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白死病  作者: 紋 魅ル苦
1/4

プロローグ――白視病

「これは、白視病だね……」

 真剣な顔つきで、先生が俺に告げた。



 ――あれは昨日の朝だった。

「あれ? 白い……」

 目が覚めると、たんすが俺の視界に入った。

 そのたんすが白くなっている。

 もっと具体的にいうと、俺の部屋にある茶色のたんすが、白色になっていた。


 俺は驚いて目をパチクリさせた。

 手で交互に左右の目を隠して試すが、そのたんすはやはり白く見えてしまう。


「俺の目どうなってるんだ……」

 昨日まで茶色に見えていたものが、急に白く見えるとなんだか怖い。


「母さん!」

 俺は母さんがいる部屋へ駆け込んだ。

「え、どうしたの!?」

 母さんは俺に驚いて、食べようとしていた食パンを両手で持ちながら固まっている。


「たんすが白いんだよ!」

「たんすが白い? 亮の部屋の?」

「そうそう! ちょっと見にきてよ」

 母さんは「朝から何変なこと言ってるのよ」と嫌そうな顔をしながら、俺の後をついて行った。

 

 俺の部屋にある、昨日まで茶色だったたんすを指でさして

「これ、これだよ。昨日まで茶色だったのに、今日は白いんだよ」と、俺は言った。

「えっ……」

 母さんはニヤニヤと笑っている。

「あんたねぇ。私には茶色にしか見えないけど」

「うそっ……」


「亮、ちゃんと目を覚ましてる? 今も白く見えるの?」

「うん、白いよ」

「そうしたら……今日学校終わったら眼科に行ってきなさい」

「うん……そうする」

 俺は放課後、眼科に行くことにした。



「診察室にお入りください」

「はい」

 俺は待合室の椅子から立ち上がり、診察室のドアを開けた。

 いつも世話になっている眼科の先生が座っている。


「今日はどうしたの?」

「先生、すごく言いづらいことなんですが……」

「何?」

「私の部屋にある茶色のたんすが、昨日まで茶色に見えていたのに、今日朝起きたら白色に変わっていたんです……」

 

「ちょっと目を見せて」

 先生は機器を使って俺の目を検査した。

 そして終わると先生はゆっくり首を傾げて言った。


「特に異常はなかったよ。あと、さっき診察室に入る前にやった視力と眼圧検査についても……特に異常はないみたいだよ」

「そうですか……」

 原因がわからず俺が肩を落としたときだった。


「あっ!」 

 先生は急に思いついたように、机にあるパソコンで何やら検索を始めた。


「実はね、1つ思い当たる病気があるんだ」と、顔をパソコンに向けながら先生は言った。

「それは?」

「白視病っていう脳の病気なんだ」

「え……脳の病気……」

 高校生レベルの俺の頭の中で、脳は最も大切な部分だと思っていた。

 その脳の病気だと聞いてしまったものだから、俺は不安になり緊張してきた。

「とりあえず紹介状を書くから、脳外科のある大きな病院に、それを持って行ってみて」

「わ、わかりました」



 次の日に俺は地元の総合病院で脳外科を受診した。

 そしてその先生は「これは、白視病だね」と、俺に告げた――。

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