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プロローグ3

 僕は木の上で寝ていた。


「来て来て!ほら、これがアンドレア!木の上で寝ながら頭に本を載せているくらいの本好きなんて全く期待通り」


 ……。


「確かにいかにも本好きといったかんじだ。スカートにもかかわらず木の上で寝ているのもポイントが高い。我が読書部にふさわしい」


「貴女の物じゃないでしょ」


 …………。


「あー、うるっさいなぁ!僕の安眠の邪魔をするな!」



 ▫



 僕は図書室まで連行されていた。

 このような扱いを受ける理由に覚えはないが、貧弱な僕は2人がかりで引っ張られるとついて行くしかないのだった。


「アンドリュー、ここが我々の拠点だ」


「いやだから僕はアンドレアですって。僕女の子ですよ女の子。スカートも履いているし声も高いしどっからどう見てもそうでしょう?」


「……」


「……」


 なんで2人ともそこで黙るかなぁ!?

 ずり落ちそうになる眼鏡を指で支える。

 ……まぁいいか。


「僕は読書部に入るつもりないですからね?」


「まあまあ」


 手で押されて強制的に入らされる。

 力強いな……。貧弱な僕ではやはり太刀打ちできないようだ。


 中には3人の女子生徒がいた。


 ああ……5人で部活成立だからか。


「それで僕を6人目にしようってことですか。僕いります?いりませんよね。帰っていいですか?」


「待て」



 ▫



「……なんですか」


 僕はソファに座らされていた。

 5人から見つめられると圧がすごい。僕は今から取って食われるのだろうか。


 ……このソファ質がいいな。すごく寝やすそうだ。


「この通り読書部は図書室を拠点としている」


「はい。顧問、部員5名が揃っているため部活としては成立していますよね?」


「……まあそうなんだが…………」


 僕に顧問の立場を期待しているわけでもなさそうなので、そう言ったが、どうやら合っていたらしい。なおさら僕を連れてくる理由がない。


「……。他に何かありましたっけ?ええと……」


 部活要項というと……職員室か?のどこだ?

 分からないな、諦めよう。


 そうだな部活に必要なものか、ふむ。


「活動していること、か?」


 いやそんなまさか。図書室にこもって読書しないなんてそんなことあるわけ……。


「その通りだ」


「そうなんですね」


 ああ、僕の研究を見てぜひ勧誘したいと思ったとかでは無いのか。少し残念に思うが、生徒達は知らなくても無理はないよなと思い直すことにした。


「アンドリュー、君はそこのソファで読書するだけでいいから。というかそれで頼むよ」


「なんで読書部なんかにしたんですか……」


「部屋がなかったから……」


「入ってくれるかな?」


 桃色の髪の女の子が話しかけてきた。

 見覚えがある。同級生か。……というかこの部活全員2年生だな。


「仮入部ってことで」


 あのソファは魅力的だ。木の上より寝やすいのは間違いない。しばらく借りられるなら仮入部くらいはしても良いだろう。



 ▫



「紙提出して来ましたよ」


「ありがとう……?」


「どうして不服そうな顔をしているんですか」


「こんなにすんなり入ってくれたのって初めてだから」


 なるほど。どうやらこの桃色髪の生徒がリーダーらしい。この生徒がこのメンバーを集め、部活を作ったということだろう。

 しかし部活に入ったのに不服な顔をされるのはいただけない。まあ確かにあとの4人は曲者に見える。

 僕が凡庸で扱いやすいというつもりもないが。


「読書部に入ってくれたしタメ口でいいよ?同じ学年だよね」


「いえ、僕は祖母が爵位持ちなだけでほぼ平民なので。そういうわけにはいきません」


 祖母は1代限りの伯爵だ。

 その息子である父はそのことを大して気にした様子もなく日々研究に励んでいる。兄もそうと言えばそうか。


「私も平民だよ?」


「……。そうですか」


 目の前にいる少女は相当優秀らしい。

 金を積めば入れなくはないが、この学園にいるということはそれなりの人物の推薦あってのことだ。

 僕のそれは祖母である。親族特典ってやつだな。当たり前だが完全にコネだ。


 体を5人全体が見えるように向き直す。

 平民は僕以外と話す時も敬語を使っていない。僕が敬語を話さなくていいらしいことを咎められる様子もない。少なくともここではそれが許されているらしい。

 息を吸う。


「……アンドレア・ナシェル。よろしく」


 自己紹介なんて久しくしていなかったので、少し気まずくなって顔を逸らした。



 ▫



「なるほど。国有数の商家の娘、騎士団長の娘、宰相の娘、王位継承権持ちか……え?」


 言っていて困惑した。この国の権力を集めてどうするつもりだろうか。

 僕……というか僕の一族は国に囚われないのでそれを止める権利も問うつもりもないが。


 優秀ってそういうことか……?


「商家の娘がクレア、ゴールド家の長女ツェザール様、アンジェリーナ家の次女ライラ様、とミア様。そうですね、顔は把握していなかったが名前は知っている。あと平民のトリシアか」


 親の役職はさっき述べた順番通り。


「じゃあ僕は読書をするので……【『偽証』913-5が僕の手の中にある】」


 靴を脱いでソファに寝転ぶ。

 実を言うと蔵書量が大したことないここの図書館の本は全て読んでいるのだが、2周目が終わるくらいはここにいてあげようかとそう思うのであった。



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