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9-13

「……ふーん、もしかして思い出した?」


【私】が頭を抑えながら部屋から出ると、可愛らしい顔で口角を上げているオルフが目に入った。


「思い出した?」


 何を?


「そういえば他の3人は?」


「3人?ああ、ミアとライラとクレアかな?アーノルドのことは気にしないんだ?いや、別にいいと思うよボクは」


 オルフは昔の通り華やぐように微笑みながら、その実どうでも良さそうに言った。私は知っている。この男は、思いやりが溢れるふりして他人への共感が一切できないどうしようもないやつなんだと。

 ……男?オルフは女の人だろう。女の先生だ。


「ミアは魂に自然では回復不可能なレベルの損傷を受けているから、とりあえずソファに寝かせてあるよ。トリシアが直しておいたらいいと思う」


 ソファに行く。

 寝ているようにしか見えないミアが横たわっていた。

 私は回復魔法を使った。魂の損傷の一切が消えたのを確認する。


「トリシア!」


 私の腕に抱きついて来ながら潤んだ目で私を見上げてくる。その大きい胸を私に押しつけながら。

 そういえば昔のリーシュは胸の大きい女性に対して親の仇のような目を向けていたっけ……。

 ……。


「良かったわ無事で……」


 彼女は演技が下手だ。だから逆説的に全てが本心であることが分かる。


「誰がミアにこんなことをしたの?」


「……分からないわ。ライラなら知ってるかも。いっしょにいたから」


「ライラはどこ?」


 オルフに聞く。

 彼女はさっきと同じようににっこり微笑みながら口を開く。


「ソファの後ろの床に座らせているよ。彼女は頑丈だから魂に影響は受けていない。精神は少し傷ついたかな?まあ回復魔法をかけるほどでは無い些細なものだよ、すぐにもどる」


 ソファの後ろを見ると、虚ろな目で体操座りをしているライラが目に入った。

 顔を見ると確かにライラだが、明らかに大きい。しかし違和感は無い。心の奥底で、ルークは大きくて当然だ、という声が聞こえる気がする。

 ……。


「……戻った?良かった」


「ライラは大丈夫!?いや大丈夫じゃなさそうだよね、今回復魔法をかけるから待ってて」


 手で制止させられる。


「いい。少し落ち込んだ気分になっているだけ」


 前からあまり張りのある声ではないが、いつにも増してだるそうな声でそう言った。


「誰がライラにこんなことをしたの?」


「……下手人は分かるけど言いたくない。黒幕の予想もつくけど変に疑心暗鬼にさせるのは嫌だから言いたくない」


 ライラがいつもよりずっと饒舌に話す。


「……だるそうな割によく喋るって思ったか?取り繕う元気がないだけ。情報の取捨選択の方が面倒だから」


「思ってないよ」


「……嘘つき」


 そう言ってライラは腕の中に顔を落とした。もう私と話す気は無いらしい。


「クレアはどこにいるの?」


 オルフに聞く。


「家に帰ったよ。ここに留まっていたら危険だと判断したらしい。そしてその考えは間違っていないと

 ボクも思うよ」


 にっこりと答えられる。


「オルフは誰が犯人だと思う?」


「アーノルドだと思うよ。アーノルドが寝室から出てきて、その後ボクが寝室に入ると2人が倒れていた。その間に誰の出入りもないはずだからね」


 どうだすごいだろうといわんばかりのドヤ顔があまりにも状況とミスマッチすぎて目眩がする。


「アーノルドはどこにいるの?」


「知ってるけど、今教える必要はないと判断するよ。だって今のキミはキミの魔法であっても修復不可能なほどのひび割れがある。じっとしてた方が自分自身のためだよ?」


 言い回しは分かりにくいが、どうやら私を心配してくれているらしい。

 今にもアーノルドのところに行きたいが、そうすべきではないと。


「そうだな……例えばアンドレアが帰ってくるのを待っていた方がいいね。彼女はこの手の、そう、スキルの分野では誰よりも頼りになると思うよ。なるべくして固定スキルを発動させた人間だからね、彼女は」


「……」


 アンドレア。アンドリューだろうか。固定スキル?聞いたことがない。


「とりあえず1回座ろうか。ボクはキミをここに留めておくためにここにいたんだよ?ほら、ボクの可愛い顔に免じて、ね?お願い」


 私はこの顔に弱いらしい。言われるがまま椅子に座ってしまう。


「いい子いい子」


 何故かオルフに撫でられたまま、私はぼんやりと頭を回した。




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