレた!?……あーん」
様子を伺う。
「むぐ。……我ながらなかなか刺激的な味ですね!」
毒ではなさそうだ。
これなら食べても大丈夫かな。
「どうですか?姉様」
「多分美味しい」
なかなか珍妙な味だった。好奇心が満たされたので僕的には美味しい。
▫
「やあアンドリュー」
ツェザールが訪ねに来た。
「どうした」
家の場所は……クレアにでも聞いたんだろうか。
そういえば彼女はなんで僕の家を知っているのかなぁ、なんてな。僕の家は有名だ。祖母が有名だからな。ナシェルという名字さえ分かれば家の特定も容易だろう。
「学校休んでいたから」
「よくあることだろ」
僕の友達もそう言っていたはずだ。単位はしっかり取れている。というか取れすぎている。なんてことはない。
扉を閉めようとする。
ツェザールに扉を掴まれる。……閉まらない。
「帰れゴリラ」
「……。おい」
やばいな。ちょっとキレてるか?これ。
じゃあ力で押し切ろうとするのをやめてくれないか?
「はあ。とりあえず本題は私じゃない。ほらトリシア」
「はい。妹さんとお話したいんだけどいいかな?」
僕の目に入らなかった角度からトリシアが出てくる。サプライズのつもりだろうか。
「ああ、まぁ……おーいレイー!」
「はーい」
▫
「え、誰ですかこの人」
「さあ」
当然の疑問だった。
……まぁ僕にはもう関係ない人だから。説明をするのが面倒になったわけではない。ないよ?
「じゃあ僕は寝てるから、終わったら起こして」
「分かりました姉様」
「(戦いを挑むのはやめておけよ、今のオマエじゃあの二人には勝てない。どうしてもって言うなら僕を呼べ)」
「(そ、そんなことしませんよ)」
小声でそう釘を刺しておいた。レイには前科がたくさんあるからな。意外と好戦的なのだ。
そんなに心配だったら見張っておけって?嫌かな。寝たいし。
▫
「終わりました」
「おー」
レイが起こしに来てくれたので、ソファから身を起こす。やはりあの部室のベッドは寝心地が良かったなぁ。
「和解しました!」
「……おー?」
もう1回寝るか。
「思考放棄しないでください!」