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間違いの始まり

薄いレースのカーテンが、風に揺られて窓枠を優しく撫ででいる。

暖かく爽やかな春の風が揺らすカーテンに頬をくすぐられ、「ふぇあっっ?!」と何とも情け無い声とともに飛び起きた。

窓際のソファで読書をしていたのだが、どうやらあまりの心地よい風にウトウトとうたた寝をしてしまっていたらしい。


「…んっ」

軽く伸びをして、部屋のど真ん中にある天蓋付きベッドへ目をやる。いつ見ても乙女趣味全開のフリフリしたレースやフリルが自分に似つかわしくないと思う。

ベッドだけでなく、今まで自分がうたた寝していたソファにもきらびやかなレースと刺繍があしらわれた、これまた乙女趣味なクッションが鎮座している。

これらは全て、高級家具屋を営む両親(というか120%母)の趣味であって、断じて自分の趣味ではない。


母には逆らえない。昔から好みのものを見つけるたびに大量にそれを買い、このだだっ広い家の中全てをそれで埋め尽くす。母は、それにこの上ない幸せを感じている…らしい。

この、今自分が自室として使っている部屋も例外ではなく、いくら辞めて欲しいと頼んでも「コトちゃんに絶対似合うから☆」と言ってあっという間に母好みの部屋に模様替えされてしまうのだ。

抵抗は無駄。それを齢4歳にして悟って以来、抵抗は諦め母の好きなようにさせている。


そんな事を考えながら、ふと時刻が気になって壁掛け時計を見てみる。時刻は午後4時前。

「やばい…!」

充電しっぱなしだったスマホをひっつかみ、ドタドタと足音を響かせながら勢いよく二階の自室のドアを開け、一階のリビングにダッシュする。


リビングにつくとテレビのリモコンのスイッチを入れ、これまた乙女趣味なソファに座り一呼吸。

午後4時ジャスト。

「間に合っ…たぁぁ〜!焦った!焦ったぜ!ごめんよ愛しのリーシャたん♡俺とした事が危うく寝過ごしちまうとこだったぜ!いやぁ、今日も可愛いなあ♡♡」

毎週土曜日午後4時ジャスト。この時間は俺の愛するリーシャたんが活躍する、アニメ「美少女探偵アル・リーシャ」の放送日!

流れる栗色の髪、大きくて綺麗な金色の瞳。少し胸元の開いたワンピースからチラリと見える胸の谷間…。

くぅー!今日も可愛さ絶好調だぜ!

リーシャちゃんは、探偵スイッチがオンになるとスマホ型の端末を頭上に掲げて「どんな事件も解明、解決!探偵モードへメタモルフォーゼ!」の決め台詞とともに美少女探偵アル・リーシャに変身する。

はじめは「探偵モノなのに変身かよ…なんだよその決め台詞…」とバカにしていたけど、いやいやいや。俺が間違ってました!!思わずジャンピング土下座!!

普段はおっとりドジっ子なリーシャちゃんが、変身した途端に頭脳明晰キリッとビシッとかっこかわいく(でもドジっ子のまま)変わっちゃうのがまたギャップ萌えってやつ?もうたまらん!ってなってしまう。

毎週リーシャちゃんを見ているうちにいつの間にやらもうすっかりリーシャちゃん信者だぜ!


なんて思っていると、今週のリーシャちゃんの変身シーンが近づいてきた。

俺はスッとその場に立ち上がり、スマホを握りしめる。

今日もリーシャちゃんと一緒に探偵さんに変身しちゃうもんね☆


『どんな事件も…』

きたっ!画面の中のリーシャちゃんと同じポーズをとる俺。

もしかしたら、ここでやめておけば良かったのかもしれない。でもまだこの時の俺は、まさかこんな事になるとは一ミリも思っていなかった。

いつものようにスマホを頭上に掲げ、そして…。

「『探偵モードへメタモルフォーゼ!』」


はじめは、画面の中のリーシャちゃんが光っているのかと思った。

でも違う。画面の中じゃない。

思い切り変身ポーズをとったままの俺の体を眩い光が包み込み、目の前が真っ白に、いや真っ暗に?

何が何だかわからない、白いのか黒いのか、今自分が立っているのか座っているのか、とにかく何もわからなくなったような妙な感覚が全身を駆け巡り…。


俺は、ここに立っていたんだ。


この、妙な気配の漂っている薄暗い森の中に。

主人公の名前や世界設定も不明のまま次回に続く!

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