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9-11

「これが2番目の兄弟、1番上の姉のシャーロットだよ」


「お姉様と呼びなさい」


「あはは」


 ツェザールの2人目の兄弟に遭遇した。

 ツェザールより10センチほど低いものの、十分背の高い女性だった。顔はツェザールによく似て派手だ。明確に違うと言えるのはすごく華奢なところだろうか。口元は感じが良さそうに微笑んでいるが、目力が強く、総合的に見ると気の強そうな感じがする。


 ちなみに1人目の兄弟こと1番仲のいいらしいセウェルス?という男は部下らしき人に呼ばれてさっさといなくなってしまった。

 兄さんはじっとさせていると絶望して涙を流し始める人なんだ……とかツェザールにはよく分からないフォローを入れられた。


「あなたは……ツェザールとよく仲良くしている人の1人ね。知ってる」


 他にも僕のことを話している人がいるのか?まあ事前に言っておかないと警備上の問題とか色々あるだろうしな、とツェザールを見ると困った顔をしていた。


「姉さんには言ってないはずなんだけどなぁ。また知り合いとやらを使ったの?」


「まあ!失礼ね。社交界の際、お友達から聞いただけよ」


「何が違うんだよ」


 やれやれというふうにツェザールが首を振った。

 使える物は使うという家訓?王族のルール?のようなものがあるとは聞いていたが、なるほど、これは確かに曲者揃いだ。


「名前を伺っても?」


「ええ、もちろん。名前は……アンドリューです。姓はありません」


 僕の出身国は、王族は姓がないルールである。王位継承の権利を降りると姓が与えられるが、うちの爺様はその手続きをする前に逃げたので、僕も結果的に姓はない。


「あらあら。東の国の王族でいらっしゃるの」


「いや、確かに今の女王とは親戚関係ではありますが王族ではありません」


「そうなの?まあ些細なことね。これから仲良くしていきたいわ。うふふ」


 あらあらうふふという感じでほんわかした品の良さがありそうに見える。ただ、ツェザールを見ると、さっきのお兄さんの時とは違っていつも通りのポーカーフェイスを浮かべている。多分言動通りの人じゃないんだろうな、と警戒は継続しておくことにした。


「アンドリューさんは、これからしばらく滞在するご予定?」


「いえそんなには……」


「そうなの?」


 ツェザールに服の襟を引っ張られる。


「姉さんに否定意見はあんまり言わない方がいい。上手く断らないと嫌がらせをしてくるよ」


「ええ……」


「全く。ザールはほんっとうに失礼なんだから!」


「あはは」


 なるほど、ツェザールがどうやらヘイト管理をしてくれたらしい。ツェザールに矛先が向かった。今ツェザールが話した瞬間の、シャーロットの目つきの鋭さを見なかったことにはできない。

 目の前の光景はくわせもの2人が表面を繕いながら姉弟の仲の良さを演出している図だということを理解した僕は、大人しくしていることにした。


「おや、ザールが誰かを連れてくるなんて珍しいな」


「……。これが4番目の兄弟で2番目の兄のカイノだよ」


「ご紹介に預かった通り僕が第2王子のカイノ・ユーセリアだ」


 突然会話に割り込んできた男が仰々しく自己紹介してきた。

 背はツェザールと同じくらいか。眼鏡と髪型のせいで分かりにくいが今まで会ってきた兄弟達の中で1番ツェザールに似ている。

 表情はひねくれたように歪んでいるが、自信も感じさせるためかそれが妙な魅力になっていた。


「シャーロットに構われて大変だったろ?この女は性悪だからな」


「まあ、姉に向かってなんて口を利くの!」


「おいおい、図星だったか?はははは」


 口を歪ませて笑っている。

 ……僕も傍から見るとあんな感じかもしれない。気をつけよう。


「この隙に逃げよう」


 ツェザールがめちゃくちゃ絵になる構図で僕に逃亡を促してくる。かっこいいなおい。顔そっくりの兄が出てきたから余計分かるが、こいつは言動も華があるらしい。

 逃げないけどな!ここで逃げたら心象悪すぎだろ。


「僕は……アンドリューです。一応ツェザール、王子?の友人のつもりですが……」


「いやアンディは親友だよ」


 ちょっと嬉しくて顔が緩むのを手で隠す。

 僕はあんまり人付き合いが良くないので、友人ができてもすぐ疎遠になってしまう。親友と呼んでくれるのはかなり稀だ。僕は少し強引なくらいの人間の方がちょうどいいのかもしれない。


「ふーん、さては君、ツェザールのやつと同じだな?前世がどうのこうの、全く面倒くさいことこの上ない。男か女かなんて身体の性で決めるべきだ」


「そうですよねぇ?僕も常々そう思います」


「お、おう」


 ため息をつきながら同意をすると、カイノと名乗った男が少し狼狽した。同意されると思っていなかったのか。


「まあ僕が男の方が得をする人間が多いってことですよ、面倒な話です」


「そ、そうか?話のわかるやつだな?」


 僕がやれやれと首を振ると、カイノはなんだかんだ首を捻りつつ話を合わせに来た。少し性格は悪いが柔軟な思考の持ち主らしい。



 ▫



「よーし、そろそろ帰るか」


 カイノと別れてしばらくブラブラと歩いていたらツェザールが突然そんなことを言った。

 良かった。このまま全員の兄弟に会わされるのかと思っていたからな……。



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