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8-1

「ふふふーんふーん」


「どうしたんだい?」


 珍しく鼻歌を歌うアーノルドにこれまた珍しくツェザールが声をかけた。

 アーノルドはなんやかんやあってもともとの地位を取り戻し、こうして学園に戻ってきていた。


「聞いてくれるか!?」


「うん?もういいや」


 おいおい。

 最初から大した興味はなかったらしく、面倒くさそうと見るや梯子を外したツェザールになんとも言えない気分になる。


「どうしたんだ?」


 とりあえず僕が聞く。


「あ、ああ。アンドリュー。どうやら議会が作られるらしくてな、俺の家もそれに参加できることになりそうなんだ」


「それは結構、おめでとう。君も頑張っていたからね」


「あ、ありがとう」


 少しアーノルドに恐がられているっぽい僕である。当たり前って?そうだな。

 ちなみに議会成立には僕も1枚噛んでいる。もちろん名前は伏せてもらっているが、対等な関係を築くならやはり議会くらいは持っていてもらわないとね。


「いいね!この調子で対等な条約結ぼうぜミア!」


「あのねぇ……」


 渋られているが強制的にでも結ぶつもりなのでよろしく。


「トリシアー!お前もこの国がどこよりも強い僕の国に援助を受けた方がいいと思うだろ?」


「私に同意を求めないでくれるかな!?」


「つれないなー」


 しかしそういう合理的じゃないところがトリシアのいいところだもんな。


「妹さんとはどうなったんだい?」


 すっかり興味が無さそうなツェザールが話を変えて来る。一応お前は他国の王子だったよな?いいのかそれで。


「レイ?別に特に変わらないよ。とりあえず荒れてた時期は旅行に行ってもらってたけど……」


「そういうとこだよ」


 何が?うさんくさいって?そうだね。

 レイ……というか僕の家族は僕が女王の婚約者であることをもちろん知っていたし、なんなら革命に1枚噛んでいることも知っていた。なぜ止めなかったかって放任的だからか。

 結局、名前と国籍が変わって、親子扱いでなくなっても僕に対する態度は何も変わらない。住む場所も変わったが───────今僕は大使館にいる、そしてレイはたまに僕を訪ねにくる。


「トリシア。そういえば言ってなかったんだけどさ、僕は人殺しなんだよね。それでも君の仲間だと認めてくれるかな?」


 僕の定位置であるソファから後ろに顔を出しにっこりと微笑む。

 何故かトリシアは僕の後ろに立っていて、他の皆を観察していた。


「いや……今更じゃない?そもそも革命でどんだけ被害出してるかって話だし」


「……。それは僕が悪いわけじゃないから」


 僕が動かなくても革命は起こっていた。それは誰しも分かっていることだろう。

 なんなら貴族連中を大分軟着陸させることができたのは早めにガス抜きしたからと見ることもできる……むしろ僕のおかげで被害者は減ったと言えるのでは?


「そうだ!それを言うならクレアはどうなんだ?戦争屋の彼女が1番被害を与えたと言えるので、は、いて」


 頭を誰かに掴まれている。心なしか涙目になる僕である。僕はか弱いんだぞ。


「悪かったですねぇ、戦争屋で。でもわたしは武器を売ってるだけですからぁ、結局使うのは人間なんですよ、に、ん、げ、ん♡」


「……悪かったわね」


 ミアがそっぽを向いた。ま、そうか。この件で1番武器を使ったのはミアだろう。

 クレアはミアにも武器を売っていたらしい。全くどうかしているというか。商売人として職に誠実であるというか。


 しかし、クレアの理論で行くと僕は真実を明らかにしただけ、武器を買っただけ、か……はは、今度からその言い回しを使わせてもらおう。


「そういえばライラ、君私の家から大剣を持ち出してるだろ?返して欲しいのだけど」


「……知らない!知ってたとしても、トリシアのピンチに、動かなかったやつに言う権利、ない!!」


「……ええー?あれ結構な……、まあいっか」


 全く良くなさそうだ。特にいつも脳天気で何を考えているのかよく分からないツェザールが、珍しく焦った顔をしているのが良くない。結構ないわく付きと見た。確かになんだか禍々しい見た目をしていたような。


「そういえば僕の家からも盾がなくなっていたような、あれは武功で家を作った先祖が王から賜った僕の家に代々伝わる……」


「……。いろいろ言いたいことはあるけど盾はありがとう」


 なぜ途中からトリシアにライラがついて来なくなったのか、それは僕がその盾とともにその健闘を祈ったからである。


「君の家って国に縛られない学者一家だろ?」


「ははは!いや、先祖が軍人だった可能性だってあるさ!だって僕の家に家系図とかないし」


「……はあ」


 ライラが呆れたようにため息をついた。

 証明の応用でそうして僕が強い盾を渡したと思い込ませ実際強くなったわけだ。証明されたのでずっと強いままだろう。本当は剣術部でいらなくなったものを貰って、それに老朽化し剥がれた旧家の壁紙をくっつけただけだ。

 壁に関しては僕の先祖が本当に王から賜った可能性もある、だろ?

 伝説の武器の現実なんてそんなもんさ。


「……ライラ、あなた私に隠してアンドリューとなんかやっていたの?」


 ん?トリシアが怒っている。


「そ、それは……」


「私の味方だって言ってたのに!」


「そ、それはほんとう。わたしはトリシアのみか」


「許せない!皆みんな自分勝手なんだから───────!」



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