グローリィ
「これはグローリィの初期型か?何故こんなものをEランクの市民が持っている?」
簡素なデザインの軍服に身を包み、棒状の特異な武器を腰に下げた兵士がエイルを見下ろしながら問いかける。このレベルの装備をできるのは現在の地球ではHAROの反乱軍制圧部隊しかいない。
「そうですね…一応聞いておきたいんですが拾ったという事には出来ませんよね?」
苦笑いを浮かべながらエイルは兵士に問いかける。
「回答は行動で示そうか?」
そう言うと兵士は腰の不思議な武器を抜き、こちらに向けたかと思うと
「?!うぅぅぅ…」
エイルの体から力がどんどん抜け、すぐに床に倒れ込む。
「これはお前が持っていたこのグローリィⅠの最新バージョン、グローリィVI-2。なんでも使う奴の一番強い欲望を特殊能力として使えるようにするんだと。俺は昔から食欲が旺盛でな、他の奴の体力を食っちまう能力ってわけだ。」
「それはすごい…俺のとこのボンクラとは訳が違うみたいだな。」
床に這いつくばり、呻くように声を発する。
「それについてなんだが、俺はただ命令でEランクを消して回ってるだけなんだがこんなモン持ってる奴は初めてだ、どこで手に入れた?」
「そうだな…それは神様からの贈り物だったかな!」
そう言い放った瞬間エイルの体は稲妻の如きスピードで飛び上がり、手刀を兵士の首元目がけて一閃する。
「うっ!」
完全に不意を突かれた形となった兵士は上体を逸らしてすんでのところで回避するも続く第二、第三撃が兵士の左肩から腕にかけてを切り裂く。
「クソ!なんで動ける!能力で確実に指一本自分の意思じゃ動かせなくした筈なのに何故!」
左腕が使い物にならなくなったのかぶらりと揺らしながら荒れた息遣いでエイルに問を投げかける。
「生憎と俺の欲望は強すぎるみたいでさ…二つないとまともに生活出来ないんだよね。」
そう言って隠し持っていたもう一つのグローリィを見せつけ今度はわざとらしく笑みを作ってみせる。
「バカな、そんなエネルギー変換効率5割以下のグローリィであんなスピードを得られるわけがない…のに」
そう言いながら兵士は痛みから気絶した。
「だから困っちゃうくらい欲望が強いんだっての…とりあえずもうこいつやっちゃったからにはHAROからは逃げられないだろうし、どうしたもんか…」
独り言を呟きながら兵士を脆くなった家の支柱に縛り付ける。目が覚めたら話を聞く必要があるだろう。
「ところでこれは俺にも使えるのか?」
兵士がグローリィVI-2と言っていた装置を奪い取り今までの様にしてみる。が
「ユーザー認証……HARO 正式ユーザーではありません。位置情報を送信し、警報装置を起動します。」
そう無機質な自動音声が流れ次の瞬間
ジリリリリリリリリリリリ!!!!!
「やっちまった…本当に今日はツイてないな…!」
自分のグローリィを急いで取り返してからエイルはグローリィによってブーストした脚力でその場から逃走した。