小さな幸せ
〜終わりと始まり〜
小さな幸せ
アレックス家
僕は昨日のあれから興奮が覚めずにに朝ごはんの後片付けをしていた。まあ魔法ですむんだろうけどそこは気持ちの問題ということもあり、自分から手伝わせてくださいとお願いした。
そうして片付けをしている途中、アレックスさんが玄関で靴を履いていたので、
春樹「アレックスさん、どこかいかれるんですか?」
と声をかける
アレックス「あぁ、仕事でな、一週間ほど空ける」
春樹「えっと…一週間も…」
一人になるのか、という言葉を飲み込んだ。
少しシュンとなってしまった。この世界に来てから4日ほど経つけど、ここでの暮らしは、僕にとっては少し楽しいものだった。誰かと暮らす、というイメージは僕の中では、とてもキツイ思い出の方が強かったけれど、アレックスさんとの暮らしは何故かとても落ち着くんだ。捕らわれれている身ではあるが…
しかしふと考えてみる。
うん…まあわかんないけどね、最終的にどうなるかなんて…あの家に入るまではおじさんとおばさんだって優しかったんだ。幸せに感じるのだってもしかしたら今だけかもしれない。少し浮かれている罰、でもないけれどホタルだってまだ見つかってないんだ。自分だけこんな気持ちになってるとその倍の不幸が起こるなんて今に始まったことじゃない。もちろんホタルのことは常に心配しているつもりだ。ホタルがどっちの世界にいたとしても、場所が場所なだけに無事でいる保証なんて本来どこにもないわけだけど。しかも今の僕は実質捕まっている状態?だ。
それを一週間放っておくこの人もどうかと思うけど…
しかし従わないといけないのも事実だ。実際に僕は外に出て死にかけている。いくら助けたい気持ちがあっても死んだらホタルとは二度と会えない。だからそれまでは我慢するしかないのも事実だ。
アレックス「なあに、すぐ戻ってくる。一週間分の食材はきちんと置いてある。見るところお前、自分で料理出来るんだろ?」
春樹「はい、一応…」
アレックス「なら大丈夫だ、もし暇になったら、こいつで時間を潰すといい」
春樹「?これは?」
アレックス「まあ俗にいう魔法の書ってやつだな。もし暇になったら色々試してみろ、とはいっても家の周り以外は絶対離れるなよ」
それを見ると僕はパァァと笑顔になり、コクコクと頷き、その魔法の書を大事に抱きしめるように持つ。それを見るとアレックスさんは、微笑ましそうに笑い、僕の頭を撫でる。
アレックス「そんじゃあいってくるわ」
春樹「は、はい、い、いってらっしゃい!」
僕はアレックスさんの後ろ姿が見えなくなるまで見送り、時折振り返るアレックスさんにブンブンと全力で手を振った。遠くからだったけれど、アレックスさんの苦笑してる顔が見えた気がした。