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「読書部に入るのか?……入るに決まってるだろ!あ、あと僕の実績で部活存続が決定したから読書しなくても部室借りられるぞ良かったな、僕に感謝しておきたまえ」
机に手をついて、僕は自覚しつつ得意げな顔をしながらそう言った。
「おお……やっぱり私の目に狂いはなかったか……!」
「痛い!痛い!」
ツェザールが感極まったような様子で僕の肩を叩く。軽くのつもりかもしれないが僕は華奢なのだ、慎重に扱ってくれないと困る。
「それで本日の議題なんだが……」
ツェザールが言う。
「?」
「アンドリュー、君部長をやってみるつもりはないか?」
……。……?
…………。
「あのなぁ!なんで部長決まってないんだよおかしいだろ!!そもそもどうやって部活をやるって許可を取ったんだ!」
気を取り直した僕は机を叩きながらキレる。
「ま、まぁそこは一応私が部長でミアが副部長ってことで出したから」
「……。それでいいじゃないか」
どうしてわざわざ僕を部長にする必要が?
「いやあ、私はこの通り部長なんて柄ではないし、ミアは副部長であることは酷く嫌がっていてね……王女様に無理強いさせたとあってはさすがに問題が……」
「そういうことよ」
ミアが頷く。
何がそういうことかは知らないが、ミアはやりたくないらしい。
「……クレアは?」
「信用がね……」
「……」
「ライラは?」
「あまり話すのが得意ではないからね、部長向きではない」
それは確かにその通りだ。
少なくとも僕は口を開いているところを見たことがない。
「なるほど……トリシアは?僕には彼女が1番ふさわしいように思うが」
「そういうところは本当に変わらないな……トリシアは昔から目立つことが嫌いだっただろう?そういうことさ」
「えへ、私こういうの得意じゃないから……」
……ふーん。
「で、どうなんだ。やってくれるか?」
「残念ながら無理だな。僕は権威は好きだが生憎暇じゃない。部活に割ける時間が少ないんだそういうことでおやすみ〜」
「え!?」
~
「ふあ……で、どうなった?」
起き上がるのもめんどくさくて顔だけ横に向けながら、状況を聞いた。
「おはようアンディ。いい夢が見れたみたいね」
「どうもミア。で?」
「……。あのねえ」
ミアの眉間にしわがよっている。怒っているらしい。
「とりあえず部員を外から手に入れようということになりました」
クレアが言う。
「そうなんだ」
つまり僕は関係なくなったということか?瞼が降りてくる。もう1回寝るか。
~
「……ん?」
誰かの背中の上だ。
「起きましたか」
「……アンジェリーナ……さん?」
におんぶをされているようだ。なるほど、学校まで迎えに来てくれたのか。僕は寝落ちているだろうと思ったレイが頼んだのかな。
家までの道のりを歩いているらしい。
「はい」
「あの……これって勤務外ですよね?お金とか出せませんけど……」
少し気になっていたことを聞く。
金を稼いだら研究にできるだけ突っ込めというのが僕の家の家訓だ。
……だからこそ僕をこの学校に入れた理由が分からない。放っておけばよかったのに。
「……。ボランティアです」
少し嫌そうな顔でそう言われた。まあお金は欲しいよな、やっぱ。少々申し訳ない気持ちになりながら善意を受け取っておく。
「良かったです」
軽く笑いながら僕はそうやって答えた。
「口を閉じれば完璧なんですがねえ……」
何やらつぶやきが聞こえる。これを詳しく聞くのは僕のためにもならなさそうだ。
「聞かなかったことにします」
「はい」
▫
そしていつも通り玄関でレイに迎えられる。
「ただいまレイ」
「おかえりなさいお兄ちゃん……お兄ちゃんは女の人におんぶされているのが似合いますね……」
「……。どういうことだ」
意味が分からない。
「お兄ちゃんは女の人に尽くされてるのが似合うってことです。……褒めてますよ?」