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【#4】衝撃の全貌

 モニター越しにその様子を見守っていた蘭は、ユーザー数が秒単位で膨れ上がっているのを目にし、驚きの表情を見せた。


「すごいな……想像以上!」


増え続けるモニターの数字を見届けると、蘭は番組放送のためにブースへと向かった。



「えぇー!?」


 とあるファミリーレストランの一角で、放送を眺めていた女子高生たちが驚きとも、困惑ともつかぬ叫び声をあげた。


「これ、何次審査まであるの!?意味わかんないし!」


「エントリー審査の後は歌唱審査、学力テストに小論文、配信5分……?そこまでクリアしてもまだ500人……絶対受からなくね?さらにそこからオーディション本番って...…」


飲みかけのメロンソーダをテーブルに置くと、ふたりの女子高生は肩を落とした。無理もない。規模も前代未聞なら、選考の多さ・厳しさも前代未聞だ。モニターにもユーザーの悲痛な声が届く。


『東都大に合格するより難関じゃんオワタ……』


『このオーディションクリアできるコどれだけいるの…..』


『マジで絶望しかない』


『どうしよう……諦めようかな……?』


 先ほどまでの騒ぎはどこへやら、すっかり意気消沈した視聴者の様子に、蘭は表情を変えずにモニターを見つめていた。


「星P……これ、応募者どのぐらい残りますかね…」


「わかんない」


「えっ!?それじゃオーディション成立しないかもしれなくないですか?」


「大丈夫。わたしの勘だけど……このオーディションには厳しいことをやるだけの意義はあるし、絶対にそれだけのグループができるよ。わたしも絶対に作ってみせる」


「そうですかねぇ……一次審査だけで全員脱落しちゃうんじゃないですかねぇ……」


「……」


「ええっと……なんとか言ってくださいよ、星P……」


「……」


 困惑する様子のスタッフをよそに、蘭はじっとモニターに見入っていた。



 明くる日の朝、自宅のベッドで目覚めた蘭は、すぐにスマートフォンを手に取った。


「ええっと……これだ」


 メールアプリを立ち上げ、添付されているファイルを開く。レポートの最後の数字を確認すると、蘭は左手をグッと握りガッツポーズをしてみせた。


「よし……滑り出しは上々!」


レポートはオーディション応募者数の推移で、初日で1万人を超えるユーザーからのエントリーがあった。他のグループのオーディション応募者でも、最終応募が15000人ほどだったと聞いていた。初日でそれに迫る人数からの反応を得て、蘭は笑顔を浮かべた。枕元のリモコンで、テレビの電源を点ける。ちょうど、昨日のイベントの様子に関するニュースが流れていた。


『男性ロックバンド「S.O.S.」を手掛ける星咲蘭プロデューサーが企画する新たな女性アイドルオーディションの募集要項が昨日発表され、エントリーが開始されました。最終選考まではなんと10回の選考が行われる超過酷なオーディションながら、初日の応募者数はなんと11547人と、女性アイドルグループのオーディションでは史上最速のペースとなっており、最終的にどの程度まで応募総数が伸びるのか、注目を集めています――』


 蘭はテレビを横目に見ながらキッチンで紅茶を淹れて飲もうとしたが、相変わらずの猫舌が祟って、マグカップを落としそうになる。進歩がない。


「……熱っつぅ!」


 テレビでは、オーディションの詳細をアナウンサーが説明している。


『選考の詳細はこちらです。応募者は、まずエントリーの際に15秒間のPR動画を自分で撮影して応募します。この審査に合格すると第1ラウンドとなり、次は課題曲と自由曲での歌唱審査。それに合格すると、次はなんと学力テスト、そして小論文。次に、30分の個人動画による審査が行われ、この審査で票を集めた上位500人が第2ラウンドへ進出します』


『なんか、すごい大がかりですね……』


 コメンテーターが驚きの表情を浮かべると、アナウンサーが軽く首を横に振った。


『それだけじゃないんです。第2ラウンドでは、5面からなるアスレチックに挑戦し、これをすべてクリアする必要があります。続いては全200問のクイズが行われ、ここで上位100人だけがその次の第3ラウンドへ進みます。その100人が、わずか1時間の間に振りをすべて覚え、100人での団体ダンス審査が行われるということなんです』


 次第にコメンテーターは言葉を失っていく。さらにアナウンサーが続けた。


『このダンス審査から選ばれた50人だけがファイナルラウンドに進むんですが……、ファイナルラウンドはなんと2つの課題をクリアしなければいけません』


 蘭は、テレビを眺めながらうっすらと笑みを浮かべた。アナウンサーが、ファイナルラウンドの説明を始める。


『ファイナルラウンドでは、この時点では結成されていないユニットのデビューライブのチケットをファイナリストたちが手売りするというミッションが課されるんです。それだけではなく……』


 テレビには、コメンテーターがゴクリと唾を飲みこむ様子が映し出される。


『なんと、メンバー決定の発表が行われるメトロドームまで、当日はファイナリストたちが20キロの距離を5時間以内にゴールしなければならないんだそうです』


『ほおおおっ……、とんでもないオーディションになりそうですね……最後だってこれ、ハーフマラソンしながらゴールするようなもんじゃないですか……』


 コメンテーターが驚きの声を上げた。アナウンサーが、スタジオのモニターを指さす。


『ここで、今回のオーディションの仕掛け人、星咲蘭プロデューサーに話を聞くことができましたのでVTRをご覧ください』


「えっ……??わたし?」


 自分がインタビューされたことをすっかり忘れていた蘭は、慌ててテレビの前のソファーへ座り込んだ。



<To be contiued.>

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