3-2
「……はい、論文を書くために無職をやっている僕です」
「卒業おめでとう!……今年もここにいて良いの?」
「いいらしいですよ」
必要な単位を全て取得し、無事卒業できた僕は武闘祭の用意にかりだされていた。もう卒業しているので協力する義理もないのだが、審査員を依頼されている立場なのでいまいち断りにくい。
「なんで僕が体力仕事なんて……」
「アンドリューさん体力あるでしょ」
そう言うのは事務員のライカさんだ。
「ありませんよ!」
僕はインドア派なのだ、体力なんてあるはずもない。……たまに発散するために筋トレはやるが。
「それを片手で持ち上げられる人はなかなかいませんよ」
「……」
しまった……!!
「も、持ってみると以外と軽いかもしれませんよ?」
「……。もしかしてか弱い感じを目指してるんですか?異性に転生した例としては珍しいんじゃ……」
「僕は!転生者じゃありません!」
何故それが当たり前のように受け入れられているのか。僕が知らないだけで転生者には印でもついているのか?
僕は転生者じゃないけど。
「そういえば言えない立場だろうと言うことでしたっけ……ということは有名人なんですよね?誰ですか?ヒントでもいいですよ!誰にも言いませんから!!」
「言ったら僕に何かいいことがあるんですか」
「女の子扱いしてあげますよ」
「ほんとに?……宗教関係者です」
僕は転生者ではないが、女の子扱いされるという誘惑に勝てなかった。
「宗教関係者……誰だろ、名前を言えない……有名人……あとイケメンか」
僕の顔を見ながら言う。
今の僕の顔となんの関係があるというのか。
昔の僕の顔か……少なくとも今よりはマシだった。
「分かった!宗教学者のレイモンド・パィゴチイオヒだ!ですよね?」
1発で当てやがった。
「……言いませんよ。パィゴチイオヒ氏は有名人なんですか?僕はそのあたり詳しくなくてですね」
「あれ?外したかな……。レイモンド・パィゴチイオヒはそりゃあ有名ですよ!キルレ一教の比較的新しく説得力のある宗派を作りだした人ですしね。とくに商売人からの信仰が厚く、今1番影響力があるかもしれません」
商売人……。ああ、僕は商売人とは関わりが浅いから。もしかしてクレアが僕によく話しかけてくるのはそれもあるのだろうか。
「レイモンド卿は男女差別を一切しなかったことでも知られていますし男である自身にこだわりがないだろうと思ったんですけどね」
「……」