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3-6

「見ないうちに随分男前になったなぁ」


 家に帰ると珍しく兄がいた。


「……」


「俺より背が高くなってるじゃないか!俺が兄弟で1番身長が低いんだなぁ」


 ニコニコしながら言う。

 もっと気にした方がいいのではないか。


「俺より背が高いとなるとそうだ!ドラゴンは雌も雄もだいたい身長が同じなんだよ!!」


「知ってますよ」


 相変わらずドラゴンのことしか言わないなコイツ……。


「人間は肩幅が広くて骨盤が狭いと男に見えるのかー勉強になるなぁ。そういえばさ、ドラゴンっていうのはどうも一個体しかいない時は単独で生殖ができるらしいんだよ。論文は提出して実証待ち。俺が見つけたんだぞ?すごいだろ!!」


「それは確かに凄いです」


 前半との落差で風邪ひきそう。

 この興味の狭さはとても学者らしいと言えるのかもしれない。


「兄様、姉様は私のものなので奪わないでください」


 レイが兄様の後ろから言う。

 頭ひとつ背が高いのでよく見える。


「レイはアンディのことが大好きなんだなぁ。兄弟仲がいいと言うと、白龍というドラゴンの一種はどうやら兄弟仲がいいことが多いらしく、そのまま子供を作ることも多いんだとか。ドラゴンというのは選ばれた種だから劣性遺伝も心配無用!生存に都合の良い形質しか出ないんだよなぁこれが!!」


「分かってはいましたが、話が通じない……」


 ……その種は雄が相当貧弱に生まれて来るのではなかったか。

 雌同士でも子供が作れるようになっているらしいから結果的に見れば生存はそりゃあするのかもしれないが……。


「……兄様、レイに余計なことを吹き込むのはやめてください」


 今ですら危ういのにこれ以上はさすがにまずい。


「そういえばレイはなんでアンディのことが好きなんだっけ?」


「前にも言ったでしょう」


「忘れちゃった」


「あのですねえ……。私の愛は減っていくんです。同じものが2つあれば2分の1。4つあれば4分の1。10個あれば10分の1。分かりますね?姉様はオンリーワンなんです」


「あー...確かにそんな感じだったかも」


「どうせまたすぐに忘れるんでしょうけど」


 僕も普通に忘れていた。

 ……そういえばレイは確率論が大好きだったな。


「うーんそうですね、私はだからレイモンド卿の作ったクレイア派が大嫌いでして」


 僕をちらっと見たあとレイがそんなことを言った。

 興味が無いことに感づかれたらしい。

 クレイア派ね……。


「確率論を宗教に持ち込んだこともそうですけど、人は300000000分の1という数字以外の何物でもないというその教義が嫌いです!!お兄ちゃん!!」


「なんで僕に言うんだ!?」



 ▫



「ということで、アーノルドというやつが読書部に入ってきた」


 妹に説明をしていた。

 ちなみに兄様はこの辺りに出現する夜行性のドラゴンを探すとかで出かけて行った。


「見た目はどんな感じですか?」


「見た目?興味が無いからよく分からないな」


「見た目は大事ですよ!よく思い出してください」


「んー。黒髪で肌が不気味なくらい白くて、あと目も真っ黒だったかな。身長は女として見ても低いくらいで手足もガリガリ、とにかく不気味だったな。よく見ると可愛い顔はしていた気もするが」


 あと猫背気味だった。


「家を持ち出しているからには貴族なんでしょうけど、貴族で黒髪…?珍しいですね……」


「僕が思うにあれは養子だろう。特殊な魔力をしていた。交配目的かな」


「肌が白いというと吸血鬼ですかね?そんなわけないか」


 少し目を輝かせたあと、ため息をついた。

 吸血鬼はめったに見れるものでもないので興味があるのだろう。


「吸血鬼は交配できないぞ」


「そうでしたっけ……」


 結構知識があやふやなのがレイの欠点かもしれないし、そうでもないかもしれない。

 数字に強いのだからそのあたりはあまり支障がない可能性は高い。


「あれは闇属性かな。闇から産まれた子供、ね。悪くないな」


 いかにもそれらしいというか。ちょっと厨二心が疼くというか。


「闇属性、ですか?それは珍しいですね!」


 レイの機嫌がすごくよくなった。珍しいもの大好きだもんな。


「しかし、闇属性の子供を養子にとるとは、その家は王座を簒奪でもするつもりなのでしょうか?」


「さあね……」



 ▫



 ということで次の日。部室に行って他の部員に相談してみることにした。アーノルドはいない。忙しいからほとんど来れないと言っていたしな。


「なあザール。あれは闇属性だと思うか?」


「悪魔の子供だね。見つかったらとんでもないことになるよ」


「……は?」


 想定していたよりもずっと最悪なものでは無いのか、それは。


「ああ、闇から産まれた子供が悪魔の子供だよ。比喩だよ比喩」


「ああ、なんだそういうことか。やっぱりそうだよな」


「うん。……うん」


 ツェザールが何やら満足そうに頷いた。


「お前は勝てるか?」


「一撃で倒せるよ」


「そうか……」


 倒せるのか……。

 じゃあいいか。



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