最期の叫び
〜終わりと始まり〜
最期の叫び
〜禁止区域〜最深部
あれからどれだけ進んだだろう僕は必死にただ前へと進んだ。そしてとても長い一本道からようやく初めて広い大広間のような場所に出る。
春樹「…ここは?」
なんだろう?こんな場所にはふさわしくない神社?のような場所だった。手前に祭壇のようなものがあり、奥に扉がある。
僕は辛くも体に鞭をうち、立ち上がり、もう完全に使いものにならない折れている左足を庇い、けんけんでその扉まで移動する。途中で祭壇にぶつかって落ちるが気にしない。立ち上がりまたゆっくりと歩く。扉の前に立つとなにか文字が書いてある。始まりの扉と書いてあるようだ。かるく動かすが反応はない。鍵が掛かっているようだ。
春樹「…ホタル!、ホタルぅ…」
化け物に噛まれた左腕の痛みがまた再燃する。青紫色に腫れている腕ををなんとかこらえながらホタルの名前を呼び続ける。しかし――
いくら周りに呼びかけても返事はなかった。どこかで間違った?でも別れ道なんてあったのだろうか?いやそんなことより
春樹「くそぅ!!ここまできたのに!!!!」
ドン、と思いきり扉を叩く。わかってる。こんなに都合良く見つかるわけもない。それでもここまでくるのだって決して楽なんかじゃなかった。文字通り命懸けできたんだ。現にホタルの私物だって見つかったんだ。いるはずだ、いるはずなんだ!
僕はもう一度元に戻ることを決意し、後ろを振り返ると、
春樹「……うそ」
化け物の集団、店長達をやったと思われる集団が100m先で今度は間違いなく、100匹以上でぼくの前に集まってきていた。
ここは一本道だ。後ろは行き止まり状態。完全に詰みだ。不可能、という言葉が頭をよぎった。僕はゆっくり床にゆっくり座りこむように尻餅つく。
春樹「なんで…」
よく見ると先ほど確かに倒したはずの化け物が何事もなかったかのように復活してる。さっきより倍以上の殺意を込めて。
春樹「ハハ…」
意味もなく笑いが出る。
なんでだろう。ここまでくるのに色々なものが犠牲になって何度も死を覚悟してここまできて、やっとの思いで妹への手掛かりを見つけたかと思えば、ここで終わり?中途半端に希望を持たせるだけ持たせておいて?
春樹「ホタ…ル」
今にも泣きそうな声でその名前を呼ぶ。考えなくてまわかる。自分はもうここで死ぬだろう。化け物達がどんどん自分に近づいてくる。もう目の前だ。しかしそれならせめて最期に、もう化け物は口を開け、僕を食べようとする。
春樹「ホタル」
顔くらいは…
春樹「ホタル!!!!」
僕はこの時目を瞑り、精一杯いっぱい叫んだ。後ろの開いたドアのギィという音に気づけないくらいに。
???「…ダーク」
僕は死を覚悟した瞬間、急に暗闇に包まれる。そして目を開くと一瞬で100匹以上の化け物が跡形もなく消滅した。
僕は隣に歩いてきたその人物を見るとゾッとした。黒いローブをまとった男だった。顔は見えない。男は僕を見ると少しだけだがビックリしたように見えたが気のせいかいたって普通の声量で話かけてきた。
コートの男「…そうか、お前の目は昔からそんなことはから変わらないんだな」
春樹「?」
僕の頭は?マークでいっぱいだったが男はそう言うと扉の向こうを左人差し指でをさした。
春樹「あ、あの…」
僕はお礼を言おうとするがそれを言う前に男は何かに反応したように前を向く。僕もそれにつられるように前を向くと、目を疑う光景が広がっていて自分の目を信じられなかった。今度は今まで見たことのない化け物がたくさん出てくる。その数はもはや数え切れないくらいだ。男は聞こえないぐらいの小さい声でくそ、というと
コートの男「…ブリーズ」
と指をこちらに向ける。そう言うと急に微風がこちらを遅い態勢が一気に崩れて、体が扉の中に入っていく。
春樹「え?う、うわ、え?ちょ、ちょっと」
コートの男は僕のことを
春樹「待って!!まだ妹が」
コートの男「答えは中にある…」
春樹「え…?」
コートの男「知りたければ自分の目で確かめろ」
春樹「ちょっと、まっ、うわあああああああ!!!!!」
そして僕はまったく知らない世界へと足を踏み入れることになった。飛ばされる瞬間、見たことのない映像が頭をよぎる。家族と楽しそうにごはんを食べている自分だった。ホタルも元気でお父さんとお母さんも生きていて、みんな笑っていた。僕はそれを見てあぁなんでこうならなかったのかなぁと呟いた。
〜異世界〜立入禁止区域
しばらく気を失っていたんだと思う。ただこの世界に飛ばされている間、ぼうっと考えていた。ああ、またかって…昔からそうだった。居場所がないっていうか。一ヶ所に落ち着いたりとかできなかったんだ。僕の意思とは一切関係なしに…
うっすらと目を開けると似ているけど少し違う?…森に出ていた。
前から人が歩いてくる。しかし意識がしっかりしないせいか視界がボヤける。心なしかさっきの人と同じ黒コートを着ている人に見える。ただ、さっきの人より身長が大きいので多分違う人だ。多分その人が背負っている大剣が原因だと思う。近づいてくる度に目に見えない殺気のようなものがあった。どんどん大きくなってくる。自分の中で感覚がなくなっていく。あるのはどしゃ降りの雨の感覚だけ。
殺される…そう思った時には僕の意識は完全に途切れた。
長身のコートの男「………子ども?」
そしてこれが、僕とアレックス、アレックスブラフォードとの初めての出会いだったんだ。そしてこの人との出会いから僕の運命はどんどん変わっていったんだ。