どうやら俺には幼馴染がいるらしい
「いらっしゃい。フィオラさん」
「おじゃまします!!」
産後3か月の今日はエリオラさんの家でお泊りだ。ふだん母は俺を連れて外出はできないので、久しぶりに体を休める機会となる。思う存分羽を伸ばしてほしい。
「エフィちゃんもこんにちは」
「えぃおら」
エリオラさんの名前を呼ぼうとするもまだ思うように口が動かない。シューシュから教えてもらった風魔法を使えばできなくはないが、流石にやめておこう。
「今、エリオラって言いましたわ!?賢い子!!よしよし」
エリオラさんの手が頭をやさしく撫でた。
「あはは。私としては手のかからない子で少し寂しいです」
「いいじゃないの。メルなんかずっと泣き止まないんだから大変よ~」
メルというのはエリオラさんの娘だ。俺より半月ほど早く生まれたらしい。
そこからというもの主婦同士で話し合いでもするのか俺は母が持参したベッドに置かれた。
「いい子にしているのよ?何かあったら泣きなさい」
母はそういってリビングに去っていった。
俺はベッドの柵越しに隣にあるベビーベッドを見る。
「すー……すー」
めっちゃ寝てる。俺も眠るとするか。
ぺちぺち。ぺちぺちぺち
「なー」
ぺちぺちぺちぺち
……んあ?母か?あーよく寝たー。
ぺちぺちぺちぺち
あれ?体が動かない。
うっすらと目を開けると、赤子が馬乗りになって俺の頬を叩いていた。
「なー」
ぺちぺちぺち
エリオラさんの娘の……確かメルといったか。柵を超えてきたのか?ふむ。手のかかる子というのは本当らしいな。
ぺちん!ぺちん!
いや鬱陶しいわ!!少し力が強くなった気がする。
ここは俺のほうが赤ちゃんヒエラルキーが高いとわからせてやらねば。
「扇風」
俺は馬乗りの赤子の顔に扇風機の強くらいの風を当て続ける。
「ひゃあ~~~」
どうだ。参ったか。ほらほら。参ったと言え。許してやらんこともないぞー?
「うひゃは!!」
赤子は俺の肩にしがみつき、楽しそうに風にさらされている。……引き分けにしてやるか。
そろそろ、魔力が少なくなってきたので俺は魔法を止めた。
「もっ!!もっ!!」
ふん。今更おねだりしてももう遅い。
「も~!!も~!!」
なにか赤子が叫んでいるが無視だ無視。
「ちょっとメルちゃん!!どうしたの!!」
エリオラさんと母が部屋に入ってきた。
「メルちゃんのベッドはあっちでしょ?もーこの子ったら活発にもほどがあるわ」
「あは。あはは。大丈夫、エフィ?」
母は頬を引きつらせながら、俺の頭を撫でる。なでなでは最初恥ずかしかったけど今は結構好きだ。
「ごめんね。エフィちゃん。うちの子が迷惑かけたわね~」
エリオラさんが申し訳なさそうに謝る。所詮、赤子の戯れ。気にしないでほしい。
「えふぃ」
メルがじーっとこちらを見る。
「えふぃ!!」
俺に指をさし、にっこり笑うメル。赤ちゃんに名前を呼ばれるとなんか嬉しいな。
「あらまあ。メルちゃん、エフィちゃんのこと気に入ったみたいねえ」
「そうですね。……メルちゃん。エフィちゃんのこと友達として仲良くしてあげてね」
そういってメルの頭を撫でる母の顔は笑っていた。