節約その8 〜パーティー〜
遅くなってすみません!7話です!
今日はリリシアの誕生日である。オルラレア家は豪華なパーティーなどの催しはしなかったが、オリヴァー家がどうしてもやりたいと言うので、今日はオリヴァー邸に向かうのである。
「行きたくない〜」
リリシアはごろごろしながら言う。どうせうちの権力目的の結婚なんだし、オリヴァー様はやっぱり怖いし、わざわざパーティーなんてする必要ないじゃないか。なんて思っている。
けれど、リュウに行きたくないと言うとまた心配されてしまうので、こうして部屋で一人呟いているわけだ。
「……よし、行かないと……」
リリシアは重い腰を上げて立ち上がり、馬車の待つ家の外に向かった。
「お嬢様。では向かいましょう」
リュウが言う。
「…………はーい」
そしてオリヴァー邸に着くと、それはそれは社交界の有名人が名を連ねてやってきていた。
「ひぇ……」
皆、着飾っていて宝石もじゃらじゃら着けている。
(目がチカチカするわ……)
「お嬢様、私はお嬢様がここにいらしたことを主催者側に報告しないといけないので、ここで少しお待ちください」
「わかったわ!」
少しすると、
「リリシア様! よくぞいらっしゃいました!」
シアンが寄ってきた。
「オリヴァー様。本日は私のためにパーティーを催してくださり、誠に感謝いたしますわ」
リリシアはシアンに好かれたいとは毛頭思っていなかったが、一応人々の目もあるので『淑女たるもの』として振る舞う。
それに、裏表なく接するのが、本物の淑女なのだ。
「ぜひシアンとお呼びください、リリシア様」
馴れ馴れしくぐいぐいくるシアン。
「ああ……わかりましたオリヴァー様……」
するりとかわすリリシア。
「おや、手厳しいようだ」
シアンはそれでもニッコニコである。
「では、パーティーをお楽しみください」
シアンはそう言うと去っていった。
「……はぁ」
(少し対応が厳しすぎたかしら……まあ、浮気してるのはあっちだし!)
「ねえ! 貴方がリリシア・ミール・オルラレア様ですか!?」
と言う声がして、リリシアは振り返る。
「はい。私がリリシアでございます」
すると、数人のリリシアと同い年くらいであろう少女たちがいた。
「私たち、貴方のお噂はかねがね聞いておりますの! とても倹約家で素晴らしい方だと!」
真ん中にいる人が食い気味に言う。
「あ、ありがとうございますわ……」
リリシアはびっくりした。昔から、社交界で話しかけてくるのは、権力を持ったオルラレア家に近づこうとする男くらいだったからだ。
むしろ、同性には嫌われていたのだ。
「ぜひ私たちとお友達になってください!」
少女たちが言う。
「え、え……よろしくお願いしますわ……」
リリシアは初めてのことすぎて動揺が隠せていない。
「嬉しいです! 私はイナといいますわ!」
「私は……!」
皆詰め寄られて、嬉し困ったリリシアは一旦トイレに逃げた。
「……知らない人って怖いわ……リュウはまだなのかしら……」
すると、トイレを出た先の辺りで男女の声が聞こえてきた。
「ミカ……君は綺麗だよ……」
「うふふ……お世辞がうまいこと……」
(これって……もしかしなくてもまずい雰囲気なんじゃ!?!?)
リリシアは赤面する。
残念なことに、パーティー会場へ戻るにはあそこを通るしかないのだ。
(困ったわ……でも、なんか男の人の方の声、聞いたことあるような……)
おそるおそる覗くと、その人はシアン・オリヴァーだった。
(なっ……私の誕生日パーティーでさえ浮気するのかこの方はぁぁぁぁぁぁあ!)
リリシアは驚く。
(しかも相手は、前世(?)で言っていたクリスティーナじゃないし!! 一体何股掛けてるのかしら!?!?)
そんなことを考えている間に本格的になりそうな二人。
(やばいやばい! 尚更出れなくなっちゃうわ!)
ここで、リリシアは考えた。
(普通に出ていったらオリヴァー様は絶対焦って色々大変なことになっちゃうから、向こうから去ってくれるのが1番ありがたい。なら、私が取る行動は……!)
「……ごほごほ!! さて、お手洗いも済ませたことですし、そろそろ戻らないと行けないわね〜」
リリシアは大声で言い放った。
そう。リリシアが取った作戦は、『あくまでお前たちがやろうとしたことはしらないが、もうすぐそこに人が来るぞ』と二人に教えてやるというものだ。
「っ!?」
二人はすぐよれた服を戻し、何事もなかったかのようにパーティー会場に戻っていった。
「……はぁ、疲れたわ……」
リリシアもパーティー会場に戻ると、リュウが心配そうに探していた。
「お嬢様! どこに行っていられたのですか!?」
「ごめんなさい、お手洗いに行っていたわ」
リリシアは、とりあえずさっきの面白い光景を誰かに話したかったのだが、リュウに言うときっとまた心配するので、そっと心にしまった。
「そういえば、今日は旦那様も別の馬車でいらしていますから、お帰りの際はご一緒されてはどうですか?」
リュウは言う。
「え、パパも来ているの?」
「はい。今はオリヴァー邸の当主、ヴァル・オリヴァー様とお話しされています」
「そうなの……」
(絶対私とオリヴァー様についての話じゃない……)
***
「つっかれたぁぁあ!」
リリシアはベッドに横になる。
あの後も、ずっと少女たちに質問攻めされたり、シアンに安い言葉で口説かれたり、色々あったのだ。
少しして、リリシアは父に呼ばれた。
「パパ? どうしたの?」
リリシアは父の部屋に入る。
「リリシアちゃん……シアンくんとの結婚日時が決まりました……」
少し目の周りが赤い父親が言う。
「…………え? うそ……」
「ほんと……1ヶ月後……」
「ええ!?!?!?」
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