節約その1〜はじまり〜
お久しぶりです! 4作品目です!
頑張って描きます!
『リリシア・ミール・オルラレア』
漆黒の長い髪にラピスラズリのような濃い青色の綺麗な瞳を持った、バルーラ国の有力公爵家の一人娘。パパとママに大切に育てられたからって、なんの取り手もないくせにわがまま。それに、これ以上は耐えられないと婚約者にも逃げられた。そんな絵に描いたような悪女。それが私。
『ドサッ』と言う音とともに、私は倒れる。頭から倒れた気がしたが、もう痛みすら感じなかった。それに、そんなことはどうでもいい。
「こんな横暴なやつは死んで当然だ!」
私のことを言っているのだと気づいたけれど、それよりもお腹が熱い。どくどくと血が流れているようで、変な感覚だった。痛さよりも熱さが勝つような、気持ち悪い感じ。
「あ__あ______」
私は掠れた声を出す。私を刺したのは誰……? 目の前にいるのに顔がうまく見えない。貧血からか、視界がぼやける。
すると私を刺したであろう男のようなものが、私の護衛に斬られる。
護衛の顔は鮮明に見えた。鼻が隠れるくらいまで前髪を伸ばして、いつものように瞳は見えない。おそらく私と同い年くらいなのだろうが、ただの使用人が私の家系と同じ黒髪を持っているのが気に食わなくて、連絡事項以外で一度も会話をしたことがないため、真相は定かではない。大方、父が拾ってきた孤児だったりするのだろう。
護衛は私に駆け寄ってくる。
相変わらず、辛気臭くて湿っぽい。
「お嬢様! ご無事ですか!?」
もう喋ろうにも喋れない私を見て、護衛は顔を歪める。
ふふ、あんただって、私が死んで清々しているでしょう……? そんな悲しそうな顔したって無駄なんだから。
……でもね、リリシア。この子にも、きっと、もっといい接し方ができたはずよ……
「貴様達! この地の領主であるラスカタ・ミール・オルラレア様の御息女を攻撃するとは何事だ!」
護衛は叫ぶ。
「うるせえ! お前だって聞かなくても分かっているくせに!! 俺たちは……ずっと我慢してたんだ!」
「こいつの父の圧政にな!!」
「……それは……」
護衛は目を逸らす。
「お前だって気づいていただろう! 1年前に増税した頃から、ここの餓死者が急増していることに!」
(1年前……? 1年前にそんなことがあったの?)
すると、急に目の前にいた護衛は何本もの槍で刺し貫かれた。
……え?
「うおぉお!」
歓声が聞こえる。
「これでオルラレア家の大事な大事な一人娘、リリシアは殺した!」
「あとは屋敷に乗り込むだけだ!」
「行くぞ!」
遠くに声が聞こえる。
「お嬢様……お守りできなくて……申し訳……ありま……せん……」
護衛の声だった。近くに護衛はいるはずなのに、遠くに聞こえるのはもう、耳の機能がおかしくなってしまっているからなのかもしれない。
「そんなこと……」
私はふと気づいた。
さっきの人たち、屋敷に乗り込むって……パパが危ない……
嫌だ、嫌だ! なんとか、なんとかしないと……!
必死に考えたが、動かない手足を動かせるようにする魔法も、どんな傷でも癒してしまう薬も、当たり前だが持ってはいなかった。
もう手足どころか何もかも、感覚がなくなっている。足が冷たい。
私が……今、動けたなら……それなら…………。
涙が流れる。
もう一度、人生をやり直したい。そして、パパが死なない世界にしたい。護衛にだって優しくしたい。他の使用人にだって……!
でも、そんなの、無理に決まっている。私はこのまま、自滅する。周りも巻き込んで。最後まで傲慢なお嬢様。
さようなら、大嫌いな私……。
最後まで悲劇のヒロインぶっていた私は、涙を流しながら瞳を閉じた。
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