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2-3

「どうしたんですかアンジェリーナさん」


 何か話があるらしく、アンジェリーナさん用に用意されている部屋に呼ばれたので、扉を少し開けそう聞く。なるほど、時間外労働をしたのは僕に頼みがあるから貸しを作りたかったらしい。


「……トリシアさん、ですよね。あの桃色の髪の」


「そうですね」


 急にどうしたのだろうか。


「私の叔母の探している人に似ているように思います……呼んでもいいですか」


 どっちを?トリシアをか?言いにくそうにしているからか言葉が拙く、主語がないから何を言いたいのか分からない。


「……この家にってことですか?無理ですよ」


「……。いえ。会わせてもいいか?ということです彼女に」


 ああ、その叔母とやらをトリシアの元に呼んでいいかって話らしい。なんだそういうことか。何故僕に聞くんだ?好きにすればいいじゃないか。


「僕はいいと思いますよ」


 トリシアがどう思うのか分からないので、あくまで僕はと言っておく。


「いいんですか?大事な人でしょう?」


「?まぁそうですね。しかしそれと同じように彼女が僕なんていらないくらい強いことをよく知っています」


 そりゃあ僕のヒーローにして目標だし大事ではあるが、それになんの関係が?


「いえそういうことではなく……」


 ようは好きってことだな?その叔母さんはミアのことが。

 分かりにくいな。


「箔が付くしいいことだと思います」


 とりあえずこう言うに留める。

 いろいろと言いたいことはあるが今じゃなくていい。



 ▫



「そういえばエルフがトリシアに会いたいってさ」


「……ん?」


 ミアが硬い動きでこちらを向いた。


「僕が雇っている家政婦のアンジェリーナさんはエルフなんだが、その叔母さんの探している人がトリシアに似ているらしく……」


「ねえエルフって……」


 オルフのことが頭をよぎっているのだろう。リリーロッテを取り合っていた面々には確かにオルフもいた。リリーロッテに会いたいと言ってくるエルフがいれば、真っ先に考えつく。


「でも女の人だぞ?」


 叔母さんと言っていたし 。オルフは女にしか見えなかったが、それでも男だった。一応確認もした。


「……」


 ミアがすっと目線を逸らした。なぜ目をそらすのか。


「そうか……アンドリューは聞いてなかったか……」


 ツェザールが芝居がかったように片手で額を抑えながらそう言う。ムカつくが様になっている。

 ……なにかあるのだろうか。


「ミア……リーシュはリリィが女に転生するとみるや私たちに呪いをかけた……自身以外皆絶対に女に転生するという」


「……。……ああうん」


 リーシュは確かに占い師を名乗る凄腕の呪術師だった。

 転生後に自分だけ男なら敵がいなくなってハッピーって?まあそりゃあそうだが、ひどいな。


 あと、ミアお前女の子じゃんとか言ったらダメか。そうか。


「しかしやはり合わなくないか?アンジェリーナさんは300歳だ。リリーロッテが活動していた時にはもう生まれていたはず。そうなると叔母であるそのエルフは」


「……オルフだけは気合いを入れたのよ。だから転生していなくても女になっているはずだわ」


「君そんなに技量を上げていたんだな……時間があったんだから当たり前か」


 そう感心しながら言って気づく。……そういえば僕は特殊なスキルのおかげで呪いが効かないんじゃなかったか。

 ゴミみたいなスキルだと思っていたがこんなところでも役に立つとはな。

 ん?とするとミアが女なのは僕が呪いを弾き返したからか?


 ……僕は記憶をもどすためにひとつの違和感……ズレをランダムに入れるようにしていた。今回それが偶然性別だったわけで……普段は気にもしないだろうが今回はいろいろあり、結果的にこうして記憶を引き継げたわけだ。


 なるほどな。ごめんな、ミア。僕のせいで君の計画は無駄になってしまったらしい。なんて笑みが抑えられない口元を隠しつつ考える。


「ははは」



 ▫



「オルフが近くにいるらしいが、知ってたか?」


「ん?オルフって誰だ?」


「ほら、エルフのさ……」


「ああ。ちょっと待ってろ」


 そう言ってしばらくすると、オルフの観測結果をメモに書いて見せてくる。



 ───────

 ───────



 名称 : オルフ


 レベル : 141


 性別 : 男


 年齢 : 562


 体力 : 71


 筋力 : 56


 魔力 : 207


 知力 : 47


 職業 : 魔術師


 スキル : 魅了


 状態 : 過保護Lv3、女性化Lv2



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