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なんだかんだ僕の証明は詐術である。できるだけ大きいことを言う必要があり、それで強くなる。
証明スキルはただただ、僕の評価を客観主観噛み合っていることを証明できるだけのなんの役にも立たないクソスキルだ。そして偽造スキルはステータスを1部偽造できるだけであまり役に立たない。スキルはパッシブなせいで子供の頃は使えないから、何度転生しても多すぎるスキルと変わらないステータスに不気味がられる幼少期は変わらない。使えないにも程がある。
この2つを組みあわせると何ができるかというと、詐術だ。前世は大きな建物を建ててみせたりしたものだ。もちろん詐術だからしばらくすれば消える。そのタイミングで僕が移動すれば、僕の意思で出現しているように見えるというわけ。
理屈は簡単。偽造スキルを使うと相手に僕の能力が上がったように見える。それを僕の数だけは豊富なスキルと言動で再現できているように見せかける。そうすることで客観視した時の僕の能力を上げる。それを繰り返す。僕はとても凄い何かに見えるに違いない。そして僕の固定スキルで主観は常に高い位置にある。10代とは勘違いするものだ。結果証明スキルで僕が強いことを証明できてしまう。
システムの裏を縫ったバグ技というか、まさしくチートだ。
そんなことを思いながらトリシアに攻撃をしていく。トリシアは避けられるはず、いや避けられて当然なので派手に魔法はぶちかませる。今の僕は弾数制限なしだ。
最高だろ?
このために僕のガス欠を知ってるツェザールとオルフに口止めをしておいたんだ。
……あの2人には勝てなさそうなのでついでに不可侵条約も結んでもらった。
事情を説明したら快く了承してくれた。わけではない。ツェザールの方は結構な無理難題を言ってきたし、オルフの方は僕のことを1回ぶん殴ってきた。その後ため息をつきながらいいよって言ったんだっけ…………。
そこまでされるいわれあるかなぁ?僕がしたことって起こることが確定している革命の時期をはやめ、トリシアの目線を僕にひきつけ時間稼ぎさせ、ついでにあの国と条約を結べたらいいなってそれだけだぞ?
「上の空だね!余裕なんだ?」
炎の雨をくぐり抜けてきたトリシアが両手で剣を持ち突き刺すように不意打ちをしかけてきた。
ちなみにこの部屋は魔王城よろしく禍々しくついでに頑丈にしてある。こういうところ器用なんだよな僕、デザインセンスも結構あるし。褒めてくれてもいいよ。
「そうだな、今の俺は最強だからな!」
調子良く大剣で吹っ飛ばす。
吹っ飛ばされているトリシアもかっこいい。
「本当に貴方私のこと好きなの!!?」
「それはもう!」
「ぜんっぜん分かんない!」
敵が強大であればあるほど見栄えがするというものだ。
これはもうやる意味の無いラストバトル……だが、いやだからこそ、かっこいい方がいいに決まってる。
「やっぱり派手な戦闘の方が見栄えがしますよね」
余裕を示すため僕は片手だ。
「な、何!?」
急に口調が変わった僕に驚いたらしい。
少し失敗してしまったかもしれない。
「口調で人は測れない……そうは思わないか?」
僕は固定スキルで固定されているため、自我を見失うなんてことはない。
なので、口調は結構な頻度でおざなりになる。その時かっこいいと思う口調を選びがちな僕である。
だいたいノリだ。
前世は役割が定まってたから安定してたんだがな。今回も学者の娘やっている間は結構安定してたんじゃないか。
瞬間移動をして切り込む。
昨今瞬間移動は自己同一性がなんだのと言って禁忌扱いをされているが、さっき言った通り僕の自我は強固すぎるくらい強固なので使い放題だ。
咄嗟に避けられた。髪の毛の端は切った。
もし切り落としてしまっても今の僕ならとうとでもなる。チートだからな。
おそらく最大の禁忌とも呼ばれる魔法、時間遡行や死者復活だって余裕だ。魔力の問題さえ解決してしまえばいい。僕は魔法の扱いに関しては天才なのだから。そして魔王たる今の僕は魔法を使い放題だ。
「僕はお前から見てどう見える?」
「気まぐれで生真面目な王様」
……予想外の答え。
「僕は王配だよ?」
正確にはなる予定、だが。
「そういうことじゃないよ、というか思ったより王様に近い立ち位置でびっくりだったよ」
「じゃあどういうことなんだ?」
「自分勝手で偉そうでなんでも自分の思い通りになると思っているところ」
「へえ」
「……そして本当に自分の思い通りにしてしまうところ」
どうやら真剣に言っているようだ。
もちろんなにもかも思い通りに、なんて無理だ。僕は別に万能では無いのだから。
大きい目標を作り、そこに近づけるよう努力を惜しまない、それだけ。
詐欺師は自分で詐欺師と名乗らない、みたいなイメージです。