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9-8

『ん』


 ライラが画面の前に解答を見せてくる。


「おおー。いいな。面白い。特に1問目がいいな。この計算をこの方法で解くとは、いやでもこっちの方が早いか確かに。数字が3の倍数だとこんな解法があるんだな」


『ふふん』


 騎士が得意げだ。可愛い。

 可愛いが、コイツは元々あのクソでかい鎧をまとった大男だったんだよなと思うとテンションも下がる。今もちょっと仕掛けがありそうだしな。実際はもっとでかいだろお前。


「商人もこれくらいの遊び心があると良かったんだがなー」


『ぐっ』


『やめなさい』


 悔しそうな顔の商人と、俺を諌める王女が映っている。


「じゃあ3つ目の問題行くかー」


『待って』


「トリシア……どうした?」


 やっと問題を解く気になったのか?


『1つ目の問題。あの3題には共通点がある』


「……ふーん。その心は?」


『全て約150年前の時点で全て出題することができて、解くことができる問題だということ』


 正解だ。

 俺は目を細めながらトリシアを観察する。

 何も変わった様子は無い。


「お前さ、なんでそんなに得意げなんだ?どうせその答えも王女が出したもんだろ」


『なっ……きちんとトリシアが考えたものよ!』


「そうだったな……お前は“英雄”を過大評価しすぎているキライがあったな。良い機会だから言っておくが、目の前のソイツは大したやつじゃないぞ」


 王女の顔が歪む。どうやら怒っているらしい。

 まああの中で過大評価していないと言えるのは、俺と魔術師くらいのもんだったから仕方ないが。


 騎士のやつはトリシアを特別にこうだとかそういう目で見ているわけではなかったが、自分自身を過小評価しがちというか、誰に対しても自分と同じことができると思っている節があった。英雄だけを過大評価しているというより、人間全てを過大評価しているみたいな感じか。


 王子は本気でトリシアがステータスの根幹を破壊できると思っているみたいだし、正義スキルを持っているやつが思うんだからまあ間違ってはいないのか?ああ、でも全て間違っているトリシアとどっちが優先されるんだろうな。スキルの強弱、優先順位?どうでもいいか。そういう強さ議論はあんまり好きじゃない。


 レイモンドは一見するとトリシアのことを冷静に見れているようにも見えるが、あいつは極度のロマンチストなのだ。あと優しすぎる。そもそも本当に強いやつが好きなら王子の方を好きになっているはずだろう。だって英雄より強いんだから。戦っても強いしステータスで見ても強い。100人に聞いても全員がそう答える。そんな自明の理からあいつは目を逸らし続けている。


「スキルが本体の女だぞ、ソイツは」


『ぶっ飛ばすぞ』


 王女が怒り気味だ。揺さぶるのはこのくらいにしておくか。


「ナイフで切り裂く黒いのっぽが空の上〜。大丈夫あなたは逃げられるから、木の下には入れない♪」


『急に歌い出した……』


「困惑するそこのレディ。2つ目の問題の共通点は分かったかな?」


 単純明快。今度は国だ。リリーロッテ生誕の地で設定しておいた。

 もう皆は分かったかな?そう。この問題達はトリシアに前世の記憶を思い出させるための遠回しの仕掛けだ。このくらいで思い出すほど簡単な話でもないと思うが。結局所詮はお遊びだ。問題だって分かりやすく簡単なものにしておいた。トリシアにだって解けるくらいの難易度だ。俺の観察が間違っているとは思わない。まあトリシアが解いてたらもっと時間はかかっただろうがな。


『知らないわよ』


「まあ3つ目の問題を解きながらじっくり考えておくといい。大した問題じゃねえからすぐ終わるだろ」


 そう言って俺は魔道具の電源を切った。


 ……。俺の目的はトリシアを詳細不明のあのスキルから解放することだ。そのために俺はあの旅に同行することを選んだし、未だ解決しないまま死ぬわけにはいかないと生きながらえている。

 トリシアは普通のやつだ。少しスペックの高いだけのただの少女が歪なスキルによって“英雄”にさせられている。

 俺がそこまでする義理はないって?ああ、その通りだ。別にあの女のためじゃない。俺があのスキルを気になって気になって気になって仕方がないだけ。


 スキルそのものの根幹に関わるような気がした。

 あのスキルを破壊できれば、俺はこの世界の基盤そのものであるスキルの全貌に手が届きかける気がした。だから俺は諦めきれない。死んで全て忘れるリスクを背負うなら俺は生き残って全てを解き明かす。


 待ってろ英雄。俺がお前を人間に貶めてやる。


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