2.先生の決意
先生は歴史や法律などを専門とする学者でした。努力家の先生は学校に通わずに自分で苦労して研究を続け、当時なることが本当に難しかった法学博士を目指しました。
そして、猛烈な研究を続けたかいあって、ついに46歳のときにその学位を手にしたのです。
ところが、そのとき先生はすでに重い病気で医者には治す手立てがなく、死を待つばかりの状態でした。先生の人生は成功したとたんに終わろうとしていました。
先生はそこで初めて成功と幸福が違うということを悟りました。そして、自分のように真面目に努力したのに幸せになれないという苦しみを他の人には決してさせたくないと考えたのです。
先生は「医者も見離したこの命が万一助かったならば、人間が本当に幸せになれる生き方を研究して、その結果を未来の人たちのために書き残そう」と強く心に誓いました。
その信念が天に通じたのか、奇跡的に命が助かった先生はそれから約27年間、死の直前まで誓いを守り続けて、病弱な身体でありながらも一生懸命に研究と教育に打ち込んだのです。
先生は将来を見すえ、証拠や理由がないと何事も信じないという科学的な考え方の時代になれば、古くからの教えや慣習に込められた生き方の知恵が無視され、社会が乱れていくと予想しました。
そこで、先生は「人生とは偶然の連続ではなく、人の生き方を導く自然法則に従えば幸せになれる」ことを明らかにしようとしたのです。
先生は長年の研究をまとめた学術的な論文を本にして発表しました。
そして、その中で新しい生き方の内容を説明するだけでなく、実行の効果を出来るだけ科学的に証明しようとしました。
それは科学的な考え方に慣れている未来の私たちが、安心して新しい生き方に進み、幸せな暮らしを送れるようにと願われたからです。
先生の書かれた本は、先生の真心が込められた、私たち宛ての「時を越えた手紙」なのです。