8-7
「しゃーない、遊ぶか」
落ちていた水鉄砲でツェザールを打つ。
うん。狙い通り顔面に直撃だ。ふはは、これで美麗な顔も無様に……なってないな。水が滴ってイケメンぶりが上がっている。ツェザールが照れたように髪を片手であげると、遠巻きに見ていたんだろう女子達からキャーという黄色い声が聞こえる。
今のツェザールは、競泳水着なのでミアほどではないが凹凸のある体がはっきり出ている。女だと一目で分かるはずだが、それでもモテるのか。やっぱファンクラブがあるようなやつは違うな。
「えい」
お返しとばかりにサングラスを奪われる。
「返せ!」
手を伸ばすが、届かない。そりゃそうだ、身長差20cmくらいあるからな……。
「うん、いいね。あと髪は上に上げるといいと思うよ」
「はあ?」
とはいえ、ツェザールがそう言うので、ポニーテールとやらにしてみる。結構髪が伸びてきたので、なんとか形になっている。
「スポーティな女の子に見える!」
トリシアが僕を見て、楽しそうに言った。
「え?そ、そうか」
ちょっと嬉しくなりつつ、照れくさいので顔を下に向ける。
「うわ」
ミアが水鉄砲を僕に当ててきた。外したのか肩くらいに当たっている。
「はははは」
ということで、僕も正確なショットでミアの顔に当てる。
ミアがきゃーきゃー言いながら逃げて僕に水鉄砲を打ってくるので避けたり腕で防御しつつ僕も応戦していく。ふはは、いいだろう。ボコボコにしてやる。
▫
「……」
はしゃぎすぎた……。
「向こうで海獣のステーキ焼くって言ってるけどどうする?」
疲れて倒れ伏す僕の横でツェザールが何食わぬ顔をしてそう聞いてきた。
海に襲来したクソでかい海獣をワンパンで仕留めたのはコイツなのだが、疲れた様子は一切ない。
「食べる」
起き上がる。
「元気そうだね」
ニヤニヤしている。
「うるさいなぁ」
半目で抗議して、腕をのばす。
ステーキとやらを見ると、大きい肉塊が鉄板の上で焼かれていた。
行くか。
「そういえばアーノルドはいないんだな」
「そりゃそうでしょ」
ツェザールが笑いながら首を捻った。理由は僕の方がよく知っているだろ?とでも言わんばかりだ。
何かあったっけ……。
……そういえばキースのやつは、アーノルドと性別をひっくり返してるって言ってたな。ひっくり返してる相手は本当に最近知ったのでピンと来なかったぜ。まだ試験中で不安定だから、体型がはっきり分かる水着は着れないってことか。それで断ったんだな。なるほどね。
そうこうしているうちにステーキのもとにたどり着いた。
あんまり美味しくはなさそうだが、何、レイの出してくる数々の珍味に慣れ親しんだ僕にはさしたる問題でもない。
「おいしくないな……」
筋張っていて、硬く、ついでに獣臭くて美味しくない。
「もー、キミが起きてればもっと美味しくできたよね!?」
オルフが怒っていますといった感じで腕を腰に当てて指をさしてそう言った。あざとい。
「そんなことは……それはそうかもしれないが」
「そこは否定するところじゃないの!?」
トリシアが勢いよく突っ込んだ。トリシアがメインで調理した感じか?それは申し訳ない。でも僕の方がもっと上手くやれる。
「まあでもほら、美味しく作ったら、いい匂いに釣られてまた魔物が襲ってくるかもしれないし?」
ツェザールがニヤニヤしながらそう言った。
そんな馬鹿なとは思うが、コイツの言うことは当たるからな……。
そして皆でバーベキューを楽しんで、休日は終わったのだった。
……僕は毎日休日みたいなものだけど。