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9-14

「トリシア!」


「わ、どうしたの」


 部室の扉が勢いよく開いたと思ったら、アンドリューが焦った顔で入ってきた。


 いつも生真面目な顔か、最近だと調子の良さそうなニヤケ顔をしている印象だったので、調子が狂う。


「どうしたの、じゃない!クレアに聞いたぞ。状況はよく分からないが、キースに危害を加えられたって!おい、キース!さっさと応答しろ!」


 アンドリューが手に持っていた映写機のボタンを連打しながらまくし立てる。


『なにー?』


 眠そうに目を擦りながら画面を覗き込むキースが映った。


「あなたが真犯人?」


『……。……おお!レイモンド、合流したのか!待っていたぞ!!』


「ああうん。いろいろあってな。それよりトリシアの質問に答えてくれ」


 嬉しそうなキースと、それを見て一瞬考えるように視線を彷徨わせたアンドリュー。よくある会話の流れなんだろうなと思わせるくらいスムーズだった。


『ああ?ん?……。…………真犯人ってやつ?えーとこの流れだとー』


「ミアの魂を欠損させた犯人」


『ああ……それはちょっと手違いがあってな。ライラ前提で魔法を設定していたんだが、あそこにミアもいるとは、ちょっとの時間のズレだった。まあ女王様に危害を加えたことは間違いない。捕まえてもらって構わんぞ。……アーノルドは減刑してくれ』


「まあ今のタイミングで女王様がどうこうって情勢的にちょっとまずいからそんなに大事にはしないかもしれないぞ。お前1人ですむかもな」


 以心伝心と言った様子で話が進んでいく。


「いや、それを決めるのはミアだよ?」


 大切なことなので、口を挟む。

 私の回復魔法は完璧とはいえ、ミアは今王城で大事をとって療養中だ。


「そりゃそうだ」


 アンドリューが手を挙げて首を振った。

 顔を見ると、さすがに疲れた顔をしていた。


「キース。なんでこんなことを?」


『ん、んー。ああ一応成功したのか。褒めてやらねえとな。や、こっちの話。ひび割れがあるが、こんなもんか。思ったより影響なかったなぁ。もう少し試すか?いやでもこの辺にしといた方がいいよな』


 私が質問をすると、キースが私の方をじっと見てよく分からないことをブツブツと呟き始める。

 何を言っているか全く分からないので、助けを求めるようにアンドリューを見る。


「いや僕を見られても」


「キースの目的はトリシアのスキルの破壊だよ、そうだろ?」


 にこやかに眺めているだけだったオルフが助け舟を出してくる。


『その通りだ』


「……はあ!?」


『お前も好きだろ?トリシアのスキル。俺も好き。だから頑張って破壊してみようと思ってな』


「お、お前なあ」


 少し気持ちが分かるのかアンドリューの目がキラキラしてきた。1回戦ったから分かるが、これは良くない兆候だ。


「ほら、アンドリューがいなくて良かっただろ?」


 ツェザールが口角を少しあげているが、相変わらず真意の読めない顔で、芝居がかったように問いかけた。


「アンドレアがいたらさっさと治療されて終わりだったんじゃないの?」


 オルフが純粋な疑問というように問いかける。


「いやー、先に問題出されたんだよね?それをどういう手段にしろさっさと解いてこれ、トリシアの……じゃない?って言って負荷かかるのが早まったと思うんだよね。アンドリューって実際そこでどうなるか気になるタイプだろ?」


「否定はできないな……」


「なるほど、ボクにはない考え方かもだ」


 私のいないところで、小声で話し合っている。感じが悪い。特に重要だと思われるところで、口元に手を当てたので全く聞こえなかった。


「トリシアの状態はどんな感じ?」


「……なんとも言えない。何しろトリシアは観測スキルが全く適用できないんだ。スキルが破損していることはなんとか分かるが、それがなんのスキルなのか、どこにヒビが入っているのか、全く分からない」


「えー、すぐなんとかなるわけじゃないのかー」


「キースが破壊にご執心ということはそれだけ難易度が高いということでもある。破壊が難しいなら修繕も同じくらい……いやもっと難しくて然るべきだ、違うか?」


「アンドレアは相変わらず口が達者だね。キースよりスキルに関してはエキスパートなんだから頑張りなよ。キミが学者として勝ってるのってそこくらいでしょ?」


「うぐっ」


 ……。レイモンドとオルフってこんなに仲が良かったっけ。……。


「私が察するに、トリシアのスキルは私の対になるものだ」


 ツェザールが何を考えているのかさっぱり分からない顔で、そんなことを言った。




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