虎王
パチパチ…。
瞼の裏にゆらゆらと赤い光が舞う。
パチパチ…パチパチ…。
なんだろう、この音は。
ゆらゆら、パチパチ、ゆらゆら、パチパチ…。
なんだか頭が気持ちいい。程よい柔らかさのクッションにでも埋もれているみたいだ。
それに、なんだか甘いいい香りがする。
「…ん…っ」
「あっ…!よかった、気が付かれましたか?このまま目を覚まさなければどうしようかと思っていました…」
ゆっくりと目を開けると、心配そうにこちらを見下ろす女の人の顔が見えた。
俺より少し年上だろうか?片方の髪を耳にかけ、肩にかかるかどうかという長さの、少しウエーブがかった黒髪が色っぽい…
「って、近っ!!」
意識がはっきりしてきたところで、その女の人の顔が思いの外近くにあり 驚く。
そして、さっきからいい香りと気持ち良さがあるなと思ったら、俺はこの人に膝枕してもらっていたようだ。
…残念なことに太ももは厚手のローブに隠れて見えなかったが。
「普通こういう時はお約束で、生の太ももキモチイイ!くんかくんかいい匂いだぜ!とかやってる俺に対して『キャー!何するのエッチー!』ビンタばしーん!!みたいなセクシーハプニングとかあるもんじゃないのか…?」
「?何か言いましたか虎王様?」
おっといけない、ついうっかり口に出してしまったようだ…って、今、なんて言った?
「虎王…?」
「はい!虎王様、無事に召喚できて安心しました!あぁ、歴史上に名を残す偉大なる勇者様に、こうやって直にお会いできる日が来るとは…。このノーリア、これほど嬉しい事はありません!帝都魔導部隊に入隊して本当に幸運でした…!」
ウットリとした目で俺を見ながら、このノーリアとかいう美女はさらりと気になる事を言った。
「召喚…?俺はここに召喚されたって事か?は?…え?マジで??っつーか、ここ何処なんだよ?」
呟きなのか相手に問うているのか自分でも分からなかったが、ノーリアはこの言葉を質問と取ったようだ。
言葉を続ける。
「あっ、すみません、急に召喚だなんてびっくりされましたよね。まずはここがどこなのか、ですが…虎王様がいらした時代『帝都歴4年』から382年後の『帝都歴386年』の春の月、それが現在、虎王様がいらっしゃるこの時代です。虎王様には厚かましくもお願い事がございまして…わたくしが所属する帝都魔導部隊の隊長と、現帝王様の依頼で虎王様のお力をお借りしたくこの地に召喚したのです。それで…」
「ちょっと待った!!」
なんだか変な敬語の説明を思わす途中で遮った。
ちょっと待てちょっと待て。ついていけない。
そもそも俺は虎王だなんて名前じゃないしそんなあだ名も愛称もない。
話を遮られたノーリアは、瞳をぱちくりとさせてきょとんとしている。
よく見たら、服装もなんだかファンタジーちっくだし話してる内容もその辺にゴロゴロ転がってるラノベの設定みたいだし。
なんだかうまく思考がまとまらないけどなんかこれだけは解る!解るぞ!
そして混乱しながら俺はノーリアに言い放った。
「俺の名前は御園小虎之助。虎王じゃないっす。召喚間違い!!です!!!」
それを聞いてしばらくポカンとしていたノーリア。
そして目が泳ぎはじめて…
そして。
「えぇぇぇぇぇ?!」
絶叫した。
やっと主人公の名前が出せました!(笑)ここから色々とこのストーリーの軸になっていく事が出てきます。挿絵も頑張って描きますたぶん。。