表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死人に口無  作者: 詩音
1/9

口無と水嶋

0:2016年9月21日、病院の個室

口無:(M)個室のドアを開けると、鼻チューブを付けたハル……水嶋春みずしまはるが、季節外れの春の歌を口ずさんでいた。

口無:(M)黒々とした髪と黄色く染まった痩せ細った顔を、葉が枯れて落ちた木と煌々と輝く月が見える外へと、向けている。

口無:ハル……?

水嶋:あっ、コウ!待ってたよ(胸に抱えていたラッピングされた箱を渡す)

口無:ハル。今日は2016年9月21日だよ……僕の誕生日でもないし、付き合った記念日とも関係ない、何でもない日のはずなんだけど。

口無:むしろ、退院祝いに僕がプレゼントを持ってきたくらいなのに

水嶋:俺にもあるの?

口無:もちろん……はい

水嶋:ありがとう

口無:(M)ハルから受け取った後、僕は静かに、ハルの膝にプレゼントを置く。

口無:(M)脇に置いてあるパイプ椅子に座ってからラッピングを解き、箱を慎重に開けた……中には、金色に光る十字架のペンダントが入っていた。

水嶋:わぁ、俺の欲しかったやつ!銀色に光るケルベロスのブレスレット、かっこいい。ふふっ、似合う?

口無:うん、とても似合ってる。やっぱり、ハルはどんなものでも合うから、良いよね。でも、こんなに素敵なものを僕が付けたら(もったいない)

水嶋:(かぶせて)大丈夫、コウは可愛いんだから……俺が魔法をかけてあげる(優しく微笑む)

口無:(M)僕は、ハルの笑顔に引き寄せられるようにハルへと近づいていくと、ハルの手は、僕の首の後ろへと回る。くすぐったくて、思わず目を閉じた。

水嶋:(リップ音)

口無:(M)びっくりして目を開けたら、ハルはキラキラな瞳を僕に向けていた。

水嶋:ほら、より可愛くなった

口無:あ、うん……あ、ありがとう

水嶋:ふふっ、どういたしまして

口無:(M)ここで、時間が止まればいいのに。

水嶋:(軽く笑う)コウ……俺、とっても幸せなんだ

口無:なんで?

水嶋:(無視して)だってね、コウとつながってるから。あとね、気持ちも……ね?

口無:……うん

水嶋:はなればなれになっても、いつも一緒だから

口無:(M)僕の胸に当てていたはずのハルの手が、今度は僕の頭を撫でる。このまま、帰れなくなってしまえばいい。ハルとずっといられるなら、死んでもいいんだ。

水嶋:ねぇ、コウ……愛してるよ

口無:(M)ああ、溶けてしまいそうだ。身体も心も、熱くてたまらないよ。

水嶋:コウ、コウ、コウ……

口無:(M)ハルに、名前を呼ばれるたびに僕は本当に溶けてしまったのか、まばゆい光に包まれるように目の前が白くなっていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