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中途半端な僕へ  作者: ふじもん
~終わりと始まり~
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決意

〜終わりと始まり〜

決意

〜禁止区域〜夜 家


あれから僕はこの黒コートさんの家に連れていかれた。詳しい話は明日という事で、今日はここに寝床を用意してくれた。隣では黒コートさんが寝ている。僕はその呼吸を確認するとすぐに家から脱走した。


〜禁止区域〜外


怪我を治してくれたのはとても助かった。これについての細部にはまだまったく触れられていないので、よくわからないことだらけだが正直動くようになれば何でもいい。治してもらって非常に申し訳がないとは思うけどあそこにいたらいつ殺されるかもわからないし、それだけじゃなくてなによりホタルが心配だ。外側、という言葉が引っかかったがようは元の道をたどればいいだけだ。ホタルがいないとわかった以上、ここに長居するつもりはない。僕は急いで元へ来た道を辿る。


しかし―――


春樹「なんだろ?この変な違和感、なんか気持ち悪いな…」


ここにきてから変な違和感があったさっきの家でもそうだが慣れない環境だからだろうか?どっちにせよ今そんなことはどうでもいい。


道はちゃんと覚えてるんだ、とにかくあの扉に戻りさえすれば!


しばらくすると走るとすぐにあの扉が見えてきた。しかし――


春樹「あれ、開かない…なんで?」


いくらドアを叩いてもびくともしなかった。そうしているとすぐ背後でガサッと音がした。何かの足音だった。


僕はそれにすぐ振り返ると、一匹の化け物が出てくる


春樹「あれ…は?」


この間と違う似ているけど違う化け物?


姿形は同じでも色がまったく違った。この間は肌色のそれこそ犬と間違うような毛色をしていた化け物とは違い、今度のは青紫色だ。明らかに異質なのがわかる。それだけではなく縦の長さもまったく違うようだ犬と言うより…


春樹「…チーター?」


そしてなによりこの敵意…


こちらの油断を誘うつもりなどなく、すぐに仕留めることしか考えていなさそうなこの殺気!


僕は持ち出したボロボロのショルダーバッグから警棒をすぐに取り出し構える。


すると化け物は一度勢いよく吠えるとそのままものすごいスピードで飛びかかってくる。


春樹「くっ!!」


速い!!というか速すぎる。僕は噛まれそうになった瞬間に警棒ではなくカバンを盾代わりに利用し、それを避ける。いや正確に言うとあっちがたまたま捕らえられたかっただけだ。正直食べられる瞬間のピンポイントを外すだけで精一杯だ。化け物は僕に避けられるとすぐさまなにもなかったかのようにスピードを殺さぬまま僕の顔を引きちぎろうと再び襲いかかってくる。怪我は関係ない。むしろもう治ってる。単純な力の差だ。


いくらリュックを身代わりに差しだそうがすぐに均衡が崩れ、押し倒される。完全に油断した。甘く見ていた。元々万全だったらどうにかできた訳でもないのに勘違いをしていたんだ。


くそ、ここが普通の場所じゃないって知ってたはずなのに!!!!


店長達のトラウマが甦るそして自分の愚かさを死ぬほど嘆いた。


喰われる瞬間、一瞬で左側に転がりながら避ける。そして化け物はそうした僕に再び襲いかろうとするとその瞬間、動きを止める。


春樹「…?」


化け物「…」


どうしたんだろう?理由はわからないけど今は本当に助かる一瞬だった。この一瞬で距離を保ち、様子を伺う。すると――


ドン、ドン、ドンと音が聞こえる。どうやらそれが原因みたいだ。化け物は怯み、逃げていくが見えないものに引き寄せられて捕まる。


化け物「きゅ!!」


春樹「!!」


奥からドン、ドンと大きな音を立てていた原因が姿を現す。

それは目の前の者も化け物と呼んでいたのが可愛く思えるほどの大型の化け物だった。あきらかに異質だ。僕が今まで見てきたものものの中のどれとも似てない。それは触手のようなものが左右に複数あり、腹部にものすごく大きい口がある。そしてその中に時折見せる鋭い牙のようなものが僕からひどく恐怖を誘った。正直他の何かにたとえようがなかった。先ほどのチーターに似た化け物はその大型の化け物の触手のようなものに捕まっていて、暴れ回っている。しかし、その大型の化け物の腹部当たりの大きく開いた口に入れられた。そして――


