不思議な世界
〜終わりと始まり〜
不思議な世界
〜異世界〜禁止区域(アレックス家)
回想(病院)
昔のことを思い出していた。僕がまだ小学校5年生くらいになったときのことだ。たしか僕がリンゴの皮を剥いて上げてて――
ホタル「ねぇお兄ちゃん?」
春樹「うん、なに?」
ホタル「もし一つだけ何でも願いが叶うならお兄ちゃんは何をお願いする?」
春樹「え、一つ?…そうだな、一つ、一つかぁ、一つに絞るとなると難しいなぁ~」
ホタル「あはは、そんなに叶えたいことあるの?」
春樹「当然だよ!まずホタルが元気になってほしいでしょ、そしたら一緒に外でたくさん遊べるでしょ!それでいつか世界一周とかするのも夢だな〜、たくさんお友だち作って、誕生日パーティーを家で…は置いといて、もっとたくさんホタルと一緒にいられるといいよなぁ~…うん、やっぱ一つは無理だよ」
ホタル「あはは!わがままだなぁお兄ちゃんは」
春樹「むぅー、そうかな~そういうホタルは何かあるの?」
ホタル「うん、もちろんあるよ!」
春樹「へぇ~なになに?」
ホタル「それは――」
回想終了
暖かい、何だろう?不思議で初めての感覚だった。
心地よくて優しい――
目を開くと、目の前には暖炉があり、火が灯っていた。そして、ソファーの上で寝ているようで、自分の上に毛布がかけてあることに気づく。
???「よう」
春樹「あ…」
???「やっと起きたな、ぐっすり眠れたか?」
春樹「えっと…?」
???「………」
春樹「!!」
記憶をたどり、思い出すと同時に後退ろうとするがソファーに背中がすぐぶつかる。しばらくの沈黙のうち、こちらから探るように口を開く。
春樹「あの…もしかしてあなたが、黒コートさんですか?」
???「あ?黒コートさん?………クッ」
春樹「?」
黒コート?「プッははははは、黒コートさんねぇ、まあ確かにそうだな!俺が黒コートさんだが」
ビク!!とする僕に
黒コート「あ、ワリィワリィ、久しぶりにそんなすっとぼけたこと言ってくる奴に会ったもんでな、まあ気にすんな、いいよ黒コートでさんで」
と笑いながら黒コートさんはそう言う。
春樹「あ…あの、それで、黒コートさんは、どうして僕を助けてくれたんですか?」
黒コート「どうして…か?質問を質問で返すようで悪ぃが…逆になんで自分が助けられたと思った?」
すると雰囲気ガラリと変わった。暖かかった空気は急に冷たくなる。ただそんな中でもああ、やっぱりって思う自分もいて――
春樹「…殺すんですか?」
黒コート「なぜそう思う?」
春樹「だって…大人の人は理由もなく、優しくしないから…」
正直こういうケースは慣れていた。こういった大人の元で育ってきたから。
黒コート「…」
黒コート「………そうか」
春樹「はい…」
黒コート「…あ~?まぁなんか勘違いしとるみてーだが」
春樹「?」
黒コート「確かにお前さんを最初に見た時、状況的に考えて殺すことが選択肢になかったわけじゃねー、がこうして話してみて、お前がその類のもんじゃねぇーってことはよくわかったからなぁ」
春樹「…その類?」
黒コート「そこは気にすんな、だがまあ要はそういう奴とそうじゃないやつの判別くらいはできるって話だ」
春樹「あの…つまりどういうことですか?」
黒コート「つまり殺すかどうかまだ保留ってことだ…」
春樹「…」
黒コート「質問しだいだ…」
春樹「……質問?」
黒コート「お前みたいなガキがなんで…いやどうやってこんな場所まで来た?お前さんの命をとるかとらねぇかはそれ次第だ」
春樹「えっと…どうやって?」
黒コート「そうだ…」
春樹「それは…」
完全に忘れていた自分に失念する。そしてそもそも本来の目的を思い出し
春樹「そうだ、ホタル!!!!っいた」
足を見ると怪我の手当てがされていた。ただ驚いたのはそこではなく
春樹「あれ、足が…」
動く。なんで?
まだ若干の痛みはあるが本来折れて使いものにならないはずの左足が曲がるのだ。ありえない、確かに折れたはずなのにそれだけじゃなく化け物に噛まれたはずの左腕に関しては痛みも傷も完全に消えている。
黒コート「おい、手当てしたばかりとはいえ動くな」
春樹「いやあの、手当てしてすぐに動ける怪我じゃなかったと思うんですが…なにを?」
黒コート「なにを?って…ただヒールクリスタルをぶっかけただけだろうが…」
春樹「ん…ヒー?ル…?」
黒コート「だから…ん?まさか」
黒コートさんはしばらく考え込むと
確認で申し訳ないないが…と言い
黒コート「…お前さんヒールクリスタルを知らないのか?」
と聞いてくる。
僕は震えながらもそれにコクッとゆっくり頷くと、少しだが、男は初めて動揺した様子をみせた。
黒コート「…まさか、いや、確かに違和感はなかった…だが、扉が目当てじゃないのなら――」
と軽く考える様子を見せるとこちらに向き直る。そしてしばらくの沈黙のうち
黒コート「まさかお前…"外側"から来たのか?」
と意味深なことを言った。