キース・ストレンジャー
「キース・ストレンジャー」
私はリリーロッテに会う前、キース・ストレンジャーと会う機会があった。
メンタルは著しく不安定で目が揺れている。
あの世にもおぞましい研究を人外のスピードで出し続けている男だった。
「私はあなたのファンでして……サインもらえますか?」
「ん?いいよいいよ。可愛いな君。もちろんいいとも」
「論文はだいたい読んでいますよ」
「くははは、嬉しいね。最近じゃあ俺が論文を提出しても破り捨てられるばっかりでさあ、やってらんねえわ」
腕を不安になるくらい激しく動かしている。
思ったよりも荒っぽい口調だが、気になるほどではない。
「君は何を目指してんだ?」
「……宗教学者を自称しています、あまり真面目に聞いてくれる人はいませんが」
「そうかそうか。ま、気軽に行こうぜ」
▫
「最近は性転換の研究ですか……」
相変わらず冒涜的な研究をしているらしい。
「成功したら君にも教えてあげよう」
「……。その時は有効に使わせていただきます」
頭の中で筋道を立てる。
……私ならば上手く使えそうだ。
女なら、男なら、使える。だがしかし今は腐らせている才能を有効活用できるということだ。例えばその貴族の家に求められている才能は男の方がいいだろう。この研究の真価は人の価値を上げることができる、と私は考える。
「今はどのくらい進んでいるのですか?」
「ふうむ。今はだね、このホルモンっていうのがどうも性的な成長に強く関わっているらしくてな、これを生成し投与するところまではいった」
研究内容を語る時のキース・ストレンジャーは、少し落ち着いた様子を見せる。
「どうなったんですか?」
「……幼いうちでないとやはり違和感は残るし、何より子供が作れなくなるという欠点がある」
「しかし有用な発見です」
「まあな。……学会では破り捨てられたがな。そういうことで俺は別のアプローチを考えることにした」
もしかして若返らせる工程も挟めば、相当近づけるのではないか、と思った。若返りの研究は金になる。誰だって求めている。そちらと並行して行えば、出資も今よりあるだろうに……と考えるが、それは私だからであり、キース・ストレンジャーにその手の考えがあるのは少し邪魔な気がした。
私はキース・ストレンジャーを学者として本気で尊敬していた。
「【原初】に近づけるんだ。つまりそのホルモンはどこから来ているのか?つまりは性器である。それを作り出せばいいってわけだな!」
「……魔法科学でどうにかなる範囲なんですか?」
「なるわけねえだろ」
「……」