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7-11

「ははは、いいぞトリシア」


 力で、才能ある勇者を圧倒するのは楽しい。

 僕の力の余波で小さな傷を負っていくトリシアに、自身のサディスティックな願望が満たされていくのを感じる。


 憧れの存在を意味の無い攻撃で貶めるこの快感は何物にも変え難い。


「くっ、くく。はははははははははは!」


 楽しくて愉しくてただただ笑う。


 攻撃が全部止められてそれもなんだか滑稽で面白い。


 今なら観測も満足に使える。


 そうだな、まずは僕のステータスからだ。



 ───────

 ───────



 名称 : シリル


 レベル : 23


 性別 : 男


 年齢 : 15


 体力 : 62


 筋力 : 61


 魔力 : 59


 知力 : 89


 職業 : 学者


 スキル : 計算、固定、偽造、読書、分離、証明、観測(粗悪)、狂化


 状態 : 慢心Lv3



 ───────

 ───────


 ……こっちじゃない。

 やはり僕じゃ僕自身の正確な観測は行えないらしい。

 無理だったら読めと言われた、キースから渡された紙を見る。


 ───────

 ───────



 名称 : アンドレア・ナシェル


 レベル : 23


 性別 : 女(1部改造済み)


 年齢 : 16


 体力 : 62(+スキルにより補正)


 筋力 : 61(+スキルにより補正)


 魔力 : 59(+スキルにより補正)


 知力 : 89(+スキルにより補正)


 職業 : 学者


 スキル : 計算、固定、偽造、読書、分離、証明、観測(粗悪)、狂化


 状態 : 慢心Lv3



 ───────

 ───────


 そうだな、こっちが正しい。

 キースはこれを、ステータスの基準を考えたうえで算出しただけの参考程度のものだと言っていたが。


「よそ見、するな!」


 トリシアが攻撃をしかけてきて、よそ見をしていた僕は当然のように被弾するが、今の僕は体力に補正がかかっているので大したダメージは負わない。


「どうした?」


 僕がそのまま何もせず剣を受けて驚いたのか、一瞬立ち止まるトリシアに口角を釣り上げ、問いかける。


 よし、今がチャンスだな。

 観測。


 ───────

 ───────



 蜷咲ァー : 繝医Μ繧キ繧「


 繝ャ繝吶Ν : 109


 諤ァ蛻・ : 螂ウ


 蟷エ鮨「 : 18


 菴灘鴨 : 89


 遲句鴨 : 73


 鬲泌鴨 : 197


 遏・蜉 : 75


 閨キ讌ュ : 鬲疲ウ募殴螢ォ


 窶九せ繧ュ繝ォ : 豁ェ縺ソ


 迥カ諷 : 迢シ迢ス



 ───────

 ───────


 ……。まあ予想通りだ。キースも上手く読み取れなかったと言っていたしな。


 見えている部分のステータス自体は魔力が人間にしては高いな、くらいで、特別気になるところもない。ただ、何か違和感がある。視界が歪む。これがトリシアのスキルの効果か?頭が痛い。僕は何を間違えている?


「アンドリュー。あなたは私の知らないこと、いっぱい知ってるんだと思う。きっと何度も間違えて、それで出した答えなんでしょ?」


 そうだ、僕は数だけは多いスキルから分かるように何度も転生して、何度も失敗して、それで…… 。

 ……。…………。


「1人で突っ走らないで。きちんと言葉にして。そうじゃなきゃ分からないよ」


 歪む。視界が歪む。トリシアが歪む。僕の嘘が歪む。記憶が歪む。記録が歪む。

 全てが歪むその光景で、僕の固定スキルはただただ主張する。間違っていると。



 歪む、いや【歪まない】視界に目を瞑る。

 僕は何度も転生した。1度目は学者として、2度目は冒険者として、3度目は将軍として。

 ……。



 ───────そんな過去、僕には無い。

 正確には僕の記録にない、だが。

 最初から分かっていた。記憶の引き継ぎの方法は前回の私が執念で見つけたものだ。


 文字として残る僕だったと思わしき誰かに対し、適当にそれっぽい設定を作りあげて僕自身にすら信じ込ませた。

 何故って?憧れのかっこいい女の子にかっこいい僕を見せたかった、それだけだ。


 どう足掻いても間違えているのに……僕に全て任せた方が絶対上手くいくのに、止める正当な理由なんてどこにもないのに、それでも英雄面して自覚なく間違え続けて、正義も悪逆も関係なく全てを平等に壊してくれる彼女が好きだった。自分が正しいと信じ込んで後ろを振り返ることもなく、どうしようもないバッドエンドに突き進んでいく彼女は滑稽で……かっこよかった。

 僕もそれだけ自分自身が正しいと信じ込みたかった。周りになんて目を向けたくなかった。煩わしい差別もレッテルも暴力もルールも憧れも賞賛も非難も!全て全部なにもかもをぶっ壊してめちゃくちゃにして原型の残らないくらい粉々にして消し飛ばしたくて。


 ……憧れだったのだ。僕の理想を体現する彼女にはハッピーエンドを迎えて欲しかった。


 だから、僕は負ける。全力を尽くしてトリシアの前に立つ、悪辣にして最大の壁にして強大な敵になった僕が、彼女に無様に負ける。そして僕が間違っていて、トリシアが絶対強者だと【証明】される。それが僕が見たい答えだ。





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