黒いナニカ
「…っ?!…ッッ!!」
なんだなんだなんだなんだコイツは?!
いつの間に現れたのかわからない「黒いナニカ」は、かろうじて人型を保っている状態で、皮膚(…なのかこれは?)がドロドロと溶けて流れている。
しかし不思議なことに溶けた皮膚の様なものは、その場に留まって地面に落ちる様子はない。
例えが悪いが、まるでチョコレートフォンデュのように見えるそれは、その質量を一定に保ったまま同じ場所で溶けて流れて循環してまた溶ける…そんな感じだった。
目や鼻などはなく、人間で言う口にあたる部分からはよだれがダラダラと流れており、それはポタポタと地面に落ち、自身の足元の草花を焼き溶かしていた。
ソイツは俺と5メートルぐらいの距離まで近付くと、そこでぴたっと止まってキョロキョロしだした。
「なんだ…?口から出てるあれって、酸…?」
今のところは襲ってくる気配はしないが、なんだかヤバイのはわかる。
このままコイツを刺激せずにそっとこの場を立ち去ったほうがいい。だがしかし、そうは思ってもこの異形を前に俺の足は情けなくもガクガク震えて役に立ちそうはなかった。
その時だ。
「イィィィ…!」
シュッ!
ザッ!
バキッ!
ドサッ…!
「えっ?」
黒いナニカは突然俺の視界から消え、数秒後に少し離れた場所から何か重い物が落ちる音がした。
一瞬すぎて解らなかった。音のしたほうを振り返ってみると、黒いナニカはさっきとは正反対の場所へ物凄いスピードで移動していた。
さっきのバキッやらドサッという音は、コイツが移動した時にぶつかって折れたのであろう、大人が抱える程の太さの木が倒れる音だったようだ。
「おいおいマジかよ…」
あんなもの、間違ってくらいでもしたら吹っ飛ばされるどころじゃ済まないぞ?!
よく見ると倒れた木の一部、黒いナニカの足元部分に倒れている箇所だけよだれでシュウシュウと煙を出しながら焼け溶けてきている。
「こりゃ早いとこ逃げないと…クソ、動け足!!」
焦れば焦るほど体が硬直して言うことをきかない。
まだあの黒いナニカの注意が自分に向いていない今のうちに早く逃げなければ…!
黒いナニカはまたキョロキョロとしだして、動く気配は今のところは感じられない。
早く、早く…!
その時だ。
キョロキョロとしていた黒いナニカの目にあたる部分に突如として赤い光が宿り、視線が急にぐりんと俺の方へ向いたかと思うと物凄いスピードでこっちへ滑りながら突進してきた!
俺の体は硬直したまま、抵抗する術もなく物凄いスピードで突っ込んでくる黒いナニカと対峙する…。
ドッ!!
俺はそのまま黒いナニカの突進で吹っ飛ばされ…
そして血溜まりの中にドサリと倒れ込んだ。
緊迫したシーンを書くのって難しいなと思いつつ続きます。
あー、また主人公の名前出なかった(笑)