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「写真撮っていいですか!」
「……なんで?」
▫
「それ妹さんが選んだ服?……いい趣味してるね」
カメラを持った女子生徒から解放されたと思ったらツェザールが話かけてくる。
「ああ、まあ」
そうは言うが、普通のTシャツとジーンズだと思う。
「そういやツェザールは武闘祭出るのか?」
「もちろん。……君は?」
「出るわけがない。僕は非戦闘員だぞ」
そもそも審査員だし。
……。
ツェザールにパンチをされた。
後ろの壁にくぼみがついている。
避けたから良かったけど、当たってたら僕死んでたんじゃあ……。
「非戦闘員になんてことしやがる!!?」
「非戦闘員がこれ避けれるわけないんだよねぇ」
一息おく。
「Aランク冒険者、アンドリュー。暴力的でプライドが高く、メイン攻撃は打撃」
高ランク冒険者のリストらしき物を取り出して、それを見ながらツェザールが言う。
「これ君のことだよね?冒険者リストでわざわざ暴力的って書かれるなんて相当だな」
「……Aランク冒険者なんて何百人もいるものからよくもまあ。僕なんてさして有名でもなかっただろうに」
「13歳でAランクは史上31番目に若いって書いてある新聞があってね」
「新聞もなんでそんなにしょぼいものを記事にするかなぁ」
ちなみにSランクは必要ポイント数がえげつないので、僕みたいな兼業冒険者では到達出来ないと思われる。
「少年って書いてあるけど?」
「……二次成長期前にやめるつもりだったからな。一向に来る気配はないが」
「へえ」
「分かったなら寝ていいか」
「待って待って。1回本気で戦ってみたいんだ!」
「......。僕は審査員の1人だから武闘祭には出ないぞ」
「じゃあ今からやろう!」
「ええ......」
そのまま模擬試合をできるところまで連れていかれる。
初めて来たぞ。
「スキルはなしだよな?」
武器がたくさんある。壁にかけられているものも多い。そこから今使えそうな武器を選ぶ。
相手の背が高いので、槍がいいだろうか。僕は武器は一応一通り使える。
ツェザールは大ぶりの剣を選んだらしい。
「そうだね。使ったらこの訓練所が壊れてしまうかもしれないしね」
怖いなぁ。
「ん、僕から行くぞ」
どうせ僕の方が弱いので僕から行っても問題なかろう。
「さっすがアンドリュー。動きはパーフェクトだね」
......余裕ありそうだな。
僕はもう疲れてきたぞ。
「......君槍なんて普段使わないよね」
槍を掴まれる。
筋力で勝てるわけがないので、槍を捨てて後ろに下がる。
?槍を握ったままだ。
......アイツ槍を片手で折りやがった。
「こわ」
懐からさっき選んだ短剣を取り出す。
両手に持つ。
相手の出方を伺う。
「行くよ」
僕の目の前にいる!
目の前で短剣を交差させる。
「危ないな......」
距離はとった方がいいだろう。
「『アイスニードル』」
1回後ろに下がりつつ指をさして魔法を使う。魔力という体力のようなものを消費して使う技術の1種だ。ちなみに僕の魔力は少ない。
「ちっ」
舌打ちをする。全部叩き折りやがった。
計算が狂う。
「『ロックハンマー』『ウォータースプラッシュ』」
計算を建て直し、近づいていく。
『完璧』に首元に刃を潰した短剣を当て......!?
「......はは。そんなことあるか?」
顎で挟まれてそのまま折られた。
直前に嫌な予感がして手を離していて助かった。
「確かに君はなんでもできるんだろうけどさ、そうじゃないだろ?」
ツェザールがそう言いながら近づいてくる。
僕の方が器用で立ち回りも上手いのだろうが、基礎体力が違いすぎる。
僕はため息をつきながら、残った短剣を右手で回し、逆手にして柄を指の間ではさんだ。
「それでいい」
剣を片手で持ったツェザールがつかみかかってくる。
......剣いる?
つかみかかってきた手に左手を掴ませて、右手で殴りにかかる。
剣で防がれ......いける。このまま折れる。
剣を力技でずらされて、折ることはできなかった。
柄は少し擦り切れて熱くなっている。
どうしたものか。
フェイントははなから効かないと分かっている。ツェザールの持つ正義スキルのせいだ。
ただ、スキルを使わないという条件だったので、外せないスキルの分は釣り合いを持たせて相手もフェイントは打ってこない。
首元に武器をやってもああして破壊されるだけなので、剣を手から離させるのが1番やりやすい勝利方法だろうか。それで認めてくれなかったらどうしようもないぞ。
ツェザールは剣以外は使えないはずだからおそらくそれでいいと思われるが......叩き落とせるかなぁ。
そんなことどうでもいいか。どうせ勝てないなら───────。