節約その20 〜討伐〜
家の外から大きな音がして、私は飛び起きる。と言っても、まだ寝てはいなかったが。
「なんだ!?」
「わからないわ、外に出てみましょう!」
リリシアは外に出る。後ろから魔女も家から出た。すると、目の前には、巨大な何かが迫ってきていた。
「なに、あれ!」
リリシアは言う。
「暗くてよく見えないが……なんだ……人の形をしている……?」
魔女は言う。
その何かの近くには暴風が吹き荒れていた。
すると、『ズドン!』と言う音に気づき、村人たちが家から出てきた。
「か、神の祟りが来てしまった……」
(どういうこと? 昨日、厄災は三日後って……)
どう考えても、自分達の10倍くらいある大きな物体が、現在進行形でこちらに向かっている。これは確かに、神の力と言わずになんと呼ぶのだろうか。
「おい! ぐずぐずするな! お前らは松明を持ってこい! あるだけだ!!」
魔女は村人に言う。
「は、はい!!」
村人たちは一人一つくらいの量の、火がついた松明を持ってきた。
「それを、一斉に、あいつに目掛けて投げろ」
魔女は言う。
「はい!」
村人たちは思いっきり、松明を物体に投げつけた。すると、炎はすぐに消えたが、その少しの間で、物体の少しの部分が明かりであらわになり、あれが何なのかが分かった。
「あれは……!!」
あの物体は、土でできた巨人だった。
「ちっ、なんだあれ……」
魔女は言う。
「あんなの、なんとかできるの……?」
リリシアは言う。目には恐怖の色が映っている。
「……普段の僕でも厳しいな。あの土はおそらく炎は効かないから……」
「そんな! 今の貴方は魔力がほとんどないのに!!」
リリシアは焦る。だが、どうしたらいいのか、彼女には知る由もなかった。
「でも、やるしかないだろ……ここで戦えるのは僕しかいないんだ。……お前は他の村に避難しろ」
魔女は言う。
「…………気をつけてね。あなたが巨人を倒して、家に戻るのを待っているわ……。死なないで」
リリシアは覚悟を決めてそう言う。
「ああ!」
魔女は空を飛び、巨人の目の前まで行った。まだ、巨人は村の中に入ってきてはいない。
「…………」
(ここで見ていてもどうにもならない。私は私のできることをする!)
リリシアは騒然としている村人たちに大声でこう言う。
「村の皆さん!! 皆さんは避難を! この村から離れて下さい!」
「! ああ……!」
村人たちは皆、納得して、急いで村の外に出る。
「このまままっすぐ行けば、アスタシーア王都の方向です。ここから王都へ行くには遠いので、王都を目標にするわけではありません」
「王都に行く道にはたくさんの村があります。そこに避難してください」
リリシアは説明する。カヤに任せて、馬車に乗ってシズマ村まで来ていなくてよかったと、改めて思った。もしもシズマ村まで送ってもらっていたら、地図など見ていなかっただろう。
「お嬢ちゃんはこないのかい……?」
サーバは言う。
「ええ。彼一人に戦わせていられませんもの。私もここに残ります」
「…………わかった、無事でいてな。必ず戻るよ」
「はい。お互い、無事を祈ります」
サーバたち村人と別れると、リリシアは村の中を走って、家に戻ろうとした。
すると、近くから『シュルシュル』と言う音が聞こえた。
「な、なに……?」
近くにある家の松明に照らされ、その音の主が、蛇であることがわかった。
「へ、蛇か……よかったわ……」
リリシアは安心した。が、全然よくないのが蛇である。周りを見ると、5匹はいるようだった。
その蛇たちは、リリシアを見るや否や襲いかかってきた。
「ひっ!」
(あれ? 蛇って毒があったわよね……こ、怖い……!)
すると、ピタッと蛇たちの動きが止まった。
「……ん?」
そのまま、蛇たちはリリシアへの攻撃をやめ、1方向へ向かっていった。
「ど、どうしたのかしら……」
「!」
「あの方向は……!」
魔女が戦っている方向である。
「あの人が危ないわ!!」
(でも、そう分かったところで、私は何もできない……)
リリシアは自分の無力さを痛いほど痛感した。
情けない自分に涙が出てくる。
「っ!」
自分で思い切り自分の頬を殴る。
『ばちん!』
「今は泣いている暇はないのよ、リリシア!!」
結局涙目で、頬はじんじんしているリリシアは、蛇たちの跡を追いかけた。
すると、村の外の開けた場所で、魔女と巨人は戦っていた。蛇たちはそこに行き、巨人を攻撃している。
「! 蛇が巨人を攻撃している!?」
(よかった、どういうことかはわからないけれど、あの人を襲う気はないのね……)
リリシアは大人しく家に戻る。家に入った瞬間、足から崩れ落ちた。
「!」
足に力が入らない。体が震えている。
「怖かった……寒い……」
涙がこぼれ落ちる。
(せめて、彼が帰ってきたときのために、今の私ができること……)
動かない足を引きずって、キッチンに行く。
温めたミルクと柔らかくしたパンにチーズをのせたものを焼いたものを作った。
(材料がないから、これくらいしか作れないけれど、どうか、無事で帰ってこられますように)
そこで、リリシアは意識が途切れた。
しばらく時間が経ったのか、それとも五分も経っていないのか、ドアを開ける音がして目が覚める。
リリシアはキッチンで倒れていた。右の足の筋肉はちぎれているようで、思ったようには動かなかった。左の足をかろうじて動かして、玄関の音がしたドアに向かう。
目の前には倒れた魔女がいた。
ふと、涙が溢れる。
「よかった……生きてて……」
リリシアは魔女を持ち上げて、ベッドに運ぼうとしたが、自分の足が動かず、魔女を持ち上げることすらできなかった。
「っ!」
リリシアは崩れ落ちる。
「…………いたい……」
安心したからか、痛みが一気に押し寄せてきて、ごちゃ混ぜの感情のまま、ボロボロと泣いた。
せめて、魔女を仰向けで横にならせ、リリシア自身は横で座って眠りについた。
***
「おい! 大丈夫か!?」
そんな声がして目を覚ます。
目の前にはサーバという村の男がいた。
あの、バルーラ国の言語が使えた男である。
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