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エピローグ

「レイモンド、置いてくなよー。俺久しく外出てねぇから体力ないわけ」


「あーごめんごめん」


 僕達は今大学からの帰路についているところだった。

 キースはあれからなんとかトラウマを克服し、僕と一緒なら外を歩けるようになった。せっかくなので一緒に大学に通おうということで、2人で至極真面目に勉学に励んでいるのだった。


「うわっ」


「また矢か」


 今月何回目だ?

 掴んだ矢を魔法で燃やす。証拠品だろって?いや、これは僕が改良して作った新しい転移魔法なんだな、これが。これなら禁忌指定されていないから使い放題だ。発表する予定は無い。どうせまたすぐ禁忌指定されるし。

 証拠品である矢は領事館に転送しておいた。


「こういう時は、お前と友達だってことをちょっとだけ後悔するわ」


「言ってろ。僕がいないと部屋からも出れないくせに」


「なんだとー」


「というか前から言ってるがお前、なんだその露出の多い服は」


 女性用の服を着ている……というのはまあいいとしよう。前からそうだったし。いや、多分女になってからだとは思うが。


 今問題なのはそこじゃない。問題なのは見るからに分かる露出の多さである。首元で紐を結ぶ服だが、背中がガッツリ見えていてなんなら尻までみえそうだし、スカート短いし、ほとんど水着じゃないのか、それ。


「えっちだろ?」


「そこまで見えているともう逆に何も感じないが……」


「え〜。お前ホントにち〇こ生えてんの?」


「生えてねーよ!」


「くはは。冗談はさておき、お前しなかったのかよ?女になって鏡で裸体の確認とか」


「……いやお前と違って僕は転生してから記録参照してるんだぞ。どっちかと言うと順番が逆だろ」


 そもそも固定スキルのせいで前世とほとんど見た目変わってないし。裸体を見てもなんか悲しくなるだけだ。


「今から騎士団のところに行くのめんどくさくね?明日にしようぜ、な?」


 キースが弱気なことを言っているが、明日も講義あるだろ。絶対明日の方がだるい。

 休日にするのも悪くは無いが、できれば今日か明日がいい。


「どうせすぐ近くだろ。ちょっとの我慢だ」


「おやおや、アンドリューさんとキースさんではありませんか」


 後ろから胡散臭そうな口調の声が聞こえる。

 うん。クレアだ。なんでそんなに他人行儀なのかは知らないが。


「……露出多すぎません?知らないフリをしようと思ってたんですが近づいたら思ったよりもヤバめの服で思わず聞かずにはいられませんねこれは……そういう作戦ですか?」


「どういう作戦だ」


「えっちだろ?」


「まあ……そうですね」


 いやそこは否定しないのかい。


 僕はこの露出狂と毎日講義を受けているせいで少し距離を取られている気がするんだよな……。まあ距離を取られているのはそれだけが理由じゃないだろうけど。


「今から僕達は騎士団のところに行こう思っていてな。お前も来るか?」


「いいですねー。この辺りに来るのも久しぶりですし、そういうのもありです、あり」


 クレアは学園を卒業した後、事業を手広く広げて、色んな所を飛び回っているらしい。

 そうこう言っていたら、城門の前に着いた。


「あれ、ザール?」


 門の前でツェザールが待ち構えていた。

 いつの間にこの国に来てたんだ。教えてくれれば良かったのに。


「そう、久しぶりだね。うん。なんとなく君達がここに来る気がしたから来てみたんだ」


「確かに久しぶりだな」


「たまには私の国に遊びに来てくれてもいいじゃないか。近いんだし」


「いやこっからお前の家まで3日はかかるだろ。長期休暇になったら多分行くから」


「本当!?信じてるからね!!?」


「え、うん」


 急にテンションの上がったツェザールを見てもしかして選択肢をミスったか?と思う僕である。


「ボクもいるよー。ツェザールに一緒に来ないかって言われてね?ボクは何時でも学園にいるから会いに来ていいよー」


 門の後ろからひょこっと上半身を出してニコニコしながらオルフが言った。

 相変わらずで安心した。


「大所帯になりましたねぇ」


 クレアが他人事のように笑う。


 頷きつつ、ここに留まっては邪魔だろうと中に入る。どうやら門番にはツェザールが話をつけておいてくれたらしい。何も言われず通された。


 よし、着いた。


「ん。言われた通り来て偉いぞアンド、リュー……なんだその服」


 事前に約束してあったこともあり、ライラが出迎えてくれた。出迎えてくれたが、キースを見て硬直している。


 というかその文脈だと僕が変な服を着ているみたいだろ!僕は普通にオーバーサイズのズボンと上着でごく一般的な大学生ルックだ。


「えっちだろ?」


 お前はそれしか言えないのか。


「……申し訳ないが気持ち悪い」


「そんなー」


 そんなーじゃないよコミュ障か?コミュ障だったわ。いや僕も人のこと言える立場じゃないけど。


「わ、皆来てくれたんだ!」


 トリシアが僕達を見つけた途端笑顔になって走ってきた。

 そう、トリシアは学園を卒業後、ライラ一緒に騎士団に入ることにしたのだった。


「え、その肌面積の大きい服は一体……?」


「今日はお前に会うって聞いてたから気合いを入れてきたんだ。脱がせるの簡単だぞ。セッ〇スしやすそ、……痛ってぇ!!」


 キースの頭に鋭いチョップが入ったのを見逃さなかった。


「本当にうちの姉がすいません……」


 アーノルドだ。キースからアーノルドも騎士団に入ったと聞いている。

 あのままだとせっかくの闇魔法も持て余していただけだろうしちょうど良かったかもしれない。

 ちなみに本人が入りたいと言ったらしい。理由はよく知らないが。


「ミア呼んで来ましょうか?」


「いやわたしが行く」


 そんな会話が聞こえる。

 いよいよ部活のメンバー勢揃いか。同窓会みたいだ。


「せっかく美人なのに台無しだよいろいろと」


 トリシアがキースの長く量のある赤茶の髪に触りながら苦言を呈している。その挙動いる?とは思うがもっと言ってやってくれ。下ネタが多すぎてさすがに辟易としていたところだ。

 頭の良さは据え置きなのが、なんとなく納得いかない。なんでこんなやつにこんな才能が……とも思うが言わない。尊敬しているので。


「お、女王様だ」


「はあ……はあ……事前に言っておきなさいよ……」


 ミアは走ってきたらしい、息を切らしている。先行していたライラはいつも通り涼しい顔をしていた。


「これで皆揃ったね!」


 半年ぶりに全員が揃った。

 トリシアと恋愛関係になった者はまだいないらしい。少し残念に思いつつも、まだ時間はたっぷりあるし、どうせすぐ会えるのだからいいかという気分になる。

 今日はお祭りだ。目一杯楽しもう。



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