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妹を観測した。
……。
どういう仕組みかは分からないが、意識を失っている彼女は、両手と両足を縛られていた。
ああ、ダメだなこれは。本当に良くない。
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当時、全部が思い通りにいかなくて、自分の才能の無さにも打ちのめされて、むしゃくしゃした気分を取っ払うように、1人で家を出ては魔物を倒しに行っていた。魔力があるので普通の動物よりよっぽど強く、倒しがいがあった。
僕はいつも通り魔物を倒しに行って、そして帰るところで、足を怪我したレイを見つけた。どうやら僕についてきていたらしかった。近くには木の魔物がいて、急いで駆けつけたけど力を持たない僕は間に合わなくてレイの体は半分欠けて、それで僕は無我夢中でレイとその魔物をくっつけた。
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頭が痛い。
「妹さん、どうなってもいいんですか?」
軽薄に聞いてくる男に殺意を覚える。いや、殺意を覚えいるのは僕自身にか。流されるまま、考え無しに行動したせいで1番良くない結果を引いた。
よく警戒しながら、スキルを使う。
「【偽証】僕は教祖、レイモンドである」
ああ、万能の力を得ている気がする。
その高揚感のまま、目の前の気に入らない男をぶん殴る。決定だ。この組織は確かに悪辣だ。少なくとも僕がそう決めた。だからここは、徹底的に滅ぼしてやる。
向かってくる集団にスキルを重ねがけしながら弾き飛ばしていく。
この場所、この環境、今この時は僕が世界で1番最強だ。
「証明!証明!証明!」
足りない。これじゃあ足りないのだ。
僕の魔力は事象を変えきるに足りない。昔よりずっとマシとはいえ。
……そうだ。
髪を切る。人の体の1部はいい触媒になるのだ。
「ちっ」
足りないらしい。仕方ないから僕は目を抉りとった。
「証明!!!」
今までにないくらいの出力を感じる。これはいける。確信した。
敵を吹っ飛ばすだけでなく、昔の私が目標とした……。
「爆散しろ!!!!!」
全て砕け散った建造物の1部だろう、空を舞う石の粉を見ながら僕は気を失った───────。
▫
日光が眩しいことに気がつき目を覚ます。
「……?あれ両目が見える?というかこれって」
「気がついた!?良かった…目ももう治らないかもしれなかったんだよ?それに、もう片方もボロボロだったし……何やったらあんなことになるの?」
「……これはお前がやったのか」
「まあ……うん」
トリシアは他の部活仲間達に僕が目を覚ましたことを伝えるといって部屋を出て行った。
そうか……つまり僕の片目分なんて代償なしで修復できてしまうくらいの力がコイツにはあるということで……。
はあ……。
ため息をついていると、突然扉が音を立てて開かれる。
妹だ。
急いでここまで来たのか息を切らしている。僕が目を覚ましたとトリシアに聞いたらしい。
しかしここは学校の中だ。部室である。この速さでここまで来たということは学校の中で待機していたな?倫理的に不味い研究の結果であるレイは、外に出すと学会に所属する学者達からあまり良い顔をされない。そのためずっと家にいなくてはいけないのだが、出てきている。僕を心配してくれたのだろうが、今から祖母その他にどう説明しようか考えて頭が痛くなってくる。
「お兄ちゃん!良かったです目を覚まして……。心配していたんですよ、私が目を覚まして、こちらに向かった時のお兄ちゃんは本当に酷い状況でした。片目が無くなり腕も下敷きに……。でも、私が唯一知っている、この学校に助けを求めたら、なんとかしてくれたんです!トリシアさん、本当にすごい」
やはりトリシアがあの状況からどうにかしたらしい。
僕自身の無力さを痛感する。
…………でも。あの破壊を実現したのは間違いなく僕であり。
「やった!やってやったぞ俺は!見てるか!これが俺の力だ!!はははははははは!!!」
全てを見ているだろう、その人に向かい、僕は自身の成果を誇示した。