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「アンドレアって絶対レイモンドよね!?」
と、ミアという少女が言う。最初に話しかけてきた少女だ。王女だが、身分差なんてないかのように話す。
「……私はそう思う」
それに対し、ツェザールが答える。背が高く、見栄えがする容姿をしている。
「隠す様子すらないですしねえ。あなたを見た時に何か反応ありました?リリィを除けば1番仲良かったでしょ?」
クレアが含みのある笑みを浮かべながら、そう言った。彼女は自ら商売を行っているとか。
「何も。……まあ彼、いや彼女か。は見える物しか信用しないとよく言っていた。おそらくそう判断するだけの分かりやすい証拠がないから私をそれだと認識していないのだろうね」
「レイモンドは大概な私達の間でも1番面倒くさかったものね…リリーにも気づいてないのかもしれないわ。……あれ?このままにしておいた方がいいのでは?」
……僕は観測していた。
ゴーグルを外す。
とりあえず歓迎されてはいるようだ。
「とりあえず保留で」
▫
家に帰ると妹が扉の前で待ちかまえていた。
「今日は遅かったですねおに……お姉様!」
抱きつかれた。
妹のレイは僕と違って力が強い。
だから……その。
「は、なして……」
「あ、……ごめんなさい」
息を吐く。肋骨が折れるかと思った。
そういう設定でしたね?とニコニコしながら言ってくるレイになんとも言えない気分になる。
「僕は部活に入ることにした。……から、明日からもこの時間になると思う。兄様はまだ帰っていないのか?」
「はい!兄様どころか母様も父様も帰って来ません!」
元気な返事でよろしい。僕の家は国をまたぐ自由な学者一族として有名だ。
まああくまでこの家は拠点のひとつと言うだけだ。僕とレイ以外の誰かが滞在することは稀だ。
「母様と父様は現状他国に籍を置いているしあと3年は会えないだろ。しかし兄様は一体どこに行ったんだ」
「今日家に帰ったらリビングにドラゴンの目が転がっていたので1回帰って来ていたんだとは思うんですけどね」
「兄様は相変わらずだなぁ」
僕より背の高い妹の頭を撫でる。
妹は何故か僕に懐いているので嬉しそうに微笑みかけてくる。
「姉様、夕食を食べましょう!」
「今日は何かな〜」
いつもは雇っているお手伝いさんが作ってくれるのだが、今日は妹が作ってくれるらしい。
妹の料理の腕を思い出し、好奇心を高まらせながら、僕は機嫌良くそう言った。
ちなみに夕食は妙な甘さのパンプキンスープだった。相変わらず珍妙な味のするレイの料理に感嘆したのだった。