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第32話  王子の告白

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 公爵家の嫡男であるアレックスが同じ歳となるヘンドリックのお友達候補として王城に上がったのは七歳の時のことだった。王国では七歳まで生きられれば、健康に成長していくことを神に約束されたと同じ事とされており、子供達同士の交流などもこの年齢から本格的に始めることになるのだった。


 生まれた時から表情筋がほぼ死んでいるアレックスは、七歳となっても無表情が基本姿勢となっているため、

「こいつ!全然顔が変わらないぞ!」

「変だ!こいつ!」

「どこまで行ったら顔が変わるか試してみようぜ!」

 王子とその取り巻きたちのイジメのターゲットにされてしまったのだった。


 アレックスはそれなりに我慢をしていたのだが、結局はブチギレて、ヘンドリック王子とその取り巻き達を半殺しの目に遭わせたのだ。だけれども、

「元々、アレックスを虐めていたのはヘンドリック達だったから!」

 というエルンスト第一王子の進言によって、不敬で捕らえられるということにはならなかった。結果、

「アレックス、お前、根性ありそうだから私のところへおいでよ」

 と言う三歳年上のエルンスト王子の誘いを受けることにより、第一王子の側近の仲間入りをすることになったのだった。


 エルンスト王子の側近達は表情筋が死んだように見えるアレックスの容姿についてはとやかく言わない。エルンストの手となり足となって動ければそれで良いのであって、成果があがればその過程についてはとやかく言うような人があまり居なかった。


 他人に忖度、配慮をするのが物凄く苦手なアレックスとしては、結果が出せればそれで(とりあえずは)良しとする職場で、好き勝手して成果を上げる道を選ぶことになったのだ。


 過程云々に細かく口出しをして、アレックスを貶して落として満足するようなヘンドリック王子よりも、エルンスト王子の方が、馬が合う。お気に入りの人間に囲まれるのが好きなヘンドリックとしても、嫌いなアレックスが側にいない方がやり易いだろう。


 お互い良い結果を導き出せたのだから、良かったね、で終われば良いところを、

「最初君は、僕のお友達候補として王城に上がったわけだろ?だったら側近候補も同じことなんだから、最後まで僕に付き合わなくちゃ駄目じゃないか!」

 この言葉を聞いて、はああ?と、思わずにはいられない。


「そもそも、アレックス、君の婚約者であるフレデリークは僕にぞっこんだったんだぞ!」

「・・・」

「彼女の初めての男は僕だ!」

「・・・」

「婚約者を寝取られたのに、悔しくないのか!」


 無言のアレックスの表情はぴくりとも動かない。表情筋が死んでいるように見えるから無表情のままなのだけれど、全身に残る拷問の跡が痛々しい。


「何か言ったらどうなんだよ!」

 ヘンドリックに殴りつけられたアレックスは、

「殿下がフレデリークを殺し」

「殺してないよ!勝手に誰かが殺したんだよ!」

 と、問いかける途中で殴られる。


「僕が送った手紙を取って置かれていたら後々困るから伯爵邸には火をかけさせたけど、僕はフレデリークを殺したりなんかしていない!」


「それでは、伯爵邸から発見された遺体は」

「それも僕じゃないよ!」

「それでは貴方は何をしようとしているのですか?私への嫌がらせ目的でフレデリークに手を出して、教皇を王国に秘密裏に招き入れたのも貴方なのでしょう?何故、そんなことをしているのですか?」


「それは!教皇カウレリア三世の後ろ盾を得た状態でリンドルフ王国の王様になるためでしょう!」


 奥の扉から飛び出して来たマルーシュカがポーズを決めてそう言うと、後から公爵家の兵士と教会に仕える聖騎士たちが雪崩れ込むようにして入ってくる。


 ポーズを決めたマルーシュカは一直線にアレックスの元まで走ってくると、背中から木の棒を引き抜いた。彼女は自分の背中から引き抜いた木の棒を片手に持つと、木の棒でアレックスの手枷と足枷をカンカンカンカンと連打する。 


 拘束から外れたアレックスはそのまま床に這いつくばると、マルーシュカはそれでも構わずに、木の棒でパンパンパンパン、アレックスの体を連打する。


「プフッ・・クククク・・木の棒は・・木の棒はやめてくれ・・・」


 何故、マルーシュカが木の棒で自分を叩くのか全く理解できないのだけれど、叩かれた場所は熱を持ち、なんだか身体中がポカポカと熱くなる。


「あははっはははっは」

 這いつくばったまま自分を叩く木の棒のリズムがあまりにも可笑しくて、思わずアレックスが笑い出すと、 

「出来ましたー」

 額の汗を服の袖で拭ったマルーシュカが、這いつくばっているアレックスを引き起こした。


 アレックスは上半身の衣服を切り裂かれた末に磔にされた後は、複数の教団関係者によって激しい暴力を受け続けたのだが、

「は?」

 傷ひとつ付いていない状態に戻っていた為、驚きに目を見開いた。


 武闘派と言われるデートメルス公爵家の嫡男であるアレックスは逞しい体つきをしている。どんなに多忙を極めても日頃の鍛錬は続けているし、古傷の一つや二つは残されているはずなのに、古傷も含めて全ての傷が無くなっているのだ。


「この背中を掻くのにちょうど良い木の棒なんだけど、かなりの優れものなのよね!背筋の矯正にもちょうど良い長さだし、この木の棒から出てくる粘液が傷とか色々治してくれるわけ!」


「いや、これは木から飛び出た粘液による治療とかじゃあないだろう」

 アレックスが呆れ返った様子でマルーシュカのアンバーの瞳を見下ろすと、

「聖女様、我々は聖女様のお帰りを長い間お待ちしておりました」

 と言って、ガブリエル枢機卿がマルーシュカの足元に跪いたのだった。



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