グチュという音とともに血が飛び散った。それなりに距離がある僕にもべったりつくくらいに…


僕はその場にへたりと尻餅をつく。怪我した訳じゃない。ただ単純に恐くて、腰が抜けた。人ではないにせよ生きているものが目の前で殺される瞬間を見たのは初めてだった。店長の時に僕がもしその場でいたら間違いなく今の状況と同じようになっていたと思う。


そして何より自分の直感のようなものがここまでだと告げている。僕があきらめたと感じたのか、触手を使うことなくゆっくりと近づいてくる化け物。そして僕を殺そうと牙が僕の頭に触れたこと瞬間―――


ボコォというひどく鈍い音が森中を響き渡った。


僕はその音につぶっていた目を開けると口を開いたままの化け物が僕とすれ違うようにこちらに倒れた。


そしてジュューと火が浄化した時の音と煙とともに目の前から消えてなくなった。


僕はしばらく呆然とそれを見た後に首を少し横にずらすと見知った人物が立っていた。


黒コート「…外に出るなといったはずだが」


春樹「殺すなら殺してください」


黒コート「殺すとはいってないはずだが…」


春樹「それは"まだ"、ですよね?」


黒コート「………」


春樹「確かに殺されないかもしれない。ただあなたになんのメリットがないと判断された場合どうなるかは、わからない」


黒コート「ほう…ガキのわりによく先まで考えてるな」


春樹「僕は今までそういった環境で育ってきたから…」


今までの育った家のことを思い出す。


春樹「だから今まで大人の人達にたくさん利用されてきた…それなら殺されるなら今殺された方がいい」


黒コート「目的はいいのか?」


春樹「…」


黒コート「お前さん何か目的があってきたんじゃなかったのか?」


春樹「それは…」


その通りだった。妹のためだ。


春樹「でも扉が開かなかった。あそこが開いてくれない以上妹も探せない」


黒コート「妹?」


春樹「僕は妹を探してここまで来ました。ここに来たのはただそれだけの理由です。他はどうでもいい…」


黒コート「…フム」


黒コート「…まあ確かに向こうに帰れねー限り難しいかも知れねーな」


黒コート「でもまあこっちにいる可能性が必ずしもないっていうわけじゃあないかもだけどな」


春樹「…可能性?」


黒コート「まあ本来お前さんがここにいるだけで十分イレギュラーなんだけどな…でも裏をとればガキが一匹入ってる以上もう一匹入ってても別段おかしくはねーだろ…まあ十分おかしいが、それぐらい今お前さんがここにいるのは本来ありえないってこったぁ。だから――」


春樹「…利用されろってことですか?」


黒コート「…」


春樹「僕がその門のことを何か知っているかもしれない。だから利用する。そうですよね?」


黒コート「…そうだな」


春樹「だったら今もう殺せよ!!!!」

春樹「あなたたちは(大人)はいつだってそうだ。損得でしか行動しない。だから優しさの裏には必ず理由がある」


春樹「弱い人間は結局振り回され続ける。ずっとその連鎖が続いて抜けることなんてできない、そうでしょ」


黒コート「ああ、その通りだ。弱い奴は一生利用され続ける」


春樹「じゃあ弱い奴らはどうすればいいんだよ!!!このまま死ぬまで利用され続けなきゃならないの!?」


黒コート「まあ弱いままじゃあ一生無理そうなるだろうな…」


春樹「………」


黒コート「でもよ、だったらお前…」


黒コート「強くなれよ」


春樹「!!」


座って地面に這いつくばったまま目を見開く。


黒コート「もし本当に悔しいと思うんなら強くなって変えて見せろよ、自分で」


黒コート「いくら頑張っても子どもは子どもなんて言い訳はするな、結局、人間いつ一人になるかなんて誰にもわからねーんだからな」


見透かされてる気分になった。心を


それからは家に戻り、警戒して食べなかった料理に手をつけた。目の前に肉にかぶりついたが、肉は固くてあんまり引きちぎれず何度も何度も引き延ばそうとして―――


春樹「ぐっうぅぅ~」


涙が出てきた。こんなに本当の意味で美味しいものを食べたのはいつぶりだっけ?とか、そういえば自分が住んでたところではおじさん達の食べ残ししか食べなかったっけ?とかいろいろ思い出すと涙が止まらなかったんだ。そして僕はある料理を食べ続けた。


ーそこからは気がついたら寝てて、アレックスが毛布をかけてくれたんだっけ?もちろん忘れてないよ、この日のことだけは絶対に一生忘れないー


ーだからありがとうって本当は言いたかったんだー






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