プロローグ2(現在)
現在と言いながら少し未来です。
キャラの出てくる順番はプロローグ1と同じにしてあります。
「おはよう」
「おはよう。……どんな状況だこれ?」
トリシアに起こされたので、いつもの僕の定位置であるソファから起き上がる。トリシアじゃなければここまでせず、また寝ているだろう。
部室はいつもより散乱としている。
「良かった。起きたんだねアンディ!今の状況をなんとかできるのは君だけだ!」
そうツェザールは芝居がかった様子でおどけたように言った。銀髪に青い目、身長も高く、男物の制服を着ているのも相まってまるで王子様みたいな女なので、芝居がかった言動もよく似合っている。というかファンなんだろう女子生徒にプリンスやらなんやらと黄色い声をあげられているのを見たことがある。
「は?まずは状況を説明しろ」
「ええ?うーん私が話しても面白くないしなぁ」
説明に面白さとか求めてねぇから。
「ライラ、頼むよ」
「……やだ」
小さくしかし全力で拒否したのはライラだ。
元々口下手な彼女に何故説明役を求めた?それが面白さってやつか?なんにも面白くないぞ。
ライラは蜂蜜色の緩いウェーブのかかった髪、同色の丸く大きい目と他の子ぶりなパーツが小さく整頓されて収まっている。背も低く小柄なのが相まって、黙っていればよくできたお人形さんみたいに見える。というか言われている。男子生徒が前そう言っていたのを聞いた。
「事態をこれ以上ややこしくしないで!そう思うわよね、トリシア!」
「え、私?」
今騒いでいるのはミアだ。
艶のある豊かな金髪を巻いている。
少しツリ目で勝気そうな顔でスタイルが良く、王女という身分にふさわしい華やかな見た目をしている。あと鈴の鳴るような声をしているらしい。御学友と名乗る人が言っていた。
「そんなに難しいことじゃないよ。ミアとライラがいつも通り喧嘩していたんだけど、そこに今回はクレアが乗ってきてね。いつの間にやら大乱闘に」
「そ、そうか」
何も分からないが、そういうことらしい。
今説明してくれたのはオルフだ。
オルフはエルフの族長らしい。僕はよく知らないが、エルフというのは森に住んでいる、魔術に適正の高い長命な種族らしい。水のような青い髪を長く伸ばしている。教師としてこの学校にいるので、服こそ質素だが、華のある顔のせいで目立って仕方がない。姪が僕の住んでいる屋敷で家政婦をしてくれている。相当生きていると思われるが、何歳かを聞いたことはない。
「だって面白そうでしたしー」
クレアが言う。
クレアは大人しめの茶髪を2つの三つ編みにしてくくっている。顔にはそばかすがある。
痩せぎすで背が高く、感情表現も少なめで、一見すると地味なように感じる。しかし、思慮深い灰色の目は狡猾さと力強さをのぞかせており、油断のならない相手であると否応がなく感じさせる。というか、実際そうなんだよ。
見た目を整えるととんでもない美人になるので、この見た目も意図的に地味に見せているということである。
「……もう1回寝ていいか?」
「もうちょっと頑張って」
「トリシアが言うなら……」
眠たいが、もう少し頑張ることにした。
「ソファを提供しているのは私なんですから、もう少し頑張ってくださいよ」
クレアが言った。いやお前が面白がって首を突っ込まなきゃこうならなかったんだろ?
「そもそも僕のおかげで部は存続してるんだから、仕事はしてるだろ。もっと尊敬してくれてもいいと思うが?」
寝起きで機嫌が悪いのもあるが、少し尊大すぎたかもしれない。しかし、ほとんど活動していないこの部が存続できているのは、やはり実績のある僕のおかげだろう。……ああでも、僕は飛び級して一足先に卒業してしまったから、もうすぐ廃部になるのか?一応理事長に存続してくれるよう頼んでおくか。
「そういえば卒業したのになんで残ってるのよ」
ミアが言う。
「ほら、大学に入るまでのモラトリアムってやつだ。大学生もモラトリアム?知らないな、そんなことは」
そう言って、布団を被る。何も解決していないが、どうせこれもいつもの光景だ。楽しく騒がしい日々を思い出し、僕はこっそりと笑った。