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過去2

 リリーロッテが死んだ。

 それは誰が見ても明らかだった。


「……まずは葬式かな」


 皆が黙っているなかロイが口を開いた。


 黙っていたって仕方がない。何も変わらない、変わるわけがない。だってもう。


 ロイの口が動く。やめろ、それ以上口を開くな。


「そうだな、ぼくもそれがいいと思う。葬式は生き残った人間を慰めるためのものだってレイも言ってた」


 何か抜け落ちた表情でクロが言う。


「アイツ聖職者としてあるまじきこと言ってんな、……いつものことか」


 冗談を言おうとして失敗した。


「……」


 ルークが無言で首を振る。

 泣いているらしい。正直俺にはそんな余裕がないので少し羨ましく思う。


「それでいいよね?リーシュ。君が良ければ国葬がふさわしいだろうと思うんだ」


「はあ……。お前はこんな時でも【正しい】のか。どうかしてるぜ」



 ▫



「あの少年神父はこれを遠くから聞くわけね」


「レイは大丈夫さ。……根拠はないけどね」


 レイモンドはこれを聞いてどんな顔をするのか……俺には全く想像がつかなかった。いつも通り不機嫌そうな顔をしているのか。

 ああそうだ。


「ロイはこれ聞いたレイがどんな顔をすると思う?」


「……うーん。意外と笑ってたりして」


 それはきっと正しいだろう。


「【観測】」


 ▫▫


「リリーロッテ様が死んだ?……そうですか、報告ご苦労さまです」


 いつも通り不機嫌そうな顔をしていたレイモンドは、報告してきた人が去ったあと、自身の持ち机に座って、下を向いて持っていた本を閉じた。


 上を向く。


 ───────楽しげな笑みを浮かべていた。


 ▫▫


「レイはやっぱ頭おかしいわ」


 しかし想像はつく。

 単純に解放されたと思ったんだろう。

 あの少年は誰かのために何かをするというのがひどく苦手に見えた。

 そして、リリーロッテがやった戦いに心踊らせているんだろう。

 リーシュは子供らしくないと言うが、少年本人の言葉通り変わり者なだけで子供らしい子供と言えた。


 子供らしくない子供はどちらかというとクロの方が当てはまるとオレは思う。

 明らかに演じている。


「ああ、でもちょっとマシになったな。違うこと考えてるといい感じだ」


 このまま忘れていこう。

 時間が経てば記憶もうすれていく。時間はいい治療薬だ。


「葬式終わったらオマエらどうする?俺ことキース・ストレンジャーは道化師でも目指そうかなあああああ!」


 とりあえず叫ぶ。


「うるさい」


 オルフがやっと口を開いた。

 長い髪も相まって相変わらず少女みたいなやつだ。

 リリーロッテと並んで1番絵になっていたのは間違いなく彼だと思う。他の皆は否定するだろうが。いや、ロイはしないか?どうでもいいだろうしな。


「俺さぁ、こうやって他人を値踏みする癖なくしたいんだよね、知らねえって?だろうなオレもそう思う」


「……1回深呼吸でもするといいよ」


 ロイがいつも通りの何を考えているのか分からない顔でそんなことを言う。


 オレたちの中で1番ダメージが少なさそうに見えた。

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