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どうやら俺の耳はおかしいらしい

ピンポーンピンポーンピンポーン


「はーい。どちらさまですか?」


「……ですわ」


「ん?ああ、メラニーか。久しぶりだな」


「明後日は私の誕生日ですわ!!!」


「お、おう。おめでとう。今カギ空けるからちょっと待ってろ」


 ノイズを纏った声が部屋に響き渡る。


「よっ!久しぶりだな」


「よっ!じゃありませんわ!!あれから何日経ったと思ってらっしゃるの!!!」


 あれから?あれからってなんだ?


「不思議そうな顔してますわね!!最後に遊んだ日からですわよ!!」


「えっと……1週間くらい?」


「2か月ですわよ!!2か月間、私はあなたの家のドアをガチャガチャ引っ張って過ごす日々を過ごしていましたわ!!!」


「本当か?まったく気が付かなかった。今日みたいにインターホンを押してくれれば気がつけたんだグァッ!?」


 突然顔を真っ赤に染めたメラニーが、ドアを全開にして俺に向かって勢いよくタックルをかましてきた。

 続けざまに馬乗りになり俺の肩を揺さぶる。


「ムキ――――――!!押してました!!押してました!!私、うーーんとつま先伸ばして何回も何回も押してました!!今日まで1日10回以上は押してました!!なのに一向に出ないあなたに非があると思いますがいかが!!」


 ムスッムスッと荒い鼻息が俺の顔にかかる。俺の右手首は抑えられ、左腕だけでは彼女を押しのけることは叶わなかった。


「ご、ごめっ、いや、でも俺には聞こえなかっ」


「嘘!!!」


 本当だ。何回も鳴らされたなら、嫌でも気づくだろう。


「わたし、わたし、不安だったの!!もう遊べないんじゃないか!!嫌われたんじゃないかって!!」


 目尻から溢れた涙が、俺の頬に落ちる。

 このとき俺の胸は、申し訳なさで一杯になった。


「ごめんなさい」


 俺の口から出た言葉はその一言だけだった。他に何か言うことはないのかと自分でも思うが、どう紡いでも、彼女の激情を収められることはできないと思ったからだ。


 それからしばらく、嵐のような啼泣によって俺の服が蹂躙された後、彼女は少しのむせびを残しながら、俺に問いかけた。


「ヒクッ、ほんとに、ほんとに私のことが、ヒクッ、キライになってない?」


「ああ、本当だ」


 俺は胸に顔を埋めているメラニーの頭を撫でながら、そう答える。

 メラニーはゆっくり顔を上げ、俺の目をじっと見つめる。


「じゃあ、またあそんでくれる?」


「ああ、メラニーの気が済むまで遊ぼう。まあ母親が来るまでだが」


「それはやだ!!ずっとあそぶの!!」


 メラニーは俺の肩を激しく揺さぶりながら、やだやだやだと言い続ける。


「あれ……?」

 

 ふと、メラニーが俺の顔を見て不思議そうな顔をする。


「エフィの耳、なんか欠けてる……?」


「え?」


 欠けてる?

 俺は手を耳に当てる。少し体温より高い熱を持ったエルフ耳を、下から上に触っていくと何故か天辺が欠けていた。左の耳だけ。


「ケガ?」


 そういってメラニーが指で俺の左耳をそっとなぞる。


「ふあぁ!?」


 俺はあまりのくすぐったさに思わず声を出してしまった。


「ご、ごめん。いたい?」


「い、いや、少しくすぐったかっただけ」


「そう、なんだ」


 そういうと、メラニーは俺の耳をじっと見つめはじめた。


「さくら」


 静寂、それを破るようにメラニーが呟く。


「さくらの花びらに似てる」


 そういいつつ、メラニーは俺の耳を下から支えるように触れた。


「私、好き。さくら。」


 俺は左耳を襲うくすぐったさに耐えながらも、メラニーの呟きに耳を傾ける。


「よく遊んだ。花びらの上と下をつなぎ合わせる遊び」


 メラニーの鼻が俺の鼻と触れ合いそうになる。


「ど、どうした?」


 メラニーが自身の右耳に俺の左手をあてるように動かす。


「さくら遊び」


 俺の左耳がメラニーの手によって曲げられる。


「なっ、なにを!?」


「エフィも曲げて」


 俺は言われた通りにメラニーの耳を曲げる。


「上手に嵌められたら勝ち」


「どっちが?」


 俺とメラニーは少し手を震わせながら、互いの耳を曲げる。


 ――カチリ


 そんな音が聞こえそうなほど、綺麗に俺たちの耳は嵌った。


「う、上手く嵌ったみたいだな。それでなにが……メラニー?」


「え?…………そ、そうなんだ」


 ポカーンという表情の後、メラニーはうっすら涙を浮かべて俺を見つめる。


「そ、その、これからも一緒……ですわ!!」


 急に元の調子(と語尾)を取り戻し、笑みを浮かべるメラニーに俺は首を傾げる。


「お、おう。その……ごめんな」


「気にしないでくださいまし!!」


 そういうと、メラニーは俺の隣で横になりだした。

 嗚咽はすっかり鳴りをひそめ、代わりに鼻歌まで聞こえるようになった。


「な、なあ。もう耳外していいんじゃないか?」


「ダメ!!」


 急に不機嫌になったメラニーは頑なに拒否。なぜだ。


「い、いやでも玄関のドア開けっぱなしだし」


「じゃあ一緒に閉めに行きますわよ!!」


 メラニーはスッと中腰になり、俺に手を差し出す。


「せーの!!」


 2人して立ち上がることに成功。しかし、これ逆じゃないか?


「閉めますわよ!!」


 ガチャと玄関が閉まる。そのとき


 ――ポンッ


 という音とともにつながっていたメラニーの耳が外れた。


「なんでですわ!?」


 メラニーが慌てて耳を触りだす。しかし、自身の耳に異常がないとわかったようで、ふと、俺の耳を見て、口をあけ唖然とした。


「ふ、普通の耳に戻ってますわーーー!?」


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