ご飯が食べたいだけですので!
はぁ~、このお肉なんて美味しいの!舌の上でとろけてしまうわ!
「あれが今回の平民ね……」
「さすが下賎の者は意地汚いな……」
貴族達の悪口なんて無視よ無視!そんなことより、あそこのふわふわしてる、とても甘そうな白い物体はなんなの!?今すぐ食べなければ!!
私は近くにあったパスタを口一杯に頬張ると、その白い物体に近づこうとした。
「おい、君!」
ゴキュ!
突然背後から話しかけられた私は、驚きのあまり口にあったパスタを一気に飲み込んでしまった。
く、苦しい!み、みず!!
……ぷは~!助かったわ。
「……私に何かごようですか?」
あなたのせいで死にかけたんですけど!というかあの白いふわふわが早く食べたいんですけど!貴族様が一体なんのようですかね!?
「君が怒っている理由は良く分かる。周りの貴族の反応だろう?」
違いますけど……
「月に一度、平民を何名か貴族のパーティーに呼んで上流階級の暮らしを体験させる制度と言えば聞こえはいいが、実際は平民の振る舞いを見て貴族が嘲笑いたいがために開かれる催しだからな」
周りの貴族の反応から、うすうすそんな気はしてましたけど。で、それがどうかしたんですか?
「だからこそ私はこの制度を廃止すべきだと思っている!」
……私の心の声、読んでます?
というかもう行っていいですか?いいですよね?白いふわふわが私を待ってるんですよ!
「そこでだ。どうすればこの催しを止めさせる事ができると思う?君に何か意見はあるかい?」
……それ私に聞きます!?はあ、なんだか長くなりそう。適当にあしらって、早く終わらせなきゃ。
「そうですね。貴族様が平民に襲われればいいと思います」
私の発言を聞いて、目の前の貴族はポカンと口を開けている。
ほら、こんな変なことしか言わない平民に相談しても何にも解決策は生まれないぞ!早く私を解放しろ!
「……ありだな」
「ありなの!?」
おっと、つい大きな声が出てしまった。
「そうだ!よし君、私を殴れ!」
「……は?」
「平民が貴族を殴ればこんなパーティー誰も開きたくなくなるだろう?それに殴られた私が何もしなければ、殴った君が危害を被ることはないだろう!なんて素晴らしい案だ!」
この貴族、なんて馬鹿なの。
「そんなことしたって知られたら私、町での働く場所が無くなってしまいます」
「ふむ、それは困ったな。おお、だったらさらに名案がある!私と結婚すればいい!もちろん好きなご飯食べ放題だ!」
それは悪くない提案ね……
貴族様!なんて天才なのかしら!
「分かりました!では早速殴りますよ!」
「え!?もう!?心のじゅグベフォ!!」
赤い血液がパーティー会場に舞い散った。
その日の夜会で起こった事件は後に「レイド伯爵令息鼻血たらたら事件」と呼ばれるようになったという。
「鼻血様!」
「レイドだ!離婚してやろうか!」
レイド伯爵令息は有言実行をし、私と結婚をしてくれた。
レイド様はバカだけど、なんだかんだ約束を守ってくれるし、夜会を荒らした私を他の貴族から守ってくれるし、なかなかいい貴族だ。
……そしていじり甲斐もある。
「すみません、間違えました。レイド様、ドルフ伯爵が今回の結婚の件で話があると応接室に来てるそうですよ?」
「親父が!?こりゃやっかいなことになりそうだ……」
レイド様が困り顔をしながら頭をポリポリとかく。
多くの平民にとってあの夜会は嫌な場所だったかもしれないが、私はそうは思っていない。なぜなら、たくさんの美味しい食べ物に出会えた場所であると同時に……レイド様と出会えた場所だから。
「よし!急ぐとするか!」
レイド様は意気揚々と通路を左に曲がっていった。
あの、応接室は通路を右です……
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